多彩な構造を持つ惑星誕生現場 ―若い星MWC 758 の高解像度観測

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若い星MWC 758 の高解像度観測

2018/06/21 台湾中央研究院天文及天文物理研究所 アリゾナ大学

台湾中央研究院天文及天文物理研究所/アリゾナ大学のロビン・ドン氏らの研究チームは、アルマ望遠鏡を使って若い星MWC 758を観測し、この星を回る塵の円盤にさまざまな構造があることを発見しました。高解像度撮影で写し出された円盤には、渦巻き腕や塵のかたまり、少しひしゃげた形に開いた円盤の穴といった構造が見つかり、これらは円盤内で形成されつつある惑星によって作られている可能性があります。これまでもアルマ望遠鏡は若い星の円盤を数多く撮影してきましたが、またひとつ惑星誕生現場の素顔が明らかになりました。

MWC 758-jp

アルマ望遠鏡が波長0.87mmのサブミリ波で観測した、若い星MWC 758のまわりの円盤。中心部には大きな楕円形の穴が開いており、その外側の円盤には3重のリングと2か所の塵のあつまり、渦巻き腕などいろいろな構造が写し出されています。
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Credit: ALMA (ESO/NAOJ/NRAO), Dong et al.

「若い星を取り巻く円盤にはいろいろな構造が見つかっていますが、いったいどうやって作られたのか。これは、10年以上も天文学者たちを悩ませ続けている謎です。私たちは、MWC 758の円盤に驚くほど豊かな構造があることを見つけました。そしてこの発見は、いろいろな構造の起源について重要な示唆をしてくれます。」と、ドン氏はコメントしています。

2000年代前半から、惑星誕生の現場である原始惑星系円盤の詳細な観測が行われるようになりました。数十個の円盤の観測の結果、円盤には隙間や環、塵の分布の偏りや渦巻き腕などさまざまな構造があることがわかってきました。そして、この構造の原因について天文学者たちは熱い議論を交わしてきました。円盤内で出来上がりつつある惑星の重力によっていろいろな構造が作られる、というのがひとつの説です。ほかにも、例えば円盤中央部に開いた穴は星からの光によって円盤が蒸発することでできたという考え方や、特別な条件下では円盤の影によって渦巻き模様が現れるはずだという説も唱えられてきました。

今回観測対象となったMWC 758は、おうし座の方向に地球からおよそ500光年離れた場所に浮かぶ若い星です。2013年、すばる望遠鏡の近赤外線観測によってMWC 758の円盤に2本の渦巻き腕が発見されました。ドン氏らは2015年に発表した論文の中で、木星より重い惑星が円盤のすぐ外側に存在すればこの渦巻き腕が作られうる、と論じています。また別の望遠鏡による電波観測では、円盤の中央部に大きな穴が開いていて、円盤部分には塵のかたまりがふたつ存在することも明らかになりました。では、この星を高い解像度を持つアルマ望遠鏡で観測するとどう見えるのか。2017年11月に、観測が行われました。

観測の結果、円盤の中心部に開いている穴が円形ではなく、楕円形をしていることがわかりました。また、星の位置が楕円の焦点のひとつに合致していることも明らかになりました。さらに、すばる望遠鏡で発見された2本の渦巻き腕のうちの1本が、アルマ望遠鏡の観測でも見えていました。

「MWC 758はとても珍しい星です」と、共同研究者のシェンヤン・リュウ氏(中央研究院天文及天文物理研究所)はその驚きを語っています。「これまでいろいろな原始惑星系円盤で見つかっていた主要な構造がすべて、このひとつの星のまわりに見えているのです。原始惑星系円盤で惑星がまさに作られているという、もっともまとまった証拠が見つかったといえるでしょう。」

共同研究者である工学院大学の武藤恭之氏は、「アルマ望遠鏡による観測で、これらの構造が惑星によって作られたという重要な証拠が得られました。例えば、円盤にあいた穴が楕円形をしていて焦点の位置に星があるということは、ケプラーの第一法則に従ったものだといえます。これは、穴が力学的な要因によってできたことを示しています。つまり、惑星の重力によるものである可能性が高いのです。」と語っています。円盤の穴は中心星からの光によって円盤が壊されることでできるという考え方もありましたが、光は星から対称に出ていくので、楕円形の穴を作ることはできません。

円盤に見つかっていた2本の渦巻き腕のうち1本がアルマ望遠鏡で見えたことも、重要な成果です。すばる望遠鏡などによる近赤外線観測で見えていたのは、星の光が円盤表面で反射したようすでした。つまり、円盤表面の模様ともいえます。実はこれだけでは、実際に模様どおりに塵が分布しているのか、あるいは円盤構造の影によって渦巻き腕に見えているだけなのかはわかりません。今回、塵から放たれる電波を観測するアルマ望遠鏡で渦巻き腕が見えたことで、実際に渦巻き腕の形に塵が密集していることがはっきりしました。しかも、アルマ望遠鏡の高い解像度により、近赤外線観測で見つかった渦巻き腕とアルマ望遠鏡で見えている渦巻き腕の位置がわずかにずれていることも明らかになりました。これは、惑星が作り出す「密度波」の理論とも合致します。

「これほど素晴らしい観測ができたのは、やはりとても高い解像度を持つアルマ望遠鏡ならではです。これほど高い解像度で観測された惑星誕生現場は、ほんの一握りしかありません。MWC 758は、そんな『エリートクラブ』の一員に加わったのです。」と、共同研究者の秋山永治氏(北海道大学)は今回の研究の感想を述べています。

論文・研究チーム
この研究成果は、Dong et al. “The Eccentric Cavity, Triple Rings, Two-Armed Spirals, and Double Clumps of the MWC 758 Disk” として、天文学専門誌「アストロフィジカル・ジャーナル」に2018年6月20日に掲載されました。

この研究を行った研究チームのメンバーは、以下の通りです。
Ruobing Dong (U. of Arizona, USA; ASIAA, Taiwan), Sheng-yuan Liu (ASIAA, Taiwan), Josh Eisner (University of Arizona, USA), Sean Andrews (Harvard-Smithsonian Center for Astrophysics, USA), Jeffrey Fung (UC Berkeley, USA), Zhaohuan Zhu (UNLV, USA) Eugene Chiang (UC Berkeley, USA),橋本淳 (自然科学研究機構アストロバイオロジーセンター), Hauyu Baobab Liu (European Southern Observatory, Germany), Simon Casassus (University of Chile, Chile), Thomas Esposito (UC Berkeley, USA), Yasuhiro Hasegawa (JPL/Caltech, USA), 武藤恭之 (工学院大学), Yaroslav Pavlyuchenkov (Russian Academy of Sciences, Russia), David Wilner (Harvard-Smithsonian Center for Astrophysics, USA), 秋山永治 (北海道大学), 田村元秀 (自然科学研究機構アストロバイオロジーセンター/東京大学), and John Wisniewski (U. of Oklahoma, USA)

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