2021-08-23 国立天文台
図1:2021年8月12日早朝 (ハワイ時)、マウナケアの上空を流れるペルセウス座流星群に属する火球。ハワイと日本の時差は 19 時間です。ハワイ時の12日早朝は、日本では13日の夜中にあたります。なお、手前のケック望遠鏡ドームのあたりから右上に向かって空が明るいのは黄道光によるもの。(クレジット:国立天文台・朝日新聞社)
2021年のペルセウス座流星群は、8月12日早朝 (ハワイ時) に極大を迎えました。日本は全国的に悪天候でしたが (注1)、月が出ない好条件の中、世界各地から活発な流星群の活動が報告されています。
すばる望遠鏡に設置されたマウナケア星空ライブカメラ (注2) の配信サイトにも、多くの方が訪問し、マウナケアの上空を飛ぶ流星達の姿を楽しみました。星空ライブカメラのパートナーである朝日新聞宇宙部の集計によると、8月11日から12日にかけての極大日の夜は、最大同時視聴者数が1万人を超え、総再生回数は 30 万回に迫りました。極大日の前後数日も含めると、視聴回数はのべ 50 万回を超えたとのこと。ご訪問してくださった大勢の方々に心から感謝申し上げます。
誰も予想しなかった、「あり得ない大出現」
今年のペルセウス座流星群には「おまけ」がありました。極大日から2日も過ぎた13日の午後10時過ぎ (ハワイ時) から、予想以上に多くの流星が流れ始めたのです。これは誰も予想もしていない出来事でした。
間もなく、世界各地の流星観測者のネットワークに、突発出現の報告が入り始めました。日本の研究者にとっても、マウナケア星空ライブカメラのライブ配信は、出現の状況をいち早く捉えることができるツールとして役立ちました。
星空ライブカメラでは、この日の午後10時前後から翌日午前1時までに、合計 150 個を超える流星が視聴者の皆さんによって記録されました。この突発出現が前日の同じ時間帯の2倍を超える出現数だった事も視聴者の計数観測から即座に明らかになり、出現規模の評価に貢献しました。
この突発出現について、流星群の予報研究に詳しい国立天文台の佐藤幹哉さんは、「ペルセウス座流星群では、これまでもダスト・トレイルによる出現数の増加が時折観測されてきましたが、今回の突発出現は全く予想外のことで、過去2000年間の母天体からの放出では説明ができません。この流星群の形成に関する新たな研究に繋がる、とても重要な観測結果だと捉えています」とコメントしています。
動画1:2021年8月13日 (ハワイ時) の突発出現で見られた数々の流星達 (クレジット:国立天文台・朝日新聞社)
すばる望遠鏡の全天カメラ
ペルセウス座流星群の始まる少し前の7月中旬、すばる望遠鏡に高感度の全天カメラが新たに導入され、試験運用が始まりました。夜間の天体観測の際の天候モニターが目的ですが、明るい流星なども写り込みます。13日の突発現象を含む、ペルセウス座流星群の様子は、この全天カメラの試験データにも、見事に捉えられていました。
動画2:すばる望遠鏡の全天カメラが捉えた流星のスライドショー (ハワイ時 8月13日午後10時~14日午前4時)。(クレジット:国立天文台)
マウナケア星空ライブカメラが夜空の一部を高感度で撮影するのに対して、全天カメラは明るい流星を全天に渡って観測するのに適しています。その意味で、両カメラは良い相補性を持っており、謎に満ちた今回の突発出現の性質の解明に大きく役立つと期待されています。
マウナケアの上空に広がる「世界一の夜空」を、世界中の皆さんと共有したいとの願いから、私たちは、この全天カメラが生成する夜空のタイムラプス動画の公開準備を進めております。楽しみにお待ちください。
動画3:すばる望遠鏡全天カメラのタイムラプス動画サンプル (ハワイ時 8月13日午後7時~14日午前5時)。(クレジット:国立天文台)
(注1) 残念ながら、この頃日本では全国的に大変な悪天候で、各地で豪雨災害が発生してしまいました。被災された方々に、心からお見舞い申し上げます。
(注2) すばる望遠鏡星空ライブカメラは、国立天文台ハワイ観測所と朝日新聞の共同プロジェクトです。報道目的で使用する場合は、「国立天文台・朝日新聞社提供」のクレジットをお願いいたします。