2025-02-25 国立天文台
HSC画像から、小惑星2024 YR4(緑十字でマーク)を中心に南北1分角、東西2分角の領域を切り出したもの。rバンド(波長550-700ナノメートル)で120秒間の露出で撮影。観測は2025年2月20日20時40分から21時00分(ハワイ現地時)に、快晴(0.5秒角のシーイング)の天候の下で行われました。(クレジット:国立天文台) 画像(2.2MB)
すばる望遠鏡が、2032年に地球に衝突する可能性が指摘されていた小惑星「2024 YR4」の撮影に、ハワイ現地時の2025年2月20日(日本時間2月21日)に成功しました。今回の観測で得られた小惑星の位置測定データは、この天体の衝突確率の精度を上げるために活用されました。
2024年12月に発見された小惑星2024 YR4は、直径40-90メートル程度の大きさと推定され、長い楕円(だえん)軌道を描きながら約4年の周期で太陽を公転しています。公転期間の多くは地球から遠く離れていますが、太陽に近づく際には地球軌道と交差し、まれに地球に接近します。この小惑星が2032年12月にわずかながら地球に衝突する可能性があるとして、国際連合宇宙部が事務局を務める国際小惑星警報ネットワーク(IAWN)による小惑星衝突の可能性に関する初めての通知が、出されました。このことをきっかけに、この小惑星の軌道を正確に特定するための観測が世界中で進められています。
今回のすばる望遠鏡による2024 YR4 の観測は、IAWNの要請を受けたJAXAプラネタリーディフェンスチームからの依頼に基づいて行われました。ハワイ現地時の2025年2月20日に、超広視野主焦点カメラHyper Suprime-Cam(ハイパー・シュプリーム・カム、HSC)を用いた観測で2024 YR4の撮影に成功し、天体の位置を正確に測定することができました。測定されたrバンドでの明るさは24.3等級でした。
本観測を遂行した国立天文台ハワイ観測所の寺居剛(てらい つよし)サポート・アストロノマーは、「2024 YR4は、発見当時は比較的明るく見えたものの、その後地球から遠ざかるのに伴いどんどん暗くなり、2月後半には大型望遠鏡でなければ観測が困難な状況でした。すばる望遠鏡の大きな集光力とHSCの高い撮像性能を生かして、本観測ミッションは達成されました」と語ります。
この観測成果は、国際天文学連合の小惑星センターに報告され、2024 YR4の軌道要素(軌道を表わす数値)の精度向上に寄与しました。IAWNによると、改善された軌道要素から求められた2032年の地球への衝突確率は0.004パーセント(2025年2月23日時点)と、2月上旬に発表された確率よりも大幅に下がりました。
HSCによる撮像画像。画像中心付近に位置する小惑星2024 YR4が、背景の恒星や銀河に対して移動している様子が確認できます。15分の間に撮影された120秒間露出の画像(30秒角にトリミング)を使用して作成したアニメーション。(クレジット:国立天文台)