史上最長のボトルブラシポリマーの合成に成功~柔軟性と低摩擦性を兼ね備えた高分子材料への応用に期待~

ad

2020-12-09 物質・材料研究機構 ,理化学研究所

NIMSは理化学研究所と共同で、史上最長のボトルブラシポリマーの合成に成功しました。

概要

  1. NIMSは理化学研究所と共同で、史上最長のボトルブラシポリマーの合成に成功しました。ボトルブラシポリマーは、1本の主鎖と複数の側鎖から構成される、エノコログサ (通称ネコジャラシ) に似た形の高分子で、今回長さに加えて化学的性質の異なるポリマーの作りわけにも成功しました。従来のボトルブラシポリマーの合成で致命的欠点であった長さや化学的性質の多様性の制約が大きく改善されたことで、柔軟性と低摩擦性を有する高分子材料などへの応用が期待されます。
  2. 高分子材料の開発では、モノマーと呼ばれるパーツを望みの長さに合成しつつ、化学的な性質も修飾することが求められます。その中で、新たな高分子材料として注目されているのがボトルブラシポリマーです。1本の主鎖と複数の側鎖からなり、側鎖の選択によって様々な化学組成を持った高分子の設計が可能となります。一方で、従来の合成法ではモノマーの反応性や微量不純物の混入などの課題があったため伸長可能な長さはナノメートルオーダーで、長くとも1μm強が限界であり、数μm長の合成法が求められていました。
  3. 今回、研究チームは、原料となるモノマーの分子設計の工夫と単結晶を用いて不純物の混入が極めて少ない重合環境をすることにより、史上最長のボトルブラシポリマーを合成することに成功しました。長さは7μmまで到達し、これまでの最長値と比べて約3.8倍の長さに相当します。さらに2種類の重合法を組み合わせることで、主鎖の長さは維持しつつ4種類の側鎖を持つボトルブラシポリマーを作り分けることにも成功しました。
  4. 今回開発したモノマーは、長さや直径サイズや化学的性質の制御された様々なボトルブラシポリマーの合成を可能にします。ボトルブラシポリマーは、表面にコーティングすることで低摩擦面を実現し、例えば機械可動部の摩擦によるエネルギー消費の削減に繋がると期待されています。今後、このボトルブラシポリマーの長さを生かして、柔軟性と低摩擦性を兼ね備えた材料の開発を目指します。
  5. 本研究は、国立研究開発法人物質・材料研究機構 機能性材料研究拠点の山内祥弘 独立研究者と理化学研究所 創発物性科学研究センターの石田康博 チームリーダーらの研究チームによって行われました。また、本研究は主に、JSPS科学研究費助成事業 基盤研究B (20H02454)、JSPS科学研究費助成事業 基盤研究B (20H02791)、JST戦略的創造研究推進事業 CREST (JPMJCR17N1)、公益財団法人 泉科学技術振興財団 (2018-J-115)、公益財団法人 池谷科学技術振興財団 (0321143-A)、公益財団法人 松籟科学技術振興財団の一環として行われました。
  6. 本研究成果は、Angewandte Chemie International Edition誌の2020年11月30日にオンライン掲載されました。また、本研究成果は、同誌のHot paperとして選出されました。

「プレスリリース中の図 : ボトルブラシポリマー」の画像

プレスリリース中の図 : ボトルブラシポリマー



掲載論文

題目 : Two-Step Divergent Synthesis of Monodisperse and Ultra-Long Bottlebrush Polymers from an Easily Purifiable ROMP Monomer
著者 : 山内祥弘 (物質・材料研究機構 機能性材料研究拠点), 堀本訓子 (理化学研究所 創発物性科学研究センター), 山田邦代 (理化学研究所 創発物性科学研究センター), 松下能孝 (物質・材料研究機構 技術開発・共用部門), 竹内正之 (物質・材料研究機構 機能性材料研究拠点), 石田康博 (理化学研究所 創発物性科学研究センター)
雑誌 : Angewandte Chemie International Edition
掲載日時 :  2020年11月30日
DOI : 10.1002/anie.202009759

0504高分子製品
ad
ad
Follow
ad
タイトルとURLをコピーしました