オンチップの量子センシング (Quantum sensing on a chip)

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2019/9/25 アメリカ合衆国マサチューセッツ工科大学(MIT)

MIT researchers have fabricated a diamond-based quantum sensor on a silicon chip using traditional fabrication techniques (pictured), which could enable low-cost quantum hardware.

・ MIT が、標準的な相補型金属酸化膜半導体(CMOS)技術を利用して、ダイヤモンド窒素・空孔中心(NV センター)ベースの量子センサーをシリコンチップ上に初めて作製。量子コンピューティング、センシングや通信に向けた低コストでスケーラブルなハードウェア開発の可能性を拓く。
・ 既存の NV ベース量子センサーは、キッチンテーブル程の大型で、高額な別個の構成部品の必要性が実用性とスケーラビリティーを制限している。
・ ダイヤモンド結晶格子構造中の隣接する 2 箇所の炭素(C)がそれぞれ窒素(N)と空孔(V)に置き換わることで発生する NV センターは、結晶構造中の電子を伴った欠陥。この電子は周囲の電気的、磁気的、光学的特性の僅かな変動に対して容易に反応する。
・ NV センターは、原子のような機能に加え、色付のフォトンを吸収・放出する光ルミネセンス特性を有する。光やマイクロ波の照射によりセンターの状態が変化し、それに伴って電子のスピンも変化。その電子の状態に応じて異なる量の赤色光を放出する。このような光は磁界や電界の量子情報を含んでおり、バイオセンシング、神経画像撮像や物体検出等多様なセンシングアプリケーションに利用できる。
・ 光検出磁気共鳴法(optically detected magnetic resonance: ODMR)では、磁界との相互作用で放出されるフォトンを測定し、磁界に関するより詳細で定量的な情報が得られるが、作動にはかさ張る構成部品が多量に必要。・ 今回、マイクロ波発振器、光学フィルターや光検出器を含むかさ張る全構成部品を、従来の CMOS 技術でミリメートルスケールに一つにまとめる方法を開発。新量子センサーは、室温下で磁界の方向と規模を検出できる。
・ 同量子センサーを磁気測定(magnetometry)で実証。センサーを取り巻く環境の情報を含有する、周囲の磁界による周波数の原子スケールでの変化を測定した。さらに高度化を進めれば、脳の電気インパルスのマッピングから非視線方向(NLOS)の物体検出まで、多様なアプリケーションの可能性が期待できる。
・ チップ上に極めて複雑な 3D 構造を構築できる CMOS 技術により、安価で微細な構成部品を配置・積層した新しいチップ・アーキテクチャを作製(一般的なチップスケールの LED でもある)。微量のダイヤモンドと緑色光源のみでチップ上に完全なシステムを構築した。
・ NV センターをチップのセンシング領域に配置し、その近くに配置したナノワイヤが電流に反応してマイクロ波を発生させる。光とマイクロ波の双方が NV センターに異なる量の赤色光を放出させ、その量の差は読み取り用のターゲット信号となる。
・ NV センターの下には、ノイズを除去してフォトンを測定する光検出器を、それらの間には、緑色のレーザー光を吸収して赤色光を光検出器に送る、フィルター機能の金属グレーティングを配置。これらによりオンチップの ODMR デバイスが完成。
・ マイクロ波を作るナノワイヤとNVセンター間の最適な距離が電子の操作に充分な磁界を発生させ、微小チップ 1 個で大型マシンの役割を担う。また、マイクロ波の導線とその発生電子回路構成の高密度な統合と協調設計も効果をもたらし、実際の物体検出に充分な磁界の発生が確認できた。
・ 今年度初頭の半導体集積回路技術に関する国際会議(ISSCC)での発表論文で、感度を百倍向上させる設計の第二世代量子センサーについて説明。次いで千倍向上のロードマップについて言及。チップのスケールアップで、NV センターを高密度化(これが感度を決定)する。実現すれば、神経画像撮像や車輌・航空機の GPS での利用が期待できる。
・ 次の段階では、量子センサーの感度とバンド幅の更なる向上と、化学分析、核磁気共鳴分光や物質特性解析等、幅広いアプリケーションへの統合を目指す。
URL: http://news.mit.edu/2019/quantum-sensing-chip-0925

(関連情報)
Nature Electronics 掲載論文(アブストラクトのみ:全文は有料)
A CMOS-integrated quantum sensor based on nitrogen–vacancy centres
URL: https://www.nature.com/articles/s41928-019-0275-5

<NEDO海外技術情報より>

Abstract

The nitrogen–vacancy (NV) centre in diamond can be used as a solid-state quantum sensor with applications in magnetometry, electrometry, thermometry and chemical sensing. However, to deliver practical applications, existing NV-based sensing techniques, which are based on bulky and discrete instruments for spin control and detection, must be replaced by more compact designs. Here we show that NV-based quantum sensing can be integrated with complementary metal–oxide–semiconductor (CMOS) technology to create a compact and scalable platform. Using standard CMOS technology, we integrate the essential components for NV control and measurement—microwave generator, optical filter and photodetector—in a 200 μm × 200 μm footprint. With this platform we demonstrate quantum magnetometry with a sensitivity of 32.1 μT Hz−1/2 and simultaneous thermometry.