高出力、高繰り返しのレーザー装置をテーブルトップサイズで実現

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レーザー加工の生産性向上や新たな応用に期待

2018/10/22  浜松ホトニクス株式会社.科学技術振興機構(JST),内閣府政策統括官(科学技術・イノベーション担当)

浜松ホトニクス株式会社(静岡県浜松市、代表取締役社長:晝馬 明、以下「浜松ホトニクス(株)」)は、従来の励起用半導体レーザーの出力を3倍に高めた、テーブルトップサイズと小型ながら1ジュール(J)と高出力かつ300ヘルツ(Hz)と高繰り返しでパルスレーザーを照射できるパワーレーザー装置を開発しました。これは、通常レーザー装置の出力は装置のサイズ・繰り返し周波数と相反関係にありますが、この課題を解決し小型ながら高出力、高繰り返しのレーザー装置を実現したものです。本開発品により、細かな汚れを除去するレーザークリーニングなど従来加工の生産効率を向上させるとともに、金属材料を変形加工するレーザーフォーミング、金属部品の使用寿命を延ばすレーザーピーニングなど新たな応用が期待されます。

本開発品の一部は、内閣府 総合科学技術・イノベーション会議が主導する革新的研究開発推進プログラム(ImPACT)の佐野 雄二 プログラム・マネージャーの研究開発プログラム「ユビキタス・パワーレーザーによる安全・安心・長寿社会の実現」の一環として、浜松ホトニクス(株)の川嶋 利幸 中央研究所 産業開発研究センター 副センター長らが開発したもので、今後、製品化に向けた開発を進めていきます。また、本開発品は、2018年11月1日(木)から3日間、アクトシティ浜松(浜松市中区)で開催される、浜松ホトニクス総合展示会「フォトンフェア2018」に出展されます。

本成果は、以下のプログラム・研究開発課題によって得られました。

内閣府 革新的研究開発推進プログラム(ImPACT)

プログラム・マネージャー:佐野 雄二

研究開発プログラム:ユビキタス・パワーレーザーによる安全・安心・長寿社会の実現

研究開発課題:高出力小型パワーレーザーの開発

研究開発責任者:川嶋 利幸(浜松ホトニクス株式会社 中央研究所 産業開発研究センター 副センター長)

研究期間:2015年度~2018年度

本研究開発課題では、テーブルトップサイズと小型ながら、高出力、高繰り返しかつ安定性の高いパルス出力のパワーレーザーの実現を目指して開発に取り組んでいます。

<佐野 雄二 プログラム・マネージャーのコメント>

ImPACTプログラム「ユビキタス・パワーレーザーによる安全・安心・長寿社会の実現」では、最先端科学の探究や産業において不可欠な高出力のパルスレーザー装置の小型化・簡素化・高性能化を進めるとともに、関連する基盤技術と応用技術の開発を行っています。これにより使用場所を選ばず、いつでも使える安定性の高いレーザー装置を安価で提供し、産業の革新を起こすことを目指しています。

今回、浜松ホトニクス(株)の開発グループは、自らの持つ高度な半導体レーザーを高出力パルスレーザー装置の励起用光源として活用し、レーザー装置を最適化することにより、これまでにない小型・高出力・高繰り返しのレーザー装置を低価格で実現しました。コストの制限や生産効率の観点からこれまでレーザー装置の導入を断念していた分野においても、利用が広がるものと期待しています。

<パワーレーザー装置について>

パワーレーザー装置(図1)は、主に発振器と増幅器で構成されています。発振器は、励起用半導体レーザー、レーザー媒質、全反射鏡、出力鏡、光スイッチで構成されており、増幅器は、励起用半導体レーザーとレーザー媒質で構成されています。発振器から出力されたレーザーは、増幅器を通過する際、エネルギーが高い状態(励起状態)の3つのレーザー媒質からエネルギーを受け取り高出力化され出力されます。

