将来を見据えた先進的な生産ライン・加工システムおよび関連要素技術の研究開発
2019-04-23 産業技術総合研究所
ポイント
- サイバー・フィジカル・システム(CPS)による加工機の自律化技術の研究開発
- 生産ラインの自律的最適化を可能とするサイバー・フィジカル・プロダクション・システム(CPPS)の研究開発
- 関連要素技術の融合により、次世代スマートファクトリーを実現
概要
国立研究開発法人 産業技術総合研究所【理事長 中鉢 良治】(以下「産総研」という)は、株式会社 ジェイテクト【代表取締役 安形 哲夫】(以下「ジェイテクト」という)は共同で、2019年6月に、産総研 つくばセンター内に「ジェイテクト-産総研 スマートファクトリー連携研究ラボ」を設立いたします。
加速的・集中的に研究開発を実現するために、2016年4月に制定された産総研 連携研究ラボ制度を活用したもので、工作機械メーカーとして初の連携研究ラボとなります。
図1 スマートファクトリー(イメージ)
設立の背景
近年、工場を取り巻く環境は、地球環境への配慮、少子高齢化に伴う労働人口の減少などが懸念されています。このような課題に対して、IoE(Internet of Everything)やAIなどの革新技術を利用した工場機器の知能化・自律化やビッグデータを高度に活用した効率的なスマートファクトリーの実現が求められています。具体的にはマシンの自律化による高度な自動化ラインを実現する「止まらない工場」や不良品をつくらない、素材をムダにしない「ゼロロス工場」などが挙げられます。
そのような中、今回ステアリング・工作機械・軸受・駆動部品の製造会社として多くの工場をグローバルに展開するジェイテクトと、製造産業に関する技術を長く培ってきた産総研が連携し、先進的な生産ライン・加工システムおよび関連要素技術の研究開発による「止まらない工場」や要素技術開発も含めた「次世代スマートファクトリー」の実現を目指すことにいたしました。ジェイテクトの保有する生産技術ノウハウやユーザーへのIoE技術の提供実績に基づく豊富なデータ、ノウハウに、産総研の高度なセンシング/データ・アナリティクス、モデルベース設計に関わる製造技術を融合することにより、知能化・自律化や高度なシステムインテグレーションの技術開発を加速し、先進的なスマートファクトリー・ソリューションの早期実現を図ります。
連携研究ラボの概要
スマートファクトリーにつながる工作機械の研究開発、それらの周辺技術開発および実用化に取り組みます(図2)。今後、産総研とジェイテクトでは、「加工機・生産ラインのスマート化(知能化、自律化)およびその要素技術の研究開発」を実施し、3~5年後の実用化を目指します。
① CPSによる加工状態の見える化と加工条件の自律最適化を実現する工作機械の開発
② CPSを備えた各工程をつなぎ、問題の可視化、分析、フィードバックを繰り返すことで不良と異常を削減するCPPSの構築
図2 加工機のCPSとCPPS生産ライン(イメージ)
- 名称:ジェイテクト-産総研 スマートファクトリー連携研究ラボ
- 場所:産総研 つくばセンター東事業所(茨城県つくば市)
- 研究体制:連携研究ラボ長 岩井英樹(ジェイテクト 研究開発本部 加工技術研究部)
連携研究副ラボ長 芦田極(産総研 製造技術研究部門)
用語の説明
- ◆サイバー・フィジカル・システム(CPS)
- もののインターネット化(IoT)により、実空間(フィジカル空間)上にあるものの情報が、コンピューター上(サイバー空間)に蓄積できるようになる。蓄積された情報をサイバー空間上で処理し、その結果をフィジカル空間上の問題解決や価値創出に利用しようとする概念およびその実装。
- ◆サイバー・フィジカル・プロダクション・システム(CPPS)
- CPSによる問題解決や価値創出を、工場での製造工程に適用する仕組み。
- ◆連携研究ラボ
- 企業のニーズに特化した研究開発を実施するため、その企業を「パートナー企業」と呼び、パートナー企業名を冠した連携研究ラボ(通称、冠ラボ)を産総研内に設置している。パートナー企業は研究者・研究資金などを、産総研は研究者・研究設備・知的財産などの研究資源を提供し、パートナー企業からの出向研究者と産総研からの研究者が共同で研究開発に取り組んでいる。
- ◆IoE (Internet of Everything)
- IoT を進化させた発想が IoE で、世の中のあらゆるものすべてをインターネットに接続するという概念。「人」「もの」「データ」「プロセス」の4本柱から成り立っている。