“もみがら”と“米ぬか”等を利用した【JOGMECプロセス】で技術導入を加速
2021-08-26 石油天然ガス・金属鉱物資源機構
JOGMECは、自然力活用型坑廃水処理(パッシブトリートメント)技術として、もみがらと米ぬか等を利用し微生物を活性化させ、有害金属を除去する方法【JOGMECプロセス】について、通水量100 リットル/分となる「実規模相当実証試験」を、実際の休廃止鉱山のサイトにおいて2020年7月より開始し、今般、約1年間にわたり処理が継続できることを実証しました。このプロセスは、動力を用いる機械設備や薬品を極力使用しないことから、電力費などコストの大幅削減や環境負荷の低減、二酸化炭素排出量削減が見込まれるものです。厳冬期でも処理が継続することが確認され、本実証試験の成功により、国内の休廃止鉱山坑廃水処理事業への本技術の導入の加速化が期待されます。
「実規模相当実証試験」の様子
日本各地には、かつて金や銀、銅などを含む鉱石を採掘していた鉱山が多数存在し、採掘が終了した現在でも、旧坑道などから有害金属を含む坑廃水が流出する場合があり、適切に処理されていますが、そのコスト削減が大きな課題となっています。JOGMECは、鉱害防止事業における坑廃水処理コストの大幅な削減が期待できる自然力活用型坑廃水処理(パッシブトリートメント)に関する調査研究に長年取り組んでおり(注1)、「JOGMECプロセス」(注2)を考案し、これまで実際の休廃止鉱山のサイトでパイロット試験(通水量約5 リットル/分)を行い、坑廃水を適切に処理できることを確認してきました。
実際の坑廃水処理現場への適用に向け、通水量を実規模相当である100 リットル/分へと大幅に拡張した実証試験の準備を進め、2020年7月に本格的な通水を開始しました。今般、約1年間にわたり坑廃水が試験設備を通過することで金属が除去され、一律排水基準値を満たすことを確認しました。本実証試験では、酸性(pH:3.5程度)で、鉄や亜鉛、鉛、銅、カドミウムを含む坑廃水に対して、主に鉄酸化細菌を活用して鉄を除去する工程(砕石を充填した鉄酸化・除去槽)を前段に設置し、その後段に、もみがら・米ぬか等を充填、あるいはエタノール溶剤を添加する嫌気反応槽で硫酸還元菌(Sulfate Reducing Bacteria:SRB)を活用し、亜鉛、鉛、銅、カドミウムを除去する工程を設置する二段プロセスとし、全国各地の坑廃水の水質に対応できるよう工夫しました。
試験は東北地方で行われ、冬季には外気温はマイナス15度程度まで低下しましたが、配管の凍結等の設備面の不具合はみられず、非常に厳しい環境においても安定的に上述の金属が除去され、一律排水基準を満たしていることを確認しました。このプロセスは、一般的な鉱山坑廃水処理のような恒常的な薬剤添加や動力を用いた撹拌、固液分離といった工程は不要で、薬剤や電力にかかるコストの大幅削減や環境負荷の低減、二酸化炭素排出量削減が見込まれます。
試験は今後数年間継続する計画で、長期間の処理性能や必要なメンテナンス等を把握し、国内の休廃止鉱山への導入に関する知見を蓄積します。
JOGMECは、鉱害防止事業を支援する政策実施機関として、坑廃水処理コスト削減を実現する手段である自然力活用型坑廃水処理技術の実導入を目指し、今後も調査研究を推進してまいります。
(注1)JOGMECの自然力活用型坑廃水処理の調査研究について
(注2)「JOGMECプロセス」について
JOGMECでは、もみがら・米ぬか等を充填した反応槽(バイオリアクター)内で、それらを栄養源にして硫酸還元菌が活性化し、坑廃水中の亜鉛やカドミウム、銅、鉛などの有害金属を、主に硫化物として析出させ、除去する「JOGMECプロセス」を考案し、関連技術について3件の国内特許を取得しています(下図参照)。微生物の活性を制御しやすくするため、エタノール溶剤を栄養源として添加するプロセスの検討も進めています。
一般的な坑廃水処理の概念図
JOGMECプロセスの概念図
【複雑な設備や動力不要で金属除去が可能】
表 一般的な坑廃水処理とJOGMECプロセスの概念比較
亜鉛の処理状況の様子
【鉄、鉛、銅、カドミウムも同様に一律排水基準を満たす】
この記事に関するお問い合わせ先
金属環境事業部調査技術課 高本、濱井
総務部広報課 尾崎