2024-05-27 株式会社藤原製作所,日本原子力研究開発機構
【発表のポイント】
- バイオや化学分野の検査、実験などで、試薬など少量の液体を必要なだけ分注(吸引/排出)する「マイクロピペット」と呼ばれるツールが使われています。マイクロピペットには手動タイプと電動タイプがあります。
- 従来のマイクロピペットは、たとえそれが電動タイプであっても人間が手で操作することが前提になっており、特に先端のチップの排出は人間がボタンを押し下す手動式であったため、市販の多関節ロボットでは操作が困難でした。
- (株)藤原製作所は原子力機構の技術協力のもと、電気信号により、外部から分注する容量を指定することができ、さらに、チップを電動で排出できる機構を有した画期的な電動ピペットシステム「ぴぺすま」を開発しました。
- 市販の多関節ロボットによって本製品をハンドリングさせて自動的に分注操作を行わせることが可能なため、人が操作しにくいグローブボックス・セル内での分注操作や、実験の自動化での活用が期待できます。
- 「ぴぺすま」は2024年5月27日(月)に販売開始します。
株式会社藤原製作所(代表取締役社長:高野均、以下「藤原製作所」)は、国立研究開発法人日本原子力研究開発機構(理事長:小口正範、以下「原子力機構」)の技術協力により、ピペットシステム「ぴぺすま」を開発しました。本製品は5月27日に販売開始します。
マイクロピペットは、微量の液体を必要なだけ分注(吸引、排出)するためのツールです。分子生物学、製薬、医学、分析化学、環境科学、食品関連分野、化粧品、化学工業など幅広い分野で利用されています。
マイクロピペットは大きく分けると手動タイプと電動タイプがありますが、いずれも内部ピストンの上下動による空気の体積変化によって液体の吸引と排出を行います。このうち電動タイプのマイクロピペットは、オペレータの操作に起因した分注量のばらつきを抑えられることから高いニーズがあります。
ピペット先端の接液部には、使い捨てのプラスチック製チップを取り付けて使用するのが一般的です。 容量可変のマイクロピペットであれば、上部に設けられたダイヤルで容量を指定することで、任意の容量の分注を行うことが可能です。
しかしながら、近年注目を集めているラボラトリーオートメーションの分野で、分注操作の自動化を行おうとした場合、従来のマイクロピペットをロボットで操作することは簡単ではありませんでした。従来のマイクロピペットは人間工学に基づいて設計された形状と機能を有しているため、市販の多関節ロボットでは把持することさえ困難でした。
そこで原子力機構の大澤崇人研究主幹は、市販の一般的な多関節ロボットでもピペット操作が可能な新しい電動ピペットを開発しました。本システムは、以下の特徴を持ちます。
- 一般的なロボットハンドで把持しやすいシンプルな形状
- 手動操作が可能(コントロールボックスのボタンを使用)
- 外部制御も可能(パソコン等からの制御コマンドで制御)
- 速度可変式ダイヤルで、迅速に任意の分注容量を指定(手動操作の場合)
- フットスイッチ(オプション)が接続可能
- 電動チップ排出機構 搭載(チップ排出用のギミックは不必要)
- 市販の多関節ロボットと組み合わせることで、分注操作を自動化。
- 毒劇物や放射性物質を含んだ液体など、有害な物質でも安全に実験を実施。
- 電動ピペットは、制御系を組み込んだコントロールボックスとLANケーブル接続可能。
- 電動ピペット内に制御基板がないので、酸による腐食や放射線によるモータ故障が起きにくい。
- 万が一の故障の場合も、ピペット部だけの買い替えだけでOK。
- 安心価格で研究室レベルでの導入が容易。
「ぴぺすま」は、複雑な分注操作を安価に自動化できるスマートな製品です。研究室で日常的に、多数のサンプルを分注するようなシーンでの活用が期待できます。
【特許情報】
特許名:ピペットシステム
登録番号:特許第7162259号
特許権者:国立研究開発法人日本原子力研究開発機構
【本件に関する助成金等】
令和4年度いばらきチャレンジ基金
(公益財団法人いばらき中小企業グローバル推進機構)
新・研究用実験装置電動ピペットシステム「ぴぺすま」