2020-06-26 物質・材料研究機構 ,東京化成工業株式会社
NIMSは東京化成工業株式会社と共同で、電気をかけると色が変わる材料「メタロ超分子ポリマー」を安定的に供給できる合成プロセスを確立しました。本材料は、TCIより6月30日から一般販売を予定しています。今後、本材料の普及により、遮光状態と透明状態が電気で切り替え可能な調光ガラス窓の市場拡大が期待されます。
概要
- 物質・材料研究機構 (NIMS) は東京化成工業株式会社 (TCI) と共同で、電気をかけると色が変わる材料「メタロ超分子ポリマー」を安定的に供給できる合成プロセスを確立しました。本材料は、TCIより6月30日から一般販売を予定しています。今後、本材料の普及により、遮光状態と透明状態が電気で切り替え可能な調光ガラス窓の市場拡大が期待されます。
- 電気で着色と透明が切り替わるエレクトロクロミック (EC) 材料を使った調光ガラス窓は、ブラインドやカーテンの機能をガラス自体が担うため、すっきりしたオフィス空間や生活空間を作り出す次世代ガラス窓として世界で実用化研究が進められています。EC調光ガラスは、EC材料を透明電極が付属した2枚のガラス板で挟み、電極間に電気を流すことで色を変えます。ガラス上にEC材料を製膜するには真空蒸着設備が必要となるため、ガラスサイズが大きくなると設備コストが非常に高くなり、一般の窓への普及が進んでいません。そんな中、NIMSは2005年にEC調光ガラスの低価格化が可能な塗布での製膜が行えるEC材料「メタロ超分子ポリマー」を開発しました。この材料は、発色性や色変化の応答性にも優れ、電源を切ってもその発色状態が維持される低消費電力性といった特徴があり、量産に向けた生産プロセスの開発が期待されていました。
- 今回、NIMSとTCIは、メタロ超分子ポリマーの生産プロセスの検討を行った結果、原料の有機分子から本EC材料の合成に至るまでの一貫プロセスを確立することで、安定した品質で量産できる体制を確保しました。月産で百グラムスケール (EC調光ガラスにして数十平米分) の製造を可能としており、本材料の実用化を推進するためにさらなるスケールアップにも取り組んでいます。
- 本EC材料は、本年6月30日にTCIよりPoly(Fe-btpyb) Purpleの製品名 (製品コード : P2789) で一般販売を開始する予定です。今後、TCIから調光ガラスを製造する企業への本材料の販売と、NIMSからの用途特許 (調光ガラス及びその構成モジュール等を製造するための特許) のライセンスをセットで行うことによって、次世代ガラスの市場育成が促進されることが期待されます。
- 本開発は、国立研究開発法人物質・材料研究機構 機能性材料研究拠点 電子機能高分子グループ 樋口昌芳グループリーダーらの研究グループとTCIの共同で行われました。
プレスリリース中の図1 : メタロ超分子ポリマーを用いて作製したEC調光ガラス