2019/10/1 アメリカ合衆国カリフォルニア大学リバーサイド校 (UCR)
・ UCR が、湿度に反応して色を変化させる、銀ナノ粒子(AgNPs)を利用したプラズモニック・フィルムを開発。
・ ナノ粒子の呈色の変化はこれまで液体のみで成功しており、このことが実際のアプリケーションを制限していた。
・ 従来困難とされてきた固体フィルムでのプラズモニックな呈色の高速・可逆的な調整の実現により、色変換アプリケーションの可能性が期待できる。
・ 金や銀のプラズモニック金属ナノ粒子は、光を効率的に吸収して特定の波長で散乱させる特殊な光学的特性を有し、各粒子間の距離を変えるとそれらの呈色が変わる。今回のフィルム開発では、この特性を活用した。
・ ガラス基板をホウ酸ナトリウムでコーティングし、AgNPs をスプレーしてフィルムを形成。AgNPs の各粒子表面には、各粒子間を隔てるキャッピング・リガンドがあり、これによるバッファーがナノ粒子の凝集を防止している。
・ ホウ酸ナトリウムは、湿度によりホウ酸に変化し水酸化イオンを放出。これらのイオンがリガンドの化学基の脱プロトン化を促し、AgNPs のプロトンを奪って負電荷を与える。負電荷に帯電したナノ粒子が斥力により互いに反発して粒子間距離が変わるため、異なる色を反射。ピンク色のナノ粒子が黄色に変わる。
・ 湿度を取り除くと、ホウ酸がホウ酸ナトリウムに戻って水酸化イオンを捕獲し、リガンドの化学基のプロトン化が開始。これにより、リガンドの表面電荷の還元が起こり、AgNPs 間の反発力が弱まってナノ粒子が凝集。粒子間の距離が狭まることで、AgNP フィルムの色が黄色からピンク色に変わるという、完全な可逆性を示す。
・ このようなメカニズムにより、AgNP フィルムのプラズモニックな呈色変化が起こる。80%の相対湿度の場合、AgNP フィルムはピンク色から赤色、オレンジ色、最後に黄色に変化したことを確認。同フィルムのプラズモニックな呈色変化は、1,000 サイクル超の可逆性とリピータビリティーを示した。・ 100%にも及ぶ人間の指周辺の相対湿度では、指先の接近の度合いに反応して AgNP フィルムの色が変化することを発見。様々な高解像度パターンをリソグラフィーにより AgNP フィルムに効果的に暗号化し、呼気や指周りの湿度によって復元する、高速・タッチレスな情報暗号化や製品認証での利用が可能。
・ また、セキュア通信やリアルタイム熱量測定、健康モニタリング等のアプリケーションも考えられる。・ 本研究は、米国立科学財団(NSF)のグラントで実施した。
URL: https://news.ucr.edu/articles/2019/10/01/product-authentication-your-fingertips
(関連情報)
Angewandte Chemie International Edition 掲載論文(アブストラクトのみ:全文は有料)
Dynamic Color‐Switching of Plasmonic Nanoparticle Films
URL: https://onlinelibrary.wiley.com/doi/abs/10.1002/anie.201910116
<NEDO海外技術情報より>
Abstract
The fast and reversible switching of plasmonic color holds great promise for many applications, while its realization has been mainly limited to solution phases, achieving solid‐state plasmonic color‐switching has remained a significant challenge owing to the lack of strategies in dynamically controlling the nanoparticle separation and their plasmonic coupling. Herein, we report a novel strategy to fabricate plasmonic color‐switchable silver nanoparticle (AgNP) films. Using poly(acrylic acid) (PAA) as the capping ligand and sodium borate as the salt, the borate hydrolyzes rapidly in response to moisture and produces OH− ions, which subsequently deprotonate the PAA on AgNPs, change the surface charge, and enable reversible tuning of the plasmonic coupling among adjacent AgNPs to exhibit plasmonic color‐switching. Such plasmonic films can be printed as high‐resolution invisible patterns, which can be readily revealed with high contrast by exposure to trace amounts of water vapor.