世界初、無人航空機に搭載した衝突回避システムの探知性能試験を実施

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福島ロボットテストフィールドで、有人ヘリコプター衝突回避の模擬飛行試験

2018/12/14  新エネルギー・産業技術総合開発機構,福島県,南相馬市,株式会社SUBARU,日本無線株式会社,日本アビオニクス株式会社,三菱電機株式会社,株式会社自律制御システム研究所

NEDO、(株)SUBARU、日本無線(株)、日本アビオニクス(株)、三菱電機(株)、(株)自律制御システム研究所は、福島県と南相馬市の協力のもと、12月10日から14日に、復興工業団地内「福島ロボットテストフィールド」(福島県南相馬市)で、中型の無人航空機に搭載した衝突回避システムの探知性能試験を世界で初めて実施しました。

今回は、あらかじめ設計した経路に従って、中型の無人航空機が有人ヘリコプター(空中静止)を避けて飛行する、模擬的な衝突回避試験を行いました。無人航空機には各種センサーや準天頂衛星システム対応受信機などを搭載し、飛行中に適切に対象物(有人ヘリコプター)を探知できるかなど、衝突回避システムの動作を確認することができました。

来年度は、本成果を踏まえ、向かい合って飛行する有人ヘリコプターに対して、自律的に衝突を回避する無人航空機の飛行試験を行う予定です。

今後、衝突回避システムを確立することで、災害対応や物流などの分野における無人航空機の実用化を推進します。さらに、より小型の無人航空機への機能搭載を見据えた社会実装を推進します。

なお、本試験は、2017年11月22日にNEDOと福島県が締結したロボット・ドローンの実証等に関する協力協定の取り組みの一環です。

世界初、無人航空機に搭載した衝突回避システムの探知性能試験を実施

図1 今回の模擬飛行のイメージ

1.概要

一般にドローンと呼ばれる小型の無人航空機や、それよりも一回り大きく、より大きなセンサーなどを搭載できる中型の無人航空機は、既に農業分野などで利用が広がり、さらには災害時の物資運搬や遭難者捜索、物流インフラなどの用途が大いに期待され、運用数は増加しています。しかし、無人航空機とドクターヘリなどの有人航空機のニアミスの実例※1が国内で報告されるなど、衝突回避技術は、安全利用のための喫緊の課題となっています。また、衝突回避技術は、無人航空機の実用化に必要とされる、「目視外飛行※2」および「第三者上空飛行※3」の実現に欠かせない技術です。

このような背景のもと、国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は、物流、インフラ点検、災害対応などの分野で活用できる無人航空機の性能評価基準等の研究開発を進めるとともに、安全に社会実装するためのシステム構築および飛行試験などを実施するプロジェクト※4を進めています。具体的には、運航管理システムの開発、衝突回避技術の開発、国際標準化活動に取り組んでいます。

今般、NEDO、株式会社SUBARU、日本無線株式会社、日本アビオニクス株式会社、三菱電機株式会社、株式会社自律制御システム研究所は、福島県と南相馬市の協力のもと、12月10日から14日に、復興工業団地内「福島ロボットテストフィールド※5」(福島県南相馬市)で、中型の無人航空機に搭載した衝突回避システムの探知性能の確認試験を世界で初めて実施しました。

本試験では、あらかじめ設計した経路に従って、中型の無人航空機が有人ヘリコプター(空中でホバリングして静止)を避けて、時速40km程度で飛行する、模擬的な衝突回避を行いました。無人航空機には各種センサーや準天頂衛星システム対応受信機などを搭載し、飛行中に適切に対象物(有人ヘリコプター)を探知できるか、飛行中の無人航空機を高精度に測位できるかなど、衝突回避システムの動作を確認することができました。

来年度は、本成果を踏まえ、向かい合って飛行する有人ヘリコプターに対して、自律的に衝突を回避する無人航空機の飛行試験を行う予定です。

また、小型の無人航空機については、現状、中型の無人航空機のように多くのセンサー機器類を搭載することができないため、全く同じ衝突回避システムをそのまま利用することができません。そこで、今回、超小型のセンサーや準天頂衛星システム対応受信機などを用いた模擬飛行試験を合わせて実施しました。

