2024-05-16 京都大学
液体・固体・気体など物質は状況に応じて異なる状態(相)を持つことがあり、相を理解することは物理学で重要な課題です。現代的な相の分類においては、エニオンと呼ばれる分数電荷を持つ準粒子が重要であり、量子コンピュータへの応用の観点からも研究されています。
戎弘実 基礎物理学研究所研究員、中西泰一 同博士課程学生(兼:理化学研究所大学院生リサーチ・アソシエイト)、本多正純 理化学研究所上級研究員の共同研究グループは、動き方に制限がかかる新しい種類のエニオンを系統的に記述する理論的枠組みを発見しました。図のように層に沿って量子もつれを導入し、ゲージ化と呼ばれる操作により新奇な物質の相を構成しました。この相ではエニオンが対を形成する双極子の構造が存在し、動き方に制限が見られるなどの新奇な性質があることが分かりました。この結果はフラクトン・トポロジカル相と呼ばれる新しい物性の解明や、量子情報の保存などの量子コンピュータへの応用の問題にも貢献していくことが考えられます。
本研究成果は、2024年5月13日に、国際学術誌「Physical Review Research」にオンライン掲載されました。
図:量子もつれの状態を導入し(左)ゲージ化を考えることで、双極子を持つエニオンの存在(右)を明らかにした。
研究者のコメント
「私たちの共同研究グループは、元々は別分野(物性理論・素粒子理論)の出身にも関わらず、エニオンの研究という共通の研究目的があり共同研究を行いました。今後もエニオンやトポロジカル秩序の研究はますます分野を超えた新しい広がりを見せていくと思われます。」