携帯電話などに用いる弾性波デバイスの高度化に期待
2021-05-10 東北大学 金属材料研究所,科学技術振興機構
ポイント
- 空気や物質の振動が波として伝わる音波は、物質の表面を伝わる場合は表面音波と呼ばれ、振動方向が回転していく性質があります。
- 音波の振動方向の回転を、磁石の元となる電子の自転(スピン)に移すことにより、磁石の向きを制御することに成功しました。
- 表面音波(表面弾性波)は高精度のフィルターとして携帯電話などに使われており、記録素子として広く使われる磁性との融合による、デバイスの高度化が期待できます。
音波は、空気や物質の振動が波として伝わる現象です。音波が物質の表面を伝わる場合は「表面弾性波」と呼ばれており、その振動方向が回転しながら伝わっていく性質を持っています。このような回転は、物理学的には、磁石の元となる電子の自転(スピン)と同様に「角運動量」と呼ばれる回転量で表されることが知られています。
東京大学 大学院総合文化研究科 大学院生および東北大学 特別研究生(現 理化学研究所 研究員)の佐々木 遼と東北大学 金属材料研究所の新居 陽一(JST さきがけ 研究員 兼務)、小野瀬 佳文は、表面弾性波から電子のスピンへの角運動量の移動を利用することにより、音波による磁石の向きの制御に世界で初めて成功しました。表面弾性波を用いたデバイスは、高精度なバンドパスフィルターとして携帯電話などに内蔵されており、記録素子として広く使われる磁性との融合によりデバイスの高度化が期待できます。
本研究の詳細は2021年5月10日(英国時間)に「Nature Communications」に掲載されます。
本研究は、JSPS 科研費(課題番号:16H04008、17H05176、18K13494、20K03828)、JST さきがけ(課題番号:JPMJPR19L6)、日本学術振興会 特別研究員奨励費(課題番号:18J12130)、三菱財団、野口遵研究助成の支援を受けました。
<論文タイトル>
- “Magnetization control by angular momentum transfer from surface acoustic wave to ferromagnetic spin moments”
- DOI:10.1038/s41467-021-22728-6
<お問い合わせ先>
<研究に関すること>
小野瀬 佳文(オノセ ヨシノリ)
東北大学 金属材料研究所 量子機能物性学研究部門 教授
<JST事業に関すること>
嶋林 ゆう子(シマバヤシ ユウコ)
科学技術振興機構 戦略研究推進部 グリーンイノベーショングループ
<報道担当>
東北大学 金属材料研究所 情報企画室 広報班
科学技術振興機構 広報課