今後、衝突回避技術を確立することで、災害対応や物流などの分野における無人航空機の実用化を推進します。さらに、より小型の無人航空機への機能搭載を見据えた社会実装を推進します。

なお、本試験は、2017年11月22日にNEDOと福島県が締結したロボット・ドローンの実証等に関する協力協定※6の取り組みの一環として実施されたものです。

2.各社の役割分担
株式会社SUBARU ・ヘリコプター型の無人航空機に搭載可能な小型・軽量の自律管理装置を開発。

・自律管理装置により、衝突の危険性を自動的に判断し、上昇・降下・旋回などの最適な回避行動を選択するシステムを開発。

・各社が開発する装置からの情報を自律管理装置の探知ロジックにより、回避経路を決定する。また、システム全体のインテグレーションを担う。

日本無線(株) ・中型の無人航空機に搭載可能な小型・軽量な電波センサー(レーダー)を開発。

・電波センサー(レーダー)により、全方位で、主に遠方(約5km先)の物体の探知を実現。

日本アビオニクス(株) ・中型の無人航空機に搭載可能な小型・軽量・高解像度の光波センサー(カメラ)一体型のAI応用画像処理装置を開発。主に近傍(約500m程度)の物体の探知・識別を実現。

・光波センサー(カメラ)により、全方位で、空中の有人ヘリコプターや無人航空機を探知・識別する画像認識技術を開発。

三菱電機(株) ・中型・小型の無人航空機共に、精度の高い回避行動を実現するために、準天頂衛星システムのセンチメートル級測位補強サービスに対応した小型・軽量の準天頂衛星システム対応受信機を開発。
(株)自律制御システム研究所 ・将来、より小型の無人航空機への自律管理装置、レーダーの搭載を見据え、現状において搭載が可能な超小型光波センサー(カメラ)および小型軽量な処理装置を用いた衝突回避を実現する技術を開発する。

 

 

 

3.実施した試験の内容と結果
(1)衝突回避センサーの動作確認と性能評価
<目的>
  • 衝突回避システムを構成する各種センサーについて、空中での動作確認と性能評価を行う。
  • 各種センサーが適切に機能し、大きさの異なる対象物を適切に探知できることを確認する。
<方法>
  • 各種センサーを搭載した中型の無人航空機をホバリングさせ、空中に静止させる。
  • そこに、有人ヘリコプターや小型の無人航空機を、さまざまな距離、方位、速度で接近させる。
<結果>
  • 異なるサイズの対象物について、さまざまな距離、方位、速度で、全ての衝突回避センサーが設計通り機能したことが確認できた。
  • 今後、これらセンサーによって構成される衝突回避システムとして、接近する有人ヘリコプターや他の無人航空機との衝突を自動で判断するめどが得られた。
(2)準天頂衛星システム対応受信機を用いた高精度の測位評価
<目的>
  • 既存の測位技術を無人航空機に搭載した場合、3次元上で数メートル程度の測位精度でしか飛行中の無人航空機の位置を同定できなかったが、準天頂衛星システム対応受信機を搭載することで、3次元上で10cm程度の測位精度が期待できる。この精度を確認する。
<方法>
  • 中型の無人航空機および小型の無人航空機に準天頂衛星システム対応受信機を搭載し、飛行中の測位精度を確認する。
<結果>
  • 飛行中の中型の無人航空機について、3次元上で10cm程度の測位精度が確認できた。
  • また、飛行中の小型の無人航空機について、3次元上で10cm程度の測位精度が確認できた。
  • 今後、高精度測位によって、衝突回避経路を正確に設定することが期待できる。
  • また、自律飛行する無人航空機が、衝突回避行動をとった後で、当初設定されていた飛行経路に精度よく復帰することが期待できる。
(3)模擬飛行試験における衝突回避システムの性能評価
<目的>
  • 中型の無人航空機および小型の無人航空機が有人ヘリコプターの周りで衝突回避経路を飛行した場合に、衝突回避システムが設計通りに機能するのか評価する。
<方法1 中型の無人航空機>
  • 有人ヘリコプターをホバリングさせ、空中で静止させる。
  • あらかじめ、有人ヘリコプターとの水平方向の最低安全離隔距離(150m)を確保し、衝突を回避するための中型の無人航空機の飛行経路を設定する。
  • 衝突回避システムを搭載した中型の無人航空機を、飛行経路に沿って自律飛行(時速40km程度)させる。飛行中の各種センサー、準天頂衛星システム対応受信機、衝突回避システムの動作を確認する。
<方法2 小型の無人航空機>
  • 有人ヘリコプターをホバリングさせ、空中で静止させる。
  • あらかじめ、有人ヘリコプターとの垂直下方向の最低安全離隔距離(30m)を確保した上で、ダウンウォッシュ(吹き下ろし)※7の影響が少なく、落下せずに衝突回避できる小型の無人航空機の飛行経路を設定する。
  • 超小型光波センサーと準天頂衛星システム対応受信機を搭載した小型の無人航空機を、飛行経路に沿って自律飛行(時速40km程度)させる。飛行中の超小型光波センサー、準天頂衛星システム対応受信機の動作を確認する。
<結果>
  • (1)で確認した結果を踏まえ、衝突回避センサーなどの機器類が適切に動作し、飛行中の中型の無人航空機および小型の無人航空機から有人ヘリコプターを適切に探知できた。
  • (2)で確認した結果を踏まえ、準天頂衛星システム対応受信機のデータに基づき、衝突回避のための経路を飛行できた。
(4)今後の予定

