北極海氷分布予報~2024年第一報~

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2024-05-30 北極海氷情報室、木村詞明(東京大学大気海洋研究所)

北極海氷分布予報~2024年第一報~図1:2024年9月10日の海氷分布予測図。

  1. 北極海の海氷域面積は9月の最小期に約484万平方キロメートルまで縮小する見込みです。 これは過去4年の中で最大の広さで2021年、2022年よりも若干大きい値です。
  2. ロシア側の北東航路では8月19日頃、多島海を除くカナダ側では7月25日頃に海氷が岸から離れ航路が開通する見込みです。
  3. ボーフォート海のカナダ多島海側に氷が解け残る見込みです。

2003年以降の最小海氷域面積の年変化
図2:2003年以降の最小海氷域面積(9月10日の海氷域面積)の年変化。 2024年の値(黄色点)は今回の予測値。昨年までの海氷域面積は 気象庁による集計値

7月1日から9月20日までの海氷分布予測値のアニメーション。
図3:7月1日から9月20日までの海氷分布予測値(白い場所が海氷)のアニメーション。
白線は今年の予測の密接度15%の位置、色のついた線は過去二年分の密接度15%の位置を示す。

予測された海氷密接度の平年値からの偏差
図4:予測された海氷密接度の平年値(2003-2023年の平均値)からの偏差。
赤が例年より早く海氷がなくなる場所、青は遅くまで海氷の残る場所を示す。

2024年4月30日の海氷年齢分布図5:2024年4月30日の海氷年齢分布。水色、青、緑、黄色、赤は、それぞれ1年氷、2年氷、3年氷、4年氷、5年氷以上の海氷である。


海氷最小期にあたる9月10日の北極海氷域面積は、約484万平方キロメートルと予想されます。これは過去4年の中で最大の広さで2021年、2022年よりも約3%大きい値です。
ロシア沿岸、カナダ側海域の海氷域の後退は2022年とほぼ同じペースで進行します。

ロシア側海域

東シベリア海の海氷域の後退は、その時期と海氷域分布ともに8月中旬までは2022年とほぼ同様で、 それ以降は2022年よりも早く、2023年よりも遅く後退し、海氷域は2022年よりも小さく、2023年よりも大きい分布になります。 また、カラ海からラプテフ海にかけての海氷域の後退は2022年と同様になる見込みです。 最近21年間の平均値と比較すると、東シベリア海、カラ海では例年よりも遅く、ラプテフ海では早く海氷がなくなります。 海氷が大陸から離れて開放水面域がつながり航路が開通するのは、8月19日頃と予想されます。

カナダ側海域

チュクチ海からボーフォート海にかけてのアラスカ沖海域では、2022年とほぼ同時期に海氷域が後退します。 開水面域がつながり航路が開通するのは7月25日頃の見込みです。 ボーフォート海のカナダ多島海側に海氷が解け残ることが予想されますが、2022年程度になる見込みです。 これは、生成から3年以上経過した古い氷が広がっているためです。


この予報は「冬季から春季までの海氷の移動」および「海氷年齢」の2つの要素を用いて行いました。 海氷の移動は12月はじめから4月末まで海氷の動きから、海氷年齢は4月末の海氷の位置を最大4年間遡ることによって求めています。 加えて、過去4年間の5月以降の海氷漂流速度の平均値を用いることで、予測日までに海氷が移流する効果を考慮しました。 また、日々の海氷密接度の予測値データはこちらから、 日々の海氷年齢分布データは こちらからダウンロードできます。

毎日の 予測図 及び 海氷齢(日齢、年齢)は国立極地研究所の北極域データアーカイブシステム(ADS)でも見ることができます。


お問い合わせ

北極海の衛星モニタリングや海氷予報、ここで用いた予測手法についてのご質問は海氷情報室(sea_ice@nipr.ac.jp )までお問い合わせください。

ArCS II

この予測およびその基礎となる研究は、GRENE北極気候変動研究事業から始まり、北極域研究推進プロジェクトに引き継がれ、2020年度からは北極域研究加速プロジェクト(ArCS II)で実施しています。

1702地球物理及び地球化学
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