2023-07-21 京都大学
イネは、わが国では言うまでもなく、世界的にみても人口の約半数が主食としている非常に重要な作物です。田中佑 農学研究科准教授(現:岡山大学教授)、齋藤和樹 コートジボワール・アフリカライスセンター(Africa Rice Center)主任研究員(現:フィリピン・国際イネ研究所(International Rice Research Institute)博士)、桂圭佑 東京農工大学准教授、辻本泰弘 国立研究開発法人国際農林水産業研究センター博士、高井俊之 同博士、田中貴 岐阜大学准教授、本間香貴 東北大学教授らを中心とする研究グループは、国際的な研究ネットワークを通じて国内外から大量のイネ画像と収穫量のデータを収集し、AIに学習させました。これにより、野外で生育するイネの収穫期の画像を撮影するだけで、高い精度で面積あたり収穫量(収量)を推定する技術を開発しました。本技術は幅広い品種や環境条件において適用可能なだけでなく、市販のデジタルカメラやスマートフォンのみで、誰でも簡単にイネ収量を推定できるようにした点に最大の特徴があり、いわばイネの収穫量を見極める”AIの目”を実現したと言えます。
本技術は、これまで時間と労力をかける必要のあったイネの収量調査を大幅に省力化・迅速化することで、育種現場における多収品種の選抜に貢献すると考えられます。加えて農家圃場、特に開発途上地域など、これまで調査困難であった地域のイネ生産量の把握、ひいては最適な栽培法選択や政策立案など、多方面にわたって活用されることが期待されます。
本研究成果は、2023年6月29日に、国際学術誌「Plant Phenomics」にオンライン掲載されました。
本研究成果の概要
研究者のコメント
「本研究は、多数の国・研究機関が連携し、数多くの研究者の力が結集した国際共同研究の成果です。関わった全ての方々に心からお礼を申し上げます。私自身はAIの専門家ではないのですが、新たな分野にチャレンジし、こうして成果を公表できたことに達成感を感じています。ぜひ多くの方がこの技術に興味を持っていただけることを願っています。」(田中佑)
詳しい研究内容について
書誌情報
【DOI】
https://doi.org/10.34133/plantphenomics.0073
【書誌情報】
Yu Tanaka, Tomoya Watanabe, Keisuke Katsura, Yasuhiro Tsujimoto, Toshiyuki Takai, Takashi Sonam Tashi Tanaka, Kensuke Kawamura, Hiroki Saito, Koki Homma, Salifou Goube Mairoua, Kokou Ahouanton, Ali Ibrahim, Kalimuthu Senthilkumar, Vimal Kumar Semwal, Eduardo Jose Graterol Matute, Edgar Corredor, Raafat El-Namaky, Norvie Manigbas, Eduardo Jimmy P. Quilang, Yu Iwahashi, Kota Nakajima, Eisuke Takeuchi, Kazuki Saito (2023). Deep learning enables instant and versatile estimation of rice yield using ground-based RGB images. Plant Phenomics.