2023-12-21 京都工芸繊維大学,科学技術振興機構
ポイント
- 光と物質のハイブリッド状態として知られるポラリトン状態が、特殊な半導体材料の使用により、室温で量子的な重ね合わせ状態を形成できることを示した。
- この重ね合わせ状態は、半分は光としての性質を持つポラリトン状態の偏光特性を利用したものであり、全無機鉛ハライドペロブスカイトと呼ばれる特殊な物質でのみ実現可能な新しい量子状態である。
- 本発見は、量子計算を始めとしたさまざまな量子技術を室温で駆動するための基礎物理となり得るものであり、デバイスの低消費電力化技術の発展への寄与も期待できる。
京都工芸繊維大学 電気電子工学系 山下 兼一 教授、髙橋 駿 准教授らは、光と物質のハイブリッドな性質を持つ量子状態として知られるポラリトン状態が、全無機鉛ハライドペロブスカイトと呼ばれる特殊な半導体材料の使用により、量子的な重ね合わせ状態を形成可能であることを示した。ポラリトン状態は、ある密度以上で生成されると、多数のポラリトンが協同してエネルギー凝縮(ポラリトン凝縮)を引き起こし、巨視的に全体で1つの量子としての振る舞いを示す。全無機鉛ハライドペロブスカイトでは、このポラリトン凝縮状態が室温で形成可能となる。今回の研究では、この室温ポラリトン凝縮の直交する2つの偏光状態間で量子的な重ね合わせ状態が形成できることを実験的に見いだした。本発見は、量子計算を始めとしたさまざまな量子技術を室温で駆動するための基礎物理となり得るものであり、デバイスの低消費電力化技術の発展への寄与も期待できる。
本研究成果は、2023年12月20日(現地時間)に「Communications Materials」に掲載された。
本研究は、科学技術振興機構(JST) 戦略的創造研究推進事業 CREST「トポロジカル材料科学に基づく革新的機能を有する材料・デバイスの創出」研究領域(No.JPMJCR20T4)、日本学術振興会(JSPS) 科学研究費国際共同研究強化(B)(No.20KK0088)、同 基盤研究(A)(No.22H00215)、同 挑戦的研究(萌芽)(No.22K18794)の支援を受けて行われた。
<プレスリリース資料>
- 本文 PDF(438KB)
<論文タイトル>
- “Polarization superposition of room-temperature polariton condensation”
- DOI:10.1038/s43246-023-00440-w
<お問い合わせ先>
<研究に関すること>
山下 兼一(ヤマシタ ケンイチ)
京都工芸繊維大学 電気電子工学系 教授
<JST事業に関すること>
安藤 裕輔(アンドウ ユウスケ)
科学技術振興機構 戦略研究推進部 グリーンイノベーショングループ
<報道担当>
京都工芸繊維大学 総務企画課 広報係
科学技術振興機構 広報課