2020-11-13 東京大学
近年、物質のトポロジーに関する研究が活発に行われ、光や音波を制御するメタマテリアルなどへも波及しています。メタマテリアルにおいてはエネルギーの流入や散逸が起こり得ますが、そのような非保存系(非エルミート系)のトポロジカル端状態には未解明な点が多く残されています。
東京大学大学院工学系研究科物理工学専攻の曽根大学院生、蘆田助教(現東京大学大学院理学系研究科准教授)、沙川教授らは非エルミート性由来の新たな機構により、トポロジカル物質で見られるような端状態が保護できることを理論的に明らかにしました。この保護機構は試料内部(バルク)のトポロジーではなく、表面(エッジ)のトポロジカルな構造を利用しています。これは従来のエルミート系とは大きく異なる性質であり、非エルミート系に特有のバルク・エッジ対応の破れを示唆しています。また、このような端状態がレーザーの増幅に応用できることを指摘しました。本研究は、非エルミート系における端状態の基本原理の理解に資するとともに、低散逸な次世代デバイスなどの設計原理を与えると期待されます。
本研究成果は、11月12日に科学雑誌「Nature Communications」オンライン版に掲載されました。