2022-03-17 国立天文台
しぶんぎ座流星群の明るい流星 。2022年1月4日午前3時8分。(クレジット:長山省吾) オリジナルサイズ(15.8MB)
活発な出現が期待された2022年のしぶんぎ座流星群
三大流星群の一つとされる「しぶんぎ座流星群」は、年が明けて間もない1月4日に2022年の極大を迎えました。過去の出現状況から予想された極大時刻は1月4日の午前5時から6時頃で、これは日本で観測するにはとても良い時間帯でした。また前日の3日が新月で、月明かりの影響を受けることも全くありません。空の暗い場所ならば、1時間に50個以上もの多くの流星を観察できると見込まれていました。
このような状況は、8年前の2014年のケースととてもよく似ています。2014年のしぶんぎ座流星群は、比較的天候が良かったこともあり、条件の良い空では1時間あたり50個以上、多い人では1時間に100個を超えるような活発な出現が捉えられていました。
またヨーロッパでは、極大時刻の関係で2019年に観測条件が良くなっていて、この時はZHRという値で100から120に達していました。2014年の日本でのZHRは、およそ130から150という値でしたから、それには及ばないものの、1時間あたり50個を超えるような出現だったと思われます。
これらのことから考えても、2022年はしぶんぎ座流星群の活発な出現を期待できる状況と言えました。
明るい流星は出現したが、予想外の少なさに落胆の声
明るい流星が目立った時間帯のしぶんぎ座流星群。2022年1月4日午前4時24分から5時30分に出現した流星部分を比較明合成。(クレジット:佐藤幹哉) オリジナルサイズ(9.5MB)
活発な出現が期待されていた極大日、1月4日の明け方には多くの人がしぶんぎ座流星群に注目しました。ところが、極大が予想されていた時間帯になっても、流星数は予想ほど増加しません。国立天文台職員の観測では、午前5時から5時30分の30分間に12個(1時間あたり換算で24個)や、別の者でも5時17分から5時47分の30分間に8個(同16個)などで、捉えられる流星数は予想数の半分にも満たない様子でした。5時前後には確かに明るい流星が増加した様子はあったものの、全体としては低調な活動のまま夜明けを迎えることになりました。暗い空でこのような状況ですから、郊外や市街地では見えた流星数はとても少なかったものと考えられます。翌日には、一般の方から「思ったより少なかった」「見られなかった」などの声が国立天文台の質問電話に寄せられました。
しぶんぎ座流星群の基礎情報
しぶんぎ座流星群は、8月の「ペルセウス座流星群」、12月の「ふたご座流星群」と並んで「三大流星群」として、多くの流星が流れることで知られています。古くは19世紀に出現記録があり、20世紀に入って数年に一度、多くの出現が観測されるようになりました。最も活発な時には、他の二群よりも1時間あたりの流星数が多くなる程でした。
一方で、三大流星群の中では極大期の継続時間が短いことも知られています。ペルセウス座流星群やふたご座流星群では、活動度が極大時(最大時)の半分以上となる期間(半値幅)が1日程度継続するのですが、しぶんぎ座流星群では、4分の1日ほど(約6時間)しか続かないのです。
極大となる時の地球位置(=流星となる塵(ちり、流星物質)の濃い流れに地球が遭遇する位置)はおよそ決まっていますが、地球が1公転するのは365日と約6時間かかりますから、極大時刻は1年に約6時間ずつ後にずれていきます(※うるう年の後には、約18時間前にずれます)。一方、一夜の中で放射点が高くなり観測しやすい時間帯は、午前2時から6時頃のわずか4時間程度(東京近辺の場合)です。この時間帯に、短い極大期が入るのは、4年に1度程度しかないことになります。また月明かりの影響を含めると、好条件で観測できるのはおよそ8年に1度とさらに少ない頻度です。活動度の全体像が把握しづらい流星群と言えるのです。
後編では、太陽系内での塵の軌道や分布を解説しつつ、しぶんぎ座流星群が低調だった理由を考察します。
文:佐藤 幹哉(国立天文台 天文情報センター)