(That New Yarn?! — Wearable, Washable Textile Devices Are Possible With MXene-Coated Yarns)
2019/10/10 アメリカ合衆国ドレクセル大学
・ ドレクセル大学が、高導電性の 2 次元材料の MXene で標準的なセルロースベースの織糸をコーティングした、耐久性と導電性に優れた織糸を作製。テキスタイルに手触りやフィット感を付与する線維に機能性を追加し、着用性を制限せずに新たな機能性をファブリックに織り込めることを実証。
・ 同織糸は、その繊維に大量の導電性物質を含有し、標準的な工業用織り機を使用して高い電気的機能をもつテキスタイルを作製できる。
・ テキスタイルをウェアラブルに変換する場合、ファブリックの手触りや特性を変えてしまう硬い金属繊維を使用することが多い。また、銀ナノ粒子、グラフェンや炭素材料を使用した導電性テキスタイルの作製では、環境への影響が懸念され、性能も不十分。さらに、テキスタイルをコーティングして高導電性を確実に付与する方法も、織糸やファブリックが脆弱化し、通常の着用の耐久性を失う。
・ そのため、テキスタイルの製造工程に導入できるほど強靭で、洗濯にも耐えられる革新的で機能的な織糸を大規模開発することが大きな課題であった。・ 同大学では、2011 年の MXene 開発以来、その卓越した特性とアプリケーションについて研究を続けている。水と混ぜた MXene で、添加物や界面活性剤不要でインクやスプレーコーティングを合成できるため、機能性ファブリックを作製する導電性の織糸開発において有力な候補であった。
・ 過去には織糸へのグラフェン、カーボンナノチューブコーティングの添加が試みられているが、 MXene で実証した導電性は銀ナノワイヤでコーティングした織糸のそれに近いレベル。ただし、環境への悪影響等の懸念からテキスタイル産業での銀の使用はかなり制限されている。MXene の使用により、電気エネルギー貯蔵、センシング、電磁波シールド等の様々な機能をテキスタイルに統合できる。
・ MXene は黒い粉末状に見えるが、実際は原子数個分の薄さのフレークから構成される。大きなフレークは広い表面積をもつので、高導電性。このことから、まず繊維に小さなフレークを浸透させ、その後、織糸全体をより大きな MXene フレークの層でコーティングして、織糸の性能を高めた。
・ 本研究では、綿、竹、亜麻の 3 種類の一般的なセルロースベースの糸で、導電性の織糸を作製。標準的な染色法であるディップコーティング法でそれらの織糸に MXene を塗布し、工業用機械で布地に仕立てた。・ 目の詰んだセーターから目の緩いスカーフまで、どのように編んでも耐久性があることを実証するために、各織糸をそれぞれシングルジャージー、ハーフゲージ、インターロックの 3 種類のステッチパターンで編み、生地見本を作製。様々なアプリケーションに向けた多孔性や厚さ等のファブリック特性の制御が可能に。
・ 新技術により、Google の Project Jacquard の一環として Levi’s や Yves Saint Laurent が開発しているようなタッチセンシティブなテキスタイルも作製。
・ MXene ベースの導電性織糸は、工業用織機にも耐久し、完成したファブリックは様々な耐久試験をクリアーした。また、けん引き、ねじり、折り曲げにも耐え、スピンサイクルを伴う数十回の洗濯後もタッチセンシング機能を維持した。
・ MXene コーティングした導電性織糸で特殊なテキスタイルを製造する究極の利点は、全ての機能がシームレスにテキスタイルの中に統合されること。ウェアラブルデバイスに電源を供給するバッテリーを外付けしたり、スマートフォンにワイヤレス接続しなくても、ファブリックでエネルギー貯蔵デバイスやアンテナが作製できる。導電性織糸を利用することで、広範囲にわたる技術的なカスタム化や革新が、糸を織るプロセスにより可能に。例えば、織り上げた圧力センサーの織糸の種類やスティッチパターン、活性材料添加や誘電層を変えることで、性能向上が図れる。
・ 車のシートやインテリア用テキスタイルメーカーの Apex Mills 社との共同事業など、様々なプロジェクトの中で本技術の試験をすでに開始している。今後の課題は、特定の用途に合わせて MXene コーティング量を調節すること。
・ 本研究は、米エネルギー省(DOE)より支援を得た。
URL: https://drexel.edu/now/archive/2019/October/MXene-conductive-yarn/
(関連情報)
Advanced Functional Materials 掲載論文(アブストラクトのみ:全文は有料)
Knittable and Washable Multifunctional MXene‐Coated Cellulose Yarns
URL: https://onlinelibrary.wiley.com/doi/abs/10.1002/adfm.201905015
<NEDO海外技術情報より>
Abstract
Textile‐based electronics enable the next generation of wearable devices, which have the potential to transform the architecture of consumer electronics. Highly conductive yarns that can be manufactured using industrial‐scale processing and be washed like everyday yarns are needed to fulfill the promise and rapid growth of the smart textile industry. By coating cellulose yarns with Ti3C2Tx MXene, highly conductive and electroactive yarns are produced, which can be knitted into textiles using an industrial knitting machine. It is shown that yarns with MXene loading of ≈77 wt% (≈2.2 mg cm−1) have conductivity of up to 440 S cm−1. After washing for 45 cycles at temperatures ranging from 30 to 80 °C, MXene‐coated cotton yarns exhibit a minimal increase in resistance while maintaining constant MXene loading. The MXene‐coated cotton yarn electrode offers a specific capacitance of 759.5 mF cm−1 at 2 mV s−1. A fully knitted textile‐based capacitive pressure sensor is also prepared, which offers high sensitivity (gauge factor of ≈6.02), wide sensing range of up to ≈20% compression, and excellent cycling stability (2000 cycles at ≈14% compression strain). This work provides new and practical insights toward the development of platform technology that can integrate MXene in cellulose‐based yarns for textile‐based devices.