国内初、高効率帯水層蓄熱システムを開発

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初期導入コスト23%削減と運用コスト31%削減の達成にめど

2018/06/11 新エネルギー・産業技術総合開発機構 日本地下水開発株式会社 秋田大学

NEDOと日本地下水開発(株)は、秋田大学、産業技術総合研究所とともに、地下帯水層に冷熱・温熱を蓄え、冷暖房に有効利用できる国内初の高効率帯水層蓄熱システムを開発しました。

本システムを山形県山形市内の事務所建屋の空調に導入し、実証実験を行った結果、従来システムと比べて初期導入コストの23%削減と、1年間の運用コストの31%削減を達成できる見込みを確認しました。

今後、引き続き実証実験を実施し、注入状況などの稼働データのモニタリングやシステム効率の検証を行うとともに、本システムの普及に向けた導入マニュアル作成を進めます。

1.概要

再生可能エネルギーの利用拡大には、電力に加え、熱(地中熱・太陽熱・雪氷熱など)の利用も重要ですが、再生可能エネルギー熱利用※1においては、導入コストや運用コストが高いことが課題として挙げられています。そこでNEDOでは、「再生可能エネルギー熱利用技術開発※2」において、再生可能エネルギー熱利用システムの普及促進・市場拡大を図るために、システムのコストダウンに関する技術開発を実施しています。

今般、NEDOと日本地下水開発株式会社は、国立大学法人秋田大学、産業技術総合研究所(産総研)とともに、地下帯水層※3に冷熱・温熱を蓄え有効利用できる国内初の高効率帯水層蓄熱システムを開発しました。本システムを山形県山形市内の事務所建屋の空調に導入し、実証実験を行った結果、従来のオープンループシステム※4と比較して、初期導入コストの23%削減と、1年間の運用コストの31%削減を達成できる見込みを確認しました。

今回開発した高効率帯水層蓄熱システムは、2本の井戸を冬期と夏期で交互利用し、地下水の流れの遅い地下帯水層に冬期の冷熱、夏期の温熱をそれぞれ蓄えます。夏期は、冷房利用することにより温められた地下水を、さらに太陽熱により加温し、温熱として地下帯水層に蓄え、冬期は、その暖かい地下水を暖房利用することで冷やされ、さらに消雪の熱源として利用することでさらに低温となった冷熱源として地下帯水層に蓄えます。こうした地下帯水層を利用することにより、システム効率を向上させて大幅な省エネ化が実現できます。

従来のオープンループシステムでは、熱利用後の地下水を地下帯水層に注入するのが困難となる課題が生じるほか、井戸の維持管理のために行う逆洗運転※5などが運用コストアップの一因となっていました。そこで本事業において、密閉式井戸の開発、さらには短期間に低コストで設置する工法を確立することによって、揚水された地下水を逆洗運転することなく、地下帯水層への100%注入を実現しました。また、再委託先である中外テクノス株式会社による地下微生物と地下水水質の定期的な分析・モニタリング結果から、帯水層蓄熱システムの稼働に伴って帯水層に実用レベルの温度変化を与えても、環境影響はないと評価されました。

今後、高効率帯水層蓄熱システムの実証実験を引き続き実施し、地下水の注入状況などの稼働データモニタリングを継続しながら、システム効率などの検証を行うとともに、普及に向けた本システムの導入マニュアルの作成を進めます。2019年度以降は、秋田大学と産総研が開発を進めている、東北地方主要5地域における帯水層蓄熱システムの適合性評価のためのポテシャルマップを活用し、本システムの適合可能な地域に積極的に高効率帯水層蓄熱システム導入を進めていきます。

国内初、高効率帯水層蓄熱システムを開発
図 高効率帯水層蓄熱システムの模式図

2.今回の成果

(1)密閉式井戸の開発
井戸内圧力が上昇しても井戸周囲への地下水の吹き出しを抑制する密閉式井戸を開発しました。また、高速ボーリングマシンを利用し、短期間・低コストで密閉式井戸を設置する技術を確立しました。

(2)専用ヒートポンプの開発
再委託先であるゼネラルヒートポンプ工業株式会社と共同で、熱源となる地下水を一次側熱交換器に直接導入可能なヒートポンプを開発し、COP※6を0.5以上向上しました。

(3)省エネルギー制御
ヒートポンプの出力に合わせて機器をインバーター制御することで、省電力および地下水量の低減を実現しました。

【機器仕様】

密閉式井戸 完成口径 φ150mm、深度72m、4本
専用ヒートポンプ 冷暖房出力30kW級(インバーター対応)、1基
地下水揚水ポンプ 定格出力1.5kW(インバーター対応)、1基
ラインポンプ 定格出力0.75kW(インバーター対応)、1基
ファンコイルユニット 放熱能力10kW、6基
【注釈】
※1 再生可能エネルギー熱利用

冷暖房や給湯のための熱を得るために地中熱、太陽熱、雪氷熱などの再生可能エネルギーを用いること。

※2 再生可能エネルギー熱利用技術開発

プロジェクト期間は2014年度~2018年度の5年間で、2018年度予算は8億円。

再生可能エネルギー熱利用技術開発

※3 帯水層

地下水で満たされた砂層や礫層など透水性が良い地層。

※4 オープンループシステム

地下水を汲み上げ、ヒートポンプなどの熱源として利用するシステム。

※5 逆洗運転

オープンループシステムの注入井で、通常運転の流れの向きとは逆の運転(揚水)を行うことで、注入井のストレーナ周囲に付着した目詰まり物質などを除去する運転。

※6 COP成績係数(Coefficient Of Performance)の略。消費電力1kWあたりの冷却・加熱能力を示す値。

3.問い合わせ先
(本ニュースリリースの内容についての問い合わせ先)

NEDO 新エネルギー部 担当:増田

日本地下水開発(株) 営業本部企画開発部 担当:山谷

(その他NEDO事業についての一般的な問い合わせ先)

NEDO 広報部 担当:髙津佐、坂本、藤本

0105熱工学
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