文字情報基盤整備事業」で推進していた漢字6万文字の国際規格化が完了 行政機関では今後、コンピュータで人名等の正確な表記を行う際にも外字登録が不要に
2017-12-25 独立行政法人情報処理推進機構
IPA(独立行政法人情報処理推進機構、理事長:富田 達夫)国際標準推進センターは、2010年9月から推進していた「文字情報基盤整備事業」において、漢字6万文字の国際規格化が完了したことを発表します。これは、ISO(国際標準化機構)より文字コード国際規格の第5版の発行を受けてのことです。
IPAでは、内閣官房IT総合戦略室、経済産業省と共に、「文字情報基盤整備事業」を2010年9月より推進してきました。この事業は、行政の実務で求められる人名や地名等の正確な表記をコンピュータで可能にするため、約6万文字の漢字について、文字フォントの整備や文字コードの国際規格化等を行ってきたものです。なお、国際規格化にあたっては、一般社団法人 情報処理学会 情報規格調査会SC2専門委員会と連携し、順次進めてきました。
12月22日(日本時間)、文字コード国際規格書の最新版である、ISO/IEC 10646 (Universal Coded Character Set) 第5版がISO(国際標準化機構)より発行されたことが判りました。これにより、整備してきた約6万文字の漢字全ての国際規格化が完了したことになります。その結果、これら約6万文字全てをコンピュータで使用する際、統一的な文字コードで扱うことができるようになりました。
例えばこれまでは、ある自治体が人名の漢字をコンピュータで正確に表記させる場合、外字作成の必要があり、都度文字コードを登録していました。自治体毎に登録された外字コードに一貫性が無いため、自治体やシステムを超えての電子文書の共有は困難でした(*1)。国際規格化の完了は、こうした行政機関の相互運用(利用)の難しさ、外字作成のコストの解消になります。
今後は、同規格を参照することで、政府調達等が一層開かれたものとなり、電子行政用システムの構築や運用の効率、利便性が大きく向上することが期待されます。
図:人名等に用いられる漢字の例
また、IPAでは現在、戸籍等の業務で必要となる「変体仮名(*2)」の国際規格化も進めており、前述の国際規格書の追補版として2018年3月末までに発行される見込みです。これにより、漢字、変体仮名全ての国際規格化が完了することになります。
IPAでは、今後、これらの新しい国際規格の発行に合わせ、文字フォント(IPAmj明朝フォント)、MJ文字情報一覧表等のバージョンアップを順次実施します。
なお、同規格の最新版は、ISOのウェブサイト(*3)より無料で入手することができます。コンピュータで文字を表示させる仕組みである「文字コード」とその規格に関しては別紙に詳細を記載しています。併せてご覧下さい。
脚注
(*1) 自治体はコンピュータで住民票や戸籍の人名の漢字を正確に表記させる必要があります。しかし、これまで規格化された漢字はわずか1万文字(日本工業規格 JIS X 0213 JIS(第1水準~第4水準)で収録)で、それ以外の漢字は「外字」作成の必要がありました。また登録された外字は自治体毎にコードが異なるため相互利用ができず(あるコードを受け取った時、送った側が想定した文字と別の文字が表示されてしまう)、行政コストの増大が指摘されていました。
(*2) 明治時代に平仮名が現在用いられている1音1字に固定されるまで広く使われていた仮名文字。1948年の戸籍法施行規則制定以前に登録された人名に用いられている場合がある。
(*3) http://standards.iso.org/ittf/PubliclyAvailableStandards/
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