3GeV高輝度放射光施設ナノテラスが稼働~日本の競争力の強化に大きく貢献~

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2024-04-01 量子科学技術研究開発機構

ポイント

  • 令和5年12月のビームラインへの放射光導入に成功、令和6年3月の施設検査合格を経て、令和6年4月1日より予定通り稼働
  • 触媒化学や生命科学、磁性・スピントロニクス、高分子科学などの先端分野において、学術研究から産業利用までの幅広い利用により、日本の競争力の強化に大きく貢献
  • 先端科学の開拓と産業界でのイノベーション創出を目指す2つの利用制度を両輪として、産官学の多様な利用ニーズに対応

概要

国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構(理事長:小安重夫、以下「QST」)及び一般財団法人光科学イノベーションセンター(理事長:高田昌樹、以下「PhoSIC」)は、官民地域パートナーシップ1)により産学の幅広い研究者への供用を目的とした世界最高レベルの放射光2)施設ナノテラス3)の建設・整備を進めてきました。今般、ナノテラスの整備が完了し、予定通り令和6年4月1日より稼働を開始します。
ナノテラス全景ナノテラスは、高輝度な軟X線を用いて、物質の機能に影響を与える電子状態の可視化が可能な施設であり、学術研究だけでなく産業利用も含めた広範な分野での利用が期待されています。令和2年3月から基本建屋の建設を開始し、令和5年3月には基本建屋が竣工、同年12月には初めて放射光を実験エリアに導くファーストビームを達成しました。
また、令和5年5月には「特定先端大型研究施設の共用の促進に関する法律の一部を改正する法律」が成立し、令和6年4月の施行をもってナノテラスが特定先端大型研究施設に加わります。
ナノテラスの運用を予定通りに開始できたことにより、ナノテラスが得意とする「物質や生命の機能を可視化する能力」を存分に発揮し、触媒化学や生命科学、磁性・スピントロニクス、高分子科学などの分野において、機能可視化により新材料・デバイスの創出や研究開発の加速などにつながるなど、日本の競争力の強化に大きく貢献します。また、先端科学の開拓と産業界でのイノベーション創出を目指す共用利用とコアリション利用の2つの利用制度を用意したことで、産官学の多様な利用ニーズに応えることが出来ます。

放射光施設について

光速に近い速度で走る電子が磁石等でその軌道を曲げられたときに発生する、非常に輝度の高い「放射光」X線利用は1990年代に本格化しました。物質構造解明などを目的として、8GeV電子加速器を用いたSPring-8を始め、米国のAPS(7GeV)、欧州のESRF(6GeV)など大型放射光施設が相次いで建設され、主に硬X線波長領域の放射光を提供し、多様な科学分野で多くの研究成果創出に貢献してきました。2000年代以降になると、英国、スペイン、台湾など世界各地で3GeV級電子加速器を用いた中型放射光源が多数建設され利用が進みました。基礎科学から産業利用まで軟X線での観察が必要な対象が増大している中、この分野で日本がリードすることを目指して、軟X線に強みを持つ世界最高レベルの3GeV高輝度放射光施設ナノテラスの整備を官民地域パートナーシップで推進することが決まりました。ナノテラスは物質や生命の機能をナノレベルで可視化し、学術及び産業界における研究開発の仮説検証サイクルの促進に貢献する「巨大な顕微鏡」として期待されています。

ナノテラスの利用制度

​ ナノテラスの利用には、共用利用とコアリション利用の二つの制度があります。共用利用は、年数回程度課題募集が行われ、利用を希望する者が課題申請を行い、公平に利用機会を分配するため課題審査委員会の審査を経て利用が可能となるもので、原則として全ての者が申請可能です。利用によって得られた成果は原則として公開で、消耗品の実費負担以外の利用料金は発生しませんが、利用料金を支払うことで、成果を専有することもできます。コアリション利用は、加入金を拠出したコアリションメンバーだけが利用できるもので、課題審査無しで、原則1ヶ月前まで利用予約が可能です。利用料金は発生しますが、全て成果専有利用が可能です。
これら2つの利用制度が相補的に運用されることにより、利用者の多様なニーズに応え、先端科学の開拓とイノベーション創出を目指します。

【今後の予定】

  • 4月1日:ナノテラス稼働開始
  • 4月9日:コアリション利用ユーザー受入開始(別紙「取材案内」参照)
  • 5月:試験的共用開始4)、ナノテラス運用開始記念式典
  • 令和7年3月:共用利用ユーザー受入開始
用語解説

1)官民地域パートナーシップ
国の主体であるQSTとPhoSICを代表機関とする宮城県、仙台市、国立大学法人東北大学、一般社団法人東北経済連合会からなる地域パートナーで構成され、費用負担も含めた役割分担の元で整備が進められている。国の主体であるQSTは加速器と3本の共用ビームラインの整備を、地域パートナーは整備用地、基本建屋及び7本のコアリションビームラインの整備を担当している。

2)放射光
放射光は光速近くまでエネルギー加速された電子ビームを磁石で曲げた際に進行方向に放射される電磁波であり、高輝度、かつ指向性が高く、偏光特性を自由に変えられるなどの優れた特徴をもつ。

3)放射光施設ナノテラス
正式名称は、3GeV 高輝度放射光施設。NanoTerasu(ナノテラス)は愛称である。

4)試験的共用
国が整備した3本の共用ビームラインについて、最終調整及び試験的な利用を行うことで、令和7年3月からの共用利用ユーザー受入に向けたビームライン立ち上げを行うものである。

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