強相関電子系における非線形光学応答に新奇な法則を発見

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強い光と強い電子相関をもつ物質の相互作用の解明へ

2022-03-28 京都大学

内田健人 理学研究科特定助教、Giordano Mattoni 同特定研究員、米澤進吾 同准教授、前野悦輝 同教授、田中耕一郎 同教授らの研究グループは、中村文彦 久留米工業大学教授との共同研究によって、強相関物質の一種であるモット絶縁体Ca2RuO4において、強い赤外レーザー光を入射すると可視光に変換される高次高調波発生をはじめて観測し、その信号強度が驚くほど単純な法則に従うことを発見しました。

近年、超短パルス光の発生技術の発展に伴い強い光を物質にあてることが可能になっています。これにより、目に見えない赤外レーザー光を物質に当てたときに放出される光の色が可視域に変わる高次高調波発生などの現象が生じます。高次高調波発生は半導体などの良く知られた材料ではその発生機構がおおよそ分かっています。一方、電子同士が強く相互作用して複雑な性質を示す強相関物質では高次高調波がほとんど観測されておらず、またどのような発生機構なのか分かっていませんでした。
本研究グループは、強相関電子系の1種である典型的なモット絶縁体Ca2RuO4において、高次高調波の観測に初めて成功しました。驚くことに高調波信号は材料を冷やすと急激に増加しました。この効果はこれまでどの材料でも観測されず、また理論予測もなかったものです。さらに研究グループは、この効果が電子相関により開く絶縁体ギャップエネルギーと高調波の光子エネルギーに対する驚くほど単純な法則(図中右上)に従うことを明らかにしました。これは複雑な物理現象が単純で美しい法則を示すことの一例と言え、本研究グループは電子相関に由来した新しい高調波発生機構がこの法則に関与していると考えています。

本成果は、強相関物質における非平衡ダイナミクスを解明する助けとなるでしょう。また、私たちの生活にも身近なレーザーポインターや光変調器などに使われる非線形光学材料にも新たな設計指針を与える可能性を示唆しています。

本研究成果は、2022年3月23日に、国際学術誌「Physical Review Letters」にオンライン掲載されました。

強相関電子系における非線形光学応答に新奇な法則を発見
図:本研究のイメージ。温度Tを変えると高調波信号IHHが大きく変わる。その背後にはギャップエネルギーΔと高調波の光子エネルギーhνHHに関する法則(図右上の式)がある。

詳しい研究内容≫

研究者情報
研究者名:内田健人
研究者名:Mattoni Giordano
研究者名:米澤進吾
研究者名:前野悦輝
研究者名:田中耕一郎

1701物理及び化学
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