2020-09-17 東北大学東北メディカル・メガバンク機構,日本医療研究開発機構
発表のポイント
- 東北メディカル・メガバンク計画で構築した大規模な情報を、より多くの研究者が使えるようアクセス環境を整備しました。
- 東北大学東北メディカル・メガバンク機構(ToMMo)に設置されたスーパーコンピュータにアクセスするための、訪問型の遠隔セキュリティエリアを新たに設置しました。また、自席からアクセスできる情報を大幅に拡大しました。
- 大規模なゲノム情報を共有することで個別化医療実現に向けた研究が効率的に推進され、日本の未来型医療研究全体を底上げ、加速させるものと期待しています。
概要
我が国最大規模のゲノム情報と健康情報に対して、日本全国の研究者がより簡便に計算資源を共有しながらデータにアクセスすることで、さらに効率的な個別化医療実現に向けた研究が推進され、ゲノム研究全体の底上げを加速できるものと期待しています。
詳細
(1)訪問型遠隔セキュリティエリアの設置
ToMMoは、東京都中央区日本橋に設置された東北大学東北メディカル・メガバンク機構日本橋分室内に訪問型遠隔セキュリティエリアとして2020年8月1日に整備した日本橋共用端末室から、ToMMoスーパーコンピュータへの接続利用の本格的な運用が2020年9月から可能となりました。実施可能な操作はこれまで日本各地(21か所)に設置されてきた遠隔セキュリティエリアと同等であり下記のとおりです。
- 統合データベースdbTMM*2の利用(研究の条件に合致する試料や情報の有無、基本属性情報(性別・年齢等)、検体検査情報、ゲノム・オミックス解析情報、調査票情報の参照、統計学的な自動特徴付け)
- スーパーコンピュータを利用した解析や計算
これまでは自組織に遠隔セキュリティエリアがない場合は、ToMMoへ訪問する以外にご利用ができませんでした。
日本橋共用端末室は、すべての試料・情報分譲*3および、共同研究を目的としてToMMoスーパーコンピュータのアカウントを取得された、すべての方がご利用可能です。スーパーコンピュータのアカウントを取得するには、共同研究もしくは試料・情報分譲の契約が締結されている必要があります。
日本橋共用端末室の詳細な仕様は下記のとおりです。
日本橋共用端末室のご利用には、事前にWebフォーム(https://sc.megabank.tohoku.ac.jp/application/application_tommo#a9 )からの利用申請と端末の予約申請が必要です。
なお、日本橋共用端末室の初回ご利用時には、身分証明書による本人確認のうえ、利用登録を行います。
- 日本橋共用端末室
- 場所:東京都中央区日本橋室町3丁目2-1 日本橋室町三井タワー7F LOBAL LIFESCIENCE HUB office1
東北大学東北メディカル・メガバンク機構日本橋分室内
- 利用時間:10時~16時
- 端末台数:3台
- 利用資格:ToMMoスーパーコンピュータのアカウントがある方
本設置により、遠方からのToMMoへの訪問や自組織への遠隔セキュリティエリア設置に要する時間と費用の削減が可能となり、利便性が向上します。また、自組織への遠隔セキュリティエリア設置検討としての試用や、設置までの暫定的な利用場所とすることで、研究を止めることなく、利用の拡大と促進が可能となります。
(2)ゲノム解析情報へのアクセス方法の利便性向上(インターネット型)
より利便性を向上して各地の研究者に利活用いただくため、スーパーコンピュータに新たな区画としてUnit Gを新設し、性別、年齢のみを付随したゲノム解析情報についてインターネット上から参照可能としました。これまでゲノム解析情報については、遠隔セキュリティエリアからのみアクセス可能でしたが、本ユニットの新設によりこれらの情報をインターネット接続があれば自席から利用可能になります。
対象となるデータは約5,000人の個人ごとの遺伝型データ、約3,500人のインピュテーションパネル、およびこれらのデータに付随する性別、年齢であり、情報分譲の申請・承認の手続きを経たうえでご利用が可能となります。基本的にデータは参照のみで、解析結果である個人特定性のない統計情報に限り持ち出し可能です。なお、Unit Gを利用するためには、試料・情報分譲と同様、研究計画の審査や公示、契約の締結等の手続きが必要となります。
今後の展望
またUnit Gにより、個人ごとのバリアントデータが利用可能となるため、今までは遠隔セキュリティエリアでしかできなかった任意のSNPアレイのインピュテーションやハプロタイプ頻度解析が自席から可能になります。
今回の利便性とアクセスの向上で、より多くの研究者が東北メディカル・メガバンク計画由来のデータシェアおよび、計算資源を共有することで効率的な個別化医療実現に向けた研究が推進され、日本のゲノム研究全体を底上げし、加速させるものと期待しています。
参考
東北メディカル・メガバンク計画について
東北メディカル・メガバンク計画は、東日本大震災からの復興と、個別化予防・医療の実現を目指しています。ToMMoと岩手医科大学いわて東北メディカル・メガバンク機構(IMM)を実施機関として、東日本大震災被災地の医療の創造的復興及び被災者の健康増進に役立てるために、平成25年より合計15万人規模の地域住民コホート調査および三世代コホート調査等を実施して、試料・情報を収集したバイオバンクを整備しています。本計画については、平成27年度より、日本医療研究開発機構(AMED)が研究支援担当機関の役割を果たしています。
なお、本発表の設備・機能の整備は、東北メディカル・メガバンク計画及びゲノム医療実現推進プラットフォーム事業 研究開発課題「AMEDが行うゲノム医療研究支援サービスを支える研究開発基盤の整備」の支援を受けて行われています。
用語説明
- *1.遠隔セキュリティエリア
- ToMMoに設置されたスーパーコンピュータの分譲・共同利用区画へ他の研究機関からもアクセスできるように整えた施設。
- *2.統合データベースdbTMM
- 2016年4月に発表した、東北メディカル・メガバンク計画で得られた各種の情報を統合したデータベース。膨大なデータから高速で検索するほか、集団を層別化して自動的に統計学的な特徴を付ける等の機能を持つ。
- *3.試料・情報分譲
- 長期健康調査を通じて収集した生体試料(尿や血漿など)とアンケート、解析結果などの情報を、多くの研究者と共有できるようにするための取り組み。
お問い合わせ先
東北大学東北メディカル・メガバンク機構 ゲノムプラットフォーム連携センター
センター長 木下賢吾(きのしたけんご)
報道担当
東北大学東北メディカル・メガバンク機構
長神風二(ながみふうじ)
AMED事業に関すること
日本医療研究開発機構(AMED) ゲノム・データ基盤事業部 ゲノム医療基盤研究開発課