2020-05-22 京都大学
鈴木聡 福井謙一記念研究センター特定研究員、小西玄一 東京工業大学准教授、佐々木俊輔 ナント大学博士研究員、唐本忠 香港科学技術大学教授らの研究グループは、現象論的に定義されてきた凝集誘起発光(AIE)について1分子で働く理想的な分子系を発見しました。光物理過程の実験・理論的解析によりAIE現象の本質を明らかにし、新分子探索法や機能開発の指針を提案しました。
本研究グループは、2015年に大きく捻じれたジアルキルアミノ基を持つ芳香族炭化水素類が1分子でAIE挙動を示す理想的な分子群であることを発見し、実験と理論の両面から発光・消光メカニズムを解明、AIE現象の本質は溶液中での失活経路にあることを明らかにしていました。
AIE色素は希薄溶液状態では発光せず、固体・凝集状態で強発光する蛍光色素で、一般的な蛍光色素と反対の挙動を示します。この性質を利用し、固体発光材料や生体分子観察などへの応用が進んでいます。しかしAIEは現象につけられた名前で、様々な発光メカニズムや分子集合体の効果が混在しており、その原理を統一的に理解し新しい分子の設計や機能の開発を行うための基礎研究が必ずしも十分であるとは言えませんでした。
今回の研究成果はAIE色素の理解を深めるだけでなく、新しいAIE色素の開発や性能向上への応用が期待されます。
本研究成果は、2020年5月18日に、国際学術誌「Angewandte Chemie」のオンライン版に掲載されました。
図:本研究グループが発見したAIE色素
書誌情報
【DOI】 https://doi.org/10.1002/anie.202000940
【KURENAIアクセスURL】 http://hdl.handle.net/2433/250950
Satoshi Suzuki, Shunsuke Sasaki, Amir Sharidan Sairi, Riki Iwai, Ben Zhong Tang, Gen‐ichi Konishi (2020). Principles of Aggregation‐Induced Emission: Design of Deactivation Pathways for Advanced AIEgens and Applications. Angewandte Chemie International Edition.