2025-11-05 Tii技術情報研究所

- 各技術の概要とリンク先
- 1:ペロブスカイト太陽電池のホール輸送層改善
- 2:電力密度を向上するAI設計SiCパワーモジュール
- 3:エネルギー最小点で動作する並列演算ニューラルネットワーク・アクセラレータ技術
- 4:三次元マイクロ流路によるAI半導体の高効率水冷技術
- 5:CMOSトランジスタでニューロモーフィック動作を実現(NUS)
- 6:AIによる半導体製造プロセス最適化プラットフォーム「メタファクトリー」
- 7:高電圧・高電流対応の自動化半導体試験プラットフォーム「ACCEPT」
- 8:半導体産業の成長に対応する新しいPFAS除去技術
- 9:Ag₈GeS₆量子ドットによる近赤外発光・低毒性半導体の開発
- 10:生体内で強い発光と低毒性を両立する量子ドットを開発
- トレンド分析:効果・課題・今後の方向性
- 技術テーマ別まとめ
- まとめ
各技術の概要とリンク先
1:ペロブスカイト太陽電池のホール輸送層改善
概要:中国科学院・長春応用化学研究所の研究チームが、自ら組織化する“二重ラジカル自己組織化分子材料”を開発し、ペロブスカイト太陽電池(PSC)の正孔(ホール)輸送層を改善。従来の有機自己組織化分子の限界を超え、キャリア輸送速度が2倍以上、長時間稼働後の劣化もほとんど見られないという成果。変換効率も26.3%、ミニモジュールで23.6%、ペロブスカイト‑シリコンタンデムで34.2%を達成。 
2:電力密度を向上するAI設計SiCパワーモジュール
小面積チップの分散配置設計とAIによる最適化設計により、放熱性を向上。結果として、冷却システムのサイズを最大61%縮小可能。寄生抵抗・スイッチング損失もそれぞれ21%、19%削減。

3:エネルギー最小点で動作する並列演算ニューラルネットワーク・アクセラレータ技術

4:三次元マイクロ流路によるAI半導体の高効率水冷技術

5:CMOSトランジスタでニューロモーフィック動作を実現(NUS)

6:AIによる半導体製造プロセス最適化プラットフォーム「メタファクトリー」

7:高電圧・高電流対応の自動化半導体試験プラットフォーム「ACCEPT」

8:半導体産業の成長に対応する新しいPFAS除去技術

9:Ag₈GeS₆量子ドットによる近赤外発光・低毒性半導体の開発

10:生体内で強い発光と低毒性を両立する量子ドットを開発

トレンド分析:効果・課題・今後の方向性
効果(メリット)
- これらの研究は、AI/半導体分野で「省電力化・高効率化」「材料・構造革新」「応用(実装/産業化)へ近づく」という共通のメリットを示しています。
- 例えば、Ag₈GeS₆量子ドットでは「低毒性かつ近赤外発光」という特徴を持ち、生体イメージングや次世代デバイス用途への展開が期待されます。
- 他にも、製造プロセス最適化(デジタルツイン+AI)や高電圧試験自動化など、製造・検証段階の効率化も進んでいます。
課題(残る問題)
- 多くの技術が「研究室レベル」または「プロトタイプ」に止まっており、量産化・コスト低減・信頼性確保というフェーズにまだ課題があります。
- 汎用性・適用範囲の広さという観点からも、「特定用途/条件下」でしか実証されていないケースが多く、実際の製品・市場に適合させるための標準化・互換性も懸念です。
- 材料系(例えば量子ドット)では、長期耐久性・環境耐性・人体安全性なども今後さらにクリアすべき点です。
今後の方向性
- システムレベルでの統合:単一技術ではなく、「材料+デバイス+回路+製造プロセス」などを総合して最適化する潮流が加速すると予測されます。
- 展開範囲を広げる:例えば量子ドット技術が生体イメージングだけでなく、次世代半導体やディスプレイ、通信用途にも応用される可能性があります。
- 端末・エッジ側の活用:省電力・小型化が可能な技術が、モバイル端末、IoT、車載/産業用途での普及を牽引すると見られます。
- 持続可能性・環境配慮:材料調達、製造工程、廃棄・リサイクルまで含めた「グリーン半導体」「グリーンAI」への要求も強まるでしょう。
技術テーマ別まとめ
AIハードウェア/半導体系
- 製造プロセス最適化、試験自動化、高効率アクセラレータなど。
- 効果:高効率・省電力・高速化。
- 課題:モデル汎用性、製造コスト、システム化。
- 今後:汎用AIアクセラレータ、エッジ向け展開、メモリ+演算統合。
次世代材料・デバイス系
- 量子ドット、半導体材料、放熱構造/冷却構造など。
- 効果:性能向上、材料革新、応用範囲拡大。
- 課題:量産化、環境/耐久性、コスト。
- 今後:量産対応プロセス、異分野融合(材料+AI)、環境配慮設計。
まとめ
この1年間のAI・半導体関連研究を俯瞰すると、 「高性能+省電力」 を実現するための材料・構造・システム設計の革新が目立ちます。特に、AI処理のためのハードウェア(アクセラレータ、PIM)と、エネルギー変換・デバイス(太陽電池、半導体材料)の両輪が並行して進展しており、今後はこれらが 融合・統合 されていくフェーズに入ってきていると考えられます。
ただし、研究から実用化・量産化・コスト競争力の確保という“壁”は依然として存在します。従って、今後数年は「研究成果をいかに実装可能な製品・システムに変えるか」が重要な焦点となるでしょう。
特に エッジAI、IoTデバイス、持続可能な製造プロセス といった領域が、今後の成長領域になりそうです。