<開発品の概要>

本開発品は、新たに開発した励起用半導体レーザーを搭載した、テーブルトップサイズと小型ながら1ジュールと高出力かつ300ヘルツと高繰り返しでパルスレーザーを照射できるパワーレーザー装置です(図2、図3、表1)。

浜松ホトニクス(株)は、300ヘルツの繰り返し周波数では出力100ワットの励起用半導体レーザーを製造、販売してきました。今回、独自の結晶成長技術とコーティング技術により、従来の励起用半導体レーザーの出力を世界最高クラスの300ワットまで高めるとともに、レーザー媒質の長さや断面積を工夫し冷却効率のよい設計を増幅器に採用したことで、熱によるレーザー媒質の損傷や破壊という課題をクリアし、従来の増幅器よりも3倍の出力を取り出すことに成功しました。また、半導体レーザーを励起用光源に用いることで、ランプを用いる市販のパルスレーザー装置と比べ電気から光へのエネルギー変換効率を約10倍、励起用光源の寿命を約100倍としました。さらに、部品点数を抑えることで安定した出力と装置のコンパクト化、低コスト化に成功しました。レーザー装置の出力は、装置のサイズ、繰り返し周波数と相反関係にありますが、本開発品は小型ながら高出力、高繰り返しを実現しています。

本開発品により、部材に付着した細かな汚れを除去するレーザークリーニングなど従来加工の生産効率を高めることができます。また、航空機の金属材料などを金型を使用せずに変形加工できるレーザーフォーミングや金属部品の使用寿命を延ばすレーザーピーニングなど、産業分野におけるパルスレーザーの新たな応用が期待できます。

今後、さらなる小型化やメンテナンス性の向上など、製品化に向けた開発を進めていきます。

<開発の背景>

レーザーは、金属材料の穴開けや溶接、切断など幅広い加工用途で用いられており、生産効率を向上させるため、ファイバーレーザーやCOレーザーなどさまざまなレーザーにおいて高出力化が進められています。レーザーは、一定の強さのレーザー光を連続して出力するCW(Continuous Wave)レーザーと、レーザー光を短い時間間隔で繰り返し出力するパルスレーザーに分けられ、レーザー加工の分野ではCWレーザーが主流となっています。一方、パルスレーザーは、CWレーザーとは異なる新たなレーザー加工への応用に向けた開発が行われています。しかし、半導体レーザーを励起用光源に用いる高出力、高繰り返しのパルスレーザー装置は、半導体レーザーが高価なことから実用化が難しく、市販のジュール級パルスレーザー装置の励起用光源にはランプが用いられているためレーザー内部に強い熱影響が発生し、繰り返し周波数は10ヘルツ程度に限られていました。そのような中、より生産効率を高めるとともに用途を拡大するため、小型ながら高出力、高繰り返しでパルスレーザーを照射できるパワーレーザー装置への要求が高まっていました。

<参考図>

図1 パワーレーザー装置の仕組み

図1 パワーレーザー装置の仕組み

図2 パワーレーザー装置の構成

図2 パワーレーザー装置の構成

図3 パワーレーザー装置外観

図3 パワーレーザー装置外観
表1 主な仕様
項目 パワーレーザー装置 単位
パルスエネルギー ジュール/パルス
繰り返し周波数 300 Hz
パルス幅(FWHM) 30~40 ns
波長 1.064 μm
占有サイズ(W×L×H) 1.2×2.4×1.45
<お問い合わせ先>
<研究に関すること>

川嶋 利幸(カワシマ トシユキ)
浜松ホトニクス株式会社 中央研究所 産業開発研究センター

<ImPACTの事業に関すること>

内閣府 革新的研究開発推進プログラム担当室

<ImPACTプログラム内容およびプログラム・マネージャーに関すること>

科学技術振興機構 革新的研究開発推進室

<報道担当>

浜松ホトニクス株式会社 広報室 野末 迪隆

科学技術振興機構 広報課

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