2023-09-20 京都大学
森信人 防災研究所教授、中北英一 同教授、竹見哲也 同教授、志村智也 同准教授、仲ゆかり 同助教、呉映昕 同特定准教授、山本浩大 同特定助教らの研究グループは、気象庁気象研究所、気象業務支援センター、海洋研究開発機構、北海道大学、土木研究所寒地土木研究所と共同で、「地球温暖化対策に資するアンサンブル気候予測データベース(d4PDF)」を元に、これまでにない、日本全国を網羅した多数の高解像度気候予測シミュレーションを実施しました。
このデータを分析した結果、地球温暖化の進行に伴い、日本における50年に一度程度の大雨や線状降水帯の頻度及び強度が増加し、台風に伴う大雨も増加することが分かりました。今回実施した5kmメッシュ(水平格子間隔)のシミュレーションは、d4PDFの20kmメッシュのシミュレーションに比べて、発生頻度の低い大雨の再現性が向上し線状降水帯の検出も可能となりました。線状降水帯の発生頻度は、20世紀半ばから21世紀初頭と比べて、地球全体の平均気温が工業化以降2度上昇した気候ではおよそ1.3倍、4度上昇した気候ではおよそ1.6倍になると予測されました。ただし、本研究での線状降水帯の定義は、現在気象庁が「顕著な大雨に関する気象情報」の発表基準として定義している線状降水帯とはやや異なります。
本データは今後、データ統合・解析システム(DIAS)を通じて公開する予定です。本研究で示した大雨に限らず、猛暑や大雪等も含む極端気象に対する今後の日本の防災、及び地球温暖化適応策策定への活用が期待されます。
本研究成果は、2023年9月19日に、国際学術誌「Journal of Geophysical Research-Atmosphere」に掲載されました。
線状降水帯の出現頻度
上段が、(a)過去実験と(b)4度上昇実験における線状降水帯の発生数(10年あたり)。下段が、日本全国で積算した線状降水帯の年間発生数の頻度分布。青:過去実験、緑:2度上昇実験、赤:4度上昇実験。過去実験と4度上昇実験を太線で囲っている。
研究者のコメント
「今回発表発表する気候予測シミュレーション結果は、2017年に発表したd4PDFと呼ばれる気候予測シミュレーション結果を大幅に改善した新しい成果です。特に雨の予測精度が向上したことが特徴で、地球温暖化の進行にしたがい、極端気象がどの用に変化するのかについての新しい知見が得られました。京都大学の若い先生方に積極的に協力していただき、多機関での共同により、良い成果が得られました。」(森信人)
詳しい研究内容について
地球温暖化の進行に伴い、線状降水帯を含む極端降水が増加することが明らかに
研究者情報
研究者名:森 信人
研究者名:中北 英一
研究者名:竹見 哲也
研究者名:志村 智也
研究者名:仲 ゆかり
研究者名:呉 映昕
研究者名:山本 浩大
書誌情報
【DOI】
https://doi.org/10.1029/2023JD038513
【書誌情報】
H. Kawase, M. Nosaka, S. I. Watanabe, K. Yamamoto, T. Shimura, Y. Naka, Y.-H. Wu, H. Okachi, T. Hoshino, R. Ito, S. Sugimoto, C. Suzuki, S. Fukui, T. Takemi, Y. Ishikawa, N. Mori, E. Nakakita, T. J. Yamada, A. Murata, T. Nakaegawa, I. Takayabu (2023). Identifying Robust Changes of Extreme Precipitation in Japan From Large Ensemble 5-km-Grid Regional Experiments for 4K Warming Scenario. Journal of Geophysical Research: Atmospheres, 128(18):e2023JD038513.