露出した金属表面を持つハイブリッド分子触媒を開発 ~安定性と高い触媒活性を両立~

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2023-06-09 東京大学,東京都立大学,株式会社リガク,科学技術振興機構

ポイント
  • リング状金属酸化物の内側に存在する1ナノメートル径の空間に銀ナノクラスターを導入することで、露出した銀表面を持つハイブリッド分子触媒を開発。
  • 開発した触媒は高い安定性と触媒活性を両立し、金属酸化物と銀ナノクラスターによる協奏的な触媒作用を示す。
  • 資源循環やエネルギー変換のための触媒、光機能材料、センサー、分子エレクトロニクスなどの材料開発への応用が期待される。

東京大学 大学院工学系研究科の鈴木 康介 准教授、米里 健太郎 特任助教、屋内 大輝 大学院生、山口 和也 教授らによる研究グループは、同大学 大学院総合文化研究科の横川 大輔 准教授、東京都立大学 大学院理学研究科の山添 誠司 教授、株式会社リガクと共同で、露出した銀表面を持つ金属ナノクラスターとリング状の金属酸化物を組み合わせたハイブリッド分子触媒の開発に成功しました。

金属ナノクラスターの表面は触媒機能や分子機能の発現に重要ですが、その高い反応性のために、露出した金属表面を持つ構造体の合成や利用は困難でした。本研究では、リング状の金属酸化物の内側に存在する1ナノメートル径の空間を利用することで、30個の銀原子で構成される銀ナノクラスターを合成しました。本研究で開発したハイブリッド分子触媒は、露出した銀表面を持ちながら、固体状態や溶液中で安定であることが分かりました。また、銀ナノクラスターと周囲のリング状金属酸化物が協奏的に働くことで、水素分子を電子とプロトン(水素イオン、H)に解離することができ、水素分子を用いてさまざまな有機分子を変換する触媒材料として機能します。

本成果により、反応性の高い露出表面を持つ金属ナノクラスターを設計できるようになります。また、金属ナノクラスターと金属酸化物を組み合わせた多様な構造を設計することが可能になり、資源循環やエネルギー変換のための触媒、光機能材料、センサー、分子エレクトロニクスなどの材料開発への応用が期待されます。

本研究成果は、2023年6月8日(英国夏時間)に英国学術誌「Nature Chemistry」誌のオンライン版に掲載されます。

本研究は、科学技術振興機構(JST) 戦略的創造研究推進事業 さきがけ(課題番号:JPMJPR18T7、JPMJPR19T9)、JST 創発的研究支援事業(課題番号:JPMJFR213M)、日本学術振興会(JSPS) 科学研究費補助金(課題番号:20H02749、20H04659)、JSPS 研究拠点形成事業、野口研究所、東レ科学振興会などの支援により実施されました。

<プレスリリース資料>
  • 本文 PDF(527KB)
<論文タイトル>
“Surface-exposed silver nanoclusters inside molecular metal oxide cavities”
DOI:10.1038/s41557-023-01234-w
<お問い合わせ先>

<研究に関すること>
鈴木 康介(スズキ コウスケ)
東京大学 大学院工学系研究科 准教授

<JST事業に関すること>
内山 浩幹(ウチヤマ ヒロキ)
科学技術振興機構 創発的研究推進部

<報道担当>
東京大学 大学院工学系研究科 広報室
東京都立大学 企画広報課 広報係
リガク・ホールディングス株式会社 広報宣伝課
科学技術振興機構 広報課

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