3D地図の作成に活用できる高精度標高タイルを公開~「シームレス標高タイル」のウェブ配信サービスを開始~

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2020-10-01  産業技術総合研究所

ポイント

  • 専門的な高精度標高データを一般的なウェブサイトでも利用しやすいPNG標高タイルに変換し公開
  • 誰でも簡単に「自由」に使える
  • 詳細な3D地図サイトの作成や、地域課題解決のための新サービスへの活用が期待

概要

国立研究開発法人 産業技術総合研究所【理事長 石村 和彦】(以下「産総研」という)地質情報研究部門【研究部門長 荒井 晃作】シームレス地質情報研究グループ 西岡 芳晴 研究グループ長らは、兵庫県高精度標高データなどを、ウェブで利用しやすいPNG標高タイルに変換した「シームレス標高タイル」を公開した(https://gbank.gsj.jp/seamless/elev/)。

平面的な地図に高さ情報を与える標高データは3D地図の作成や災害シミュレーションに利活用されるが、そのソースデータは専門性が高く一般に利用しやすい情報ではない。 今回公開した「シームレス標高タイル」では誰でも簡単に任意のPNG標高タイルを取得でき、それを用いることでインターネット上の3Dウェブサイトなどが高速に動作するようになる。今回公開したタイルセットのうち、特に兵庫県の高精度標高データに基づく標高タイルは、詳細な3D地図サイトの作成や、他の地図データと結びつけて、水害・斜面災害防災対策などの地域課題解決のための新サービスに活用されることが期待される。

図

「シームレス標高タイル」を使用した神戸市三宮付近の3D表示(地理院タイル「写真」を使用)
兵庫県の建物・樹木などの高さを含む標高タイルをもとに3Dモデルを作成。
ユーザーはウェブサイト上で自由に回転、移動することができる。

開発の社会的背景

近年、航空レーザー測量などの測量技術の進歩により、高精度の標高データが整備、公開されるようになってきた。一方、インターネット環境の普及、スマートフォンなどの情報端末の高機能化によりさまざまなウェブサイトが手軽に閲覧できるようになってきており、地域課題の解決にあたっても地域の特性を反映できる高精度の標高データを利用したウェブサイトの開発、活用が期待されている。しかし、公開された高精度の標高データは専門家向けでファイルサイズも大きいため、それを活用した3D地図サイトなどの開発は進んでいない。

研究の経緯

産総研地質情報研究部門は、2013年から国土地理院地理空間情報部と共同で、標高データの有効活用を図るための研究を開始し、インターネット上で標高データを高速に利用するためのフォーマットとしてPNG標高タイルを開発した。また、国土地理院はこのPNG標高タイルを利用して日本全国の10mメッシュの標高タイルの公開を開始した。

最近では2020年1月に、兵庫県が他の都道府県に先駆けて1mメッシュの高精度標高データを整備、公開した。しかし、公開されたデータはテキストデータなどの形式で、インターネット上での利用には適していなかった。そこで今回、は兵庫県の協力を得て高精度標高データをインターネット上で利用しやすいPNG標高タイルに変換し、これまでタイル化されていなかった幾つかの標高と合わせて公開した。

研究の内容

公開した「シームレス標高タイル」ウェブサイトのトップページには、標高タイルへのアクセス方法や、標高タイルを利用したサンプル3D表示ページへのリンクが配置されている(図1)。

図1

図1 「シームレス標高タイル」ウェブサイトのトップページ

今回の「シームレス標高タイル」のメインコンテンツである兵庫県の標高タイルは、兵庫県がオープンデータとして公開した全県1mメッシュの標高値をもとに作成されており、建物・樹木などの地物の高さを含む地球表面 (DSM)とそれらを含まない地表面 (DEM)との2つのデータセットを含んでいる。

図2

図2 兵庫県1mメッシュから作成された標高タイル(DEM)
PNG画像で標高値を表現、背景には地理院タイル「淡色地図」を使用。

今回作成した標高タイルの利用例を示すために、「シームレス標高タイル」ウェブサイトでは2つのサンプル3D表示ページを用意した。1つは概要図の神戸市三宮付近の3D表示ページである。もう1つは神戸市周辺の地質図を3D表示するページで、ユーザーは地図を自由に回転、移動することができるほか、地図上をクリックして地質の説明を表示させることができる(図3)。

図3

図3 神戸市周辺の地質図の3D表示
兵庫県のDEMから作成した標高タイルを使って20万分の1日本シームレス地質図V2を3D表現。
背景には地理院タイルの「標準地図」を使用。

また、「シームレス標高タイル」を利用して任意の範囲を3D表示できる「簡易3Dビューアー」も作成、公開した(図4、5)。

図4

図4 「簡易3Dビューアー」の画面
背景には地理院タイルの「標準地図」を使用。

図5

図5 簡易3Dビューアーで作成した兵庫県神鍋火山付近の3D表示
シームレス標高タイルおよび地理院タイルの「写真」を使用。

「シームレス標高タイル」ウェブサイトでは、兵庫県のほか、これまでにPNG標高タイルが公開されていない以下のデータセットからPNG標高タイルを作成、公開している。

西之島付近噴火活動(国土地理院)

日本周辺250mメッシュ(産総研、岸本清行)

大洋水深総図2020(GEBCO)

今後の予定

今後は兵庫県と協力してさまざまなアプリケーションの作成を支援していく。また、詳細な標高データの公開を検討している兵庫県以外の自治体との連携も検討する。さらに、国土地理院がすでに公開している10mメッシュPNG標高タイルなども活用して、PNG標高タイルを利用した各種ウェブサイトやアプリケーションの開発、公開及びそれらの支援を行う。

用語の説明

◆標高タイル
近年の多くの地図ウェブサイトでは、地図画像を正方形のタイル状に分割した地図画像を利用することで表示を高速化している。その仕組みを標高データに応用して、タイルが地図の色ではなく、その位置の標高データを表すものを標高タイルと呼ぶ。
◆航空レーザー測量
航空機に搭載したレーザースキャナーから地上にレーザー光を照射し、地上から反射するレーザー光を受信して地上までの距離を求め、それと航空機の位置情報から地上の標高値を調べる測量方法。
◆1mメッシュ/10mメッシュ/250mメッシュ
いずれも水平方向のデータの密度を表す表現で、それぞれ1m四方、10m四方、250m四方ごとに1点のデータが存在することを示す。この順にデータの密度は粗くなる。
◆大洋水深総図
国際水路機関と国際連合教育科学文化機関・政府間海洋学委員会との共同プロジェクトであり、全世界の海底地形図の作成などを行っている。2020年に公開されたGEBCO_2020では、約500m四方ごとに1点のデータが存在する。
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