世界初、石炭ガス化燃料電池複合発電(IGFC)の実証事業に着手

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石炭火力発電の高効率化とCO2排出量の大幅削減の両立を目指す

2019-04-17  新エネルギー・産業技術総合開発機構,大崎クールジェン株式会社

NEDOと大崎クールジェン(株)は、大崎クールジェンプロジェクトの第3段階にあたるCO2分離・回収型石炭ガス化複合発電(IGCC)設備に燃料電池を組み込んだCO2分離・回収型IGFCの実証事業に着手しました。

今般着手した第3段階では、2019年度完成予定の第2段階で建設するCO2分離・回収型酸素吹IGCC実証設備に燃料電池を組み合わせて石炭ガス化ガスの燃料電池への適用性を確認し、最適なCO2分離・回収型IGFCシステムの実現に向けた実証を行います。500MW級の商業機に適用した場合に、CO2回収率90%の条件で47%程度の送電端効率(HHV)達成の見通しを立てることを目標とします。

今後、高効率な石炭火力発電とCO2分離・回収が両立する技術を確立し、国内外で本技術を普及させることで、世界的なCO2排出量抑制(地球温暖化対策)への貢献を目指します。

実証試験設備配置図(中国電力(株)大崎発電所構内)を表した図
図1 実証試験設備配置図(中国電力(株)大崎発電所構内)

1.概要

石炭は、供給安定性が高く経済性にも優れることから、エネルギー自給率が極めて低い日本にとって重要な1次エネルギー源であり、発電分野においても石炭火力発電は発電電力量の約3割を占める重要な電源の一つです。

一方で、石炭は他の化石燃料と比べると、燃焼時の単位発熱量当たりの二酸化炭素(CO2)排出量が多く、地球環境面での制約要因が多いという課題を抱えており、石炭火力発電についてもさらなるCO2排出量の抑制が求められています。

そこで、国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)と大崎クールジェン株式会社※1は、石炭火力発電から排出されるCO2を大幅に削減するため、究極の高効率石炭火力発電技術である石炭ガス化燃料電池複合発電(IGFC)※2とCO2分離・回収技術を組み合わせた革新的な低炭素石炭火力発電の実現を目指す大崎クールジェンプロジェクトに取り組んでいます。

IGFC実証事業は、酸素吹IGCC※3実証(第1段階)、CO2分離・回収型酸素吹IGCC※4実証(第2段階)、CO2分離・回収型IGFC※5実証(第3段階)で構成し、中国電力株式会社の大崎発電所構内に建設した17万kW規模の実証試験設備で、システムの性能や運用性、信頼性、経済性について検証します。2017年3月から開始した第1段階の実証試験では、17万kW規模の実証プラントとしては世界最高レベルの効率となる送電端効率※640.8%(HHV※7)を達成し、500MW級の商業機での送電端効率約46%の達成に見通しが立ちました。また第2段階の実証のため、現在、CO2分離・回収設備の建設工事を進めており、2019年夏ごろ試運転を開始し、その後本格的な実証試験に乗り出す予定です。

そして今般、第3段階の実証設備の設計作業を開始し、CO2分離・回収型酸素吹IGCC設備に燃料電池を組み込んだCO2分離・回収型IGFCの実証事業に着手しました。第2段階までで建設したCO2分離・回収型酸素吹IGCC実証設備に燃料電池を組み合わせて石炭ガス化ガスの燃料電池への適用性を確認し、最適なCO2分離・回収型IGFCシステムの実現に向けた実証を行います。500MW級の商業機に適用した場合に、CO2回収率90%の条件で47%程度の送電端効率(HHV)達成の見通しを得ることを目標とします。

実証試験システム概要を表した図

図2 実証試験システム概要

実証試験主要スケジュールを表した図

図3 実証試験主要スケジュール

2.事業の内容
(1)事業名

次世代火力発電等技術開発/石炭ガス化燃料電池複合発電実証事業/CO2分離・回収型IGFC実証

(2)事業総額(予定)

7,330百万円 (助成率は1/2)

(3)期間

2018年度~2022年度

(4)研究開発内容

石炭火力発電から排出されるCO2を大幅に削減するべく、究極の高効率石炭火力発電技術である石炭ガス化燃料電池複合発電とCO2分離・回収を組み合わせた実証試験を行い、CO2分離・回収型IGFC商用機(500MW級)として送電端効率47%(HHV)程度の達成見通しを得ることを目標とします。

(5)助成先

大崎クールジェン(株)

【注釈】
※1 大崎クールジェン株式会社
中国電力株式会社と電源開発株式会社の共同出資会社です。
※2 石炭ガス化燃料電池複合発電(IGFC)
石炭をガス化して、燃料電池、ガスタービン、蒸気タービンの3種類の発電形態を組み合わせて複合発電を行う発電方式 のことです(Integrated Coal Gasification Fuel Cell Combined Cycle)。
※3 酸素吹IGCC(酸素吹石炭ガス化複合発電)
石炭をガス化して、ガスタービン、蒸気タービンの2種類の発電形態を組み合わせて複合発電を行う発電方式(Integrated Coal Gasification Combined Cycle)には、石炭ガス化炉に酸素を供給する酸素吹方式と空気を供給する空気吹方式があります。CO2分離・回収設備と組み合わせる場合には、酸素吹方式の方がエネルギー効率的に優れているとされます。
※4 CO2分離・回収型酸素吹IGCC
CO2分離・回収設備を備えた酸素吹IGCCのことです。
※5 CO2分離・回収型IGFC
CO2分離・回収設備を備えたIGFCのことです。
※6 送電端効率
発電効率には、発電端効率と送電端効率があり、発電端効率は発電機端子で計測した電力量を用い、送電端効率は発電機端子で計測した電力量から実際の所内電力(発電に必要な全補機動力)を差し引いた電力量を用いて算出します。
※7 HHV
高位発熱量基準の略です。燃料が燃焼した時に発生するエネルギー(発熱量)を表示する際の条件を示すもので、燃料の燃焼によって生成された水蒸気の蒸発潜熱も発熱量として含めたものです。高位発熱量は、総発熱量とも呼ばれます。高位発熱量から燃料の燃焼によって生成された水蒸気の蒸発潜熱を除いた低位発熱量(真発熱量)に比べ、見かけ上の熱効率が低く表示されます。高位発熱量基準は、政府のエネルギー統計、電力会社の発電効率基準、都市ガスの取引基準などに用いられています。
3.問い合わせ先
(本ニュースリリースの内容についての問い合わせ先)

NEDO 環境部 担当:高橋、布川、在間
大崎クールジェン(株) 総務企画部 担当:沖野、中田

(その他NEDO事業についての一般的な問い合わせ先)

NEDO 広報部 担当:鈴木(敦)、藤本、佐藤、坂本

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