以上の(1)~(3)の結果を踏まえ、来年度は、互いに対面方向に飛行中の中型の無人航空機から、有人ヘリコプターを探知し、自律的に衝突を回避する飛行試験を行う予定です。

模擬飛行する中型の無人航空機の様子の図

図4 模擬飛行する中型の無人航空機の様子

【注釈】
※1 有人航空機のニアミス案件の実例
 「航空機と無人航空機、無人航空機同士の衝突回避策等について(国土交通省航空局、2016年11月8日)」のp16参照。
※2 目視外飛行
無人航空機の操縦者が自分の目によって無人航空機の位置や姿勢および航行の安全性を確認できない飛行のこと。長距離の物流やインフラ点検には必須であるが、実現には操縦者の目視に代わる安全措置の実施や、衝突回避技術の実装などが必要。
※3 第三者上空飛行
無人航空機の運航に関与しない第三者の上空を飛行すること。市街地などで物流を実施する場合などに必須であるが、実現には、高い安全性や信頼性を確立する技術が必要。
※4 プロジェクト
事業名:ロボット・ドローンが活躍する省エネルギー社会の実現プロジェクト
実施期間:2017年度~2021年度の5年間を予定
2018年度予算:32.2億円

※5 福島ロボットテストフィールド物流、インフラ点検、大規模災害などに活用が期待される無人航空機、災害対応ロボット、水中探査ロボットといった陸・海・空のフィールドロボットを主対象に、実際の使用環境を拠点内で再現しながら、研究開発、実証試験、性能評価、操縦訓練を行うことができる研究開発拠点。福島県南相馬市および浪江町で2018年度から順次開所中。

※6 福島ロボットテストフィールドを活用したロボット・ドローンの実証等に関する協力協定NEDOと福島県の連携を強化し、「ロボット・ドローンが活躍する省エネルギー社会の実現プロジェクト」において福島ロボットテストフィールドを積極的に活用することでロボット・ドローンの実用化を加速させ、福島イノベーション・コースト構想の推進とロボット・ドローン産業の活性化を図るべく、2017年11月22日に締結された協定。 なお、協定の正式名称は「福島ロボットテストフィールドを活用したロボット・ドローンの実証等に関する国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構と福島県との協力協定」。

※7 ダウンウォッシュ(吹き下ろし)
ヘリコプターの飛行中に、ヘリコプターの下方に発生する下向きの気流。
4.問い合わせ先
(本ニュースリリースの内容についての問い合わせ先)

NEDO ロボット・AI部 担当:宮本、桐生、永松
福島県 商工労働部産業創出課 ロボット産業推進室 担当:北島
(株)SUBARU 広報部 担当:矢野、村上、扇、波多腰
日本無線(株) 経営企画部 担当:廣瀬
日本アビオニクス(株) 経営企画本部 企画部 担当:吉武、中山
三菱電機(株) 広報部 担当:塚原
(株)自律制御システム研究所 担当:早川

(その他NEDO事業についての一般的な問い合わせ先)

NEDO 広報部 担当:藤本、坂本、佐藤

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