“分子のカタチ”化学結合の可視化に成功 ~世界最高峰の放射光X線実験と超精密解析の真骨頂~

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2024-07-24 名古屋大学

“分子のカタチ”化学結合の可視化に成功 ~世界最高峰の放射光X線実験と超精密解析の真骨頂~

名古屋大学大学院工学研究科の原 武史 博士後期課程学生、澤 博 教授らの研究グループは、愛媛大学大学院理工学研究科の内藤 俊雄 教授、高輝度光科学研究センターの中村 唯我 研究員、および北海道大学との共同研究により、大型放射光施設SPring-8注1)におけるX線回折・散乱実験と第一原理計算によって、これまで誰も見たことがなかった有機分子の価電子分布を観測しました。この結果、化学結合という化学の基本問題を可視化しました。
原子は、原子核とその周りの電子雲で構成されますが、量子力学的には離散的な軌道状態をとります。分子は構成原子の電子軌道間の相互作用によって結合し安定化します。有機合成手法の発展によって多様な機能性分子が数多く開発され、基本となる化学結合も多様性を持つことが近年注目されています。本研究では、よく知られた分子中の化学結合の様子を実験的に直接観測し、さらに量子化学計算との比較によってその詳細を解明しました。この手法は今後、化学結合の本質を理解し、機能性材料の設計や反応メカニズムの解明に貢献することが期待されます。
本研究成果は、2024年7月17日付 アメリカ化学会の学術誌「Journal of the American Chemical Society」電子版に掲載されました。

【ポイント】

・放射光X線回折実験と価電子密度分布を得られる新しい解析法により、化学結合の電子状態の直接観測に成功。
・教科書的な種々の結合により構成される分子軌道の詳細も解明。
・分子を構成する化学結合の量子力学的な電子の本来の姿を解明。

◆詳細(プレスリリース本文)はこちら

【用語説明】

注1)大型放射光施設SPring-8:
兵庫県の播磨科学公園都市にある、世界最高性能の放射光を生み出す理化学研究所の施設で、その利用者支援などは高輝度光科学研究センター(JASRI)が行っている。放射光とは、電子を光とほぼ等しい速度まで加速し、電磁石によって進行方向を曲げたときに発生する、細く強力な電磁波のこと。SPring-8(スプリングエイト)では、この放射光を用いて、ナノテクノロジー、バイオテクノロジーや産業利用まで幅広い研究がおこなわれている。今回の研究には、ビームラインBL02B1の単結晶X線回折計に、半導体検出器を搭載して国際的に見ても随一の装置を用いて測定を行った。

【論文情報】

雑誌名:Journal of the American Chemical Society
論文タイトル:Unveiling the Nature of Chemical Bonds in Real-Space
(実空間における化学結合の本質を明らかにする)
著者:原 武史(名古屋大学)、長谷部 匡敏(北海道大学)、常田 貴夫(北海道大学)、内藤 俊雄(愛媛大学)、中村 唯我(高輝度光科学研究センター)、片山 尚幸(名古屋大学)、武次 徹也(北海道大学)、澤 博(名古屋大学)
DOI: 10.1021/jacs.4c05673
URL: https://pubs.acs.org/doi/full/10.1021/jacs.4c05673

【研究代表者】

大学院工学研究科 澤 博 教授、原 武史 博士後期課程3年生

1700応用理学一般
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