2023-11-14 京都大学
磯﨑勝弘 化学研究所准教授、中村正治 同教授、井芹建太 工学研究科博士課程学生らの研究グループは、金ナノクラスターの構造要素である金原子のみからなる超原子コア、およびその表面を保護する金原子とチオラート配位子からなるステープルと呼ばれる部位が、それぞれ異なる触媒活性中心として作用し、単一の金ナノクラスターが2種類の触媒作用を同時に示すことを発見しました。この金ナノクラスターの二重触媒作用を利用することで、第三級脂肪族アミンと末端アルキンの脱水素型クロスカップリング反応が効率良く進行することを見出し、医薬中間体として有用なプロパルギルアミン類縁体を得ることに成功しました。さらに、アルキンが配位子として導入された混合配位子型の金ナノクラスターを合成し、密度半関数計算と併せて反応性を検証することで、ステープル部位において配位子交換の起きた金ナノクラスターが触媒活性種として2種類の触媒反応を促進していることを明らかにしました。
本研究により、金属ナノクラスターが超原子コアと表面を保護する有機金属部位の触媒作用を同時に示す多機能触媒として作用することが明らかになりました。今後、金属ナノクラスターの多機能性を活用することで、複数の分子変換を一挙に行うような多段階触媒反応への応用が期待されます。
本研究成果は、2023年11月7日に、国際学術誌「Angewandte Chemie International Edition」にオンライン掲載されました。
本研究の概要図:金ナノクラスターの二重触媒作用によるアミンとアルキンの脱水素型クロスカップリング
研究者のコメント
「本研究は、金ナノクラスターの2つの異なる部位が同時に触媒として作用する、二重触媒作用の初めての報告例となります。当然未開拓な触媒特性であるため、今後、金に限らず、様々な金属で研究が進み実利用される触媒として発展することを期待しています。個人としても、課題が多く残されていると感じているので、今後更に金属ナノクラスターの物性・反応性を明らかにしていきたいと考えています。」(井芹健太)
詳しい研究内容について
金ナノクラスターの二重触媒特性の発見―超原子コアと分子修飾ステープルの協働効果―
研究者情報
研究者名:磯﨑 勝弘
研究者名:中村 正治
書誌情報
【DOI】
https://doi.org/10.1002/anie.202312135
【書誌情報】
Katsuhiro isozaki, Kenta Iseri, Ryohei Saito, Kyosuke Ueda, Masaharu Nakamura (2023). Dual Catalysis of Gold Nanoclusters: Photocatalytic Cross-Dehydrogenative Coupling by Cooperation of Superatomic Core and Molecularly Modified Staples. Angewandte Chemie International Edition.