2021-09-17 アメリカ合衆国・マサチューセッツ工科大学(MIT)
・ MIT が、太陽光や LED の光で充電して発光する植物を開発。
・ LED による 10 秒間の充電後、第一世代発光植物(2017 年開発)の 10 倍の輝度で数分間発光し、繰り返し充電できる。
・ 様々に組み合わせた機能性ナノ粒子を取り入れて植物に新たな機能特性を付与する技術は、新興する植物ナノバイオニクス分野の一例。第一世代の発光植物技術では、ホタルの生物発光を触媒する酵素のルシフェラーゼと反応気質のルシフェリンを含有したナノ粒子を利用し、読書に必要な光量の約 1/1000 で数時間微量に発光するオランダガラシを作製した。
・ 本研究では発光時間の延長と輝度の向上を目指し、必要に応じて蓄電・放電するキャパシタのアイデアを採用。フォトンの形態で光を貯蔵して徐々に光を放出する「光キャパシタ」を開発した。
・ 光キャパシタには、可視光や紫外光を吸収して徐々にリン光を発するリン光物質としてアルミン酸ストロンチウムを使用。同材料でナノ粒子を作製し、植物へのダメージを回避するためシリカでコーティングした。
・ 植物の葉の微細な気孔を通じて直径数 nm の同ナノ粒子を注入するとスポンジ層の葉肉に蓄積し、太陽光や LED からのフォトンを吸収する薄膜を形成する。本研究の主要な成果は、植物の損傷や光特性の損失無く、植物の葉肉をフォトニック粒子のディスプレイとして利用可能であることの実証。
・ 同発光植物では、青色 LED を 10 秒間照射した後に約 1 時間の発光を確認。最も明るい最初の 5分間後に発光は徐々に弱まった。2019 年のスミソニアンデザイン博物館での実験展示にて、最低でも2 週間の継続充電を実証した。
・ 同実験展示では、労働・居住環境における植物を利用した照明インフラが不可欠となる未来のビジョンを提示。現在の非持続可能的な都市部の電灯照明系統を代替する、高度な植物発光技術の端緒を開くもの。
・ 光キャパシタのアプローチは、バジルやタバコ等の他の植物にも応用が可能。屋外での光源として便利な巨大な葉のクワイズイモでの発光も確認した。
・ 同技術のナノ粒子による植物の通常の機能への影響を調査した結果、10 日間にわたる光合成の継続と気孔からの水分の蒸発を確認。約 60%のリン物質を抽出して、別の植物で再利用できた。
・ 現在は、より高輝度の長時間発光を目指して 2017 年の研究で利用したルシフェラーゼナノ粒子と今回開発のリン光ナノ粒子の光キャパシタとの組合せについて調査中。
・ 本研究には、Thailand Magnolia Quality Development Corp., Professor Amar G. Bose リサーチグラント、MIT Advanced Undergraduate Research Opportunities Program、シンガポール科学技術研究庁
(A*STAR)、Samsung 奨学金プログラムおよびドイツ研究振興協会(DFG)リサーチフェローシップが資金を提供した。
URL: https://news.mit.edu/2021/glowing-plants-nanoparticles-0917
<NEDO海外技術情報より>
(関連情報)
Science Advances 掲載論文(フルテキスト)
Augmenting the living plant mesophyll into a photonic capacitor
URL: https://www.science.org/doi/10.1126/sciadv.abe9733