太陽系外惑星の周りに月を形成する円盤を世界で初めて発見

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2021-07-28 国立天文台

グルノーブル大学/チリ大学のミリアム・ベニスティ氏らの研究チームは、アルマ望遠鏡を用いて、太陽系外惑星の周りにある塵の円盤を初めて明確に検出しました。この観測結果は、若い恒星系で月や惑星がどのように形成されるのかという問いに答える重要な成果と言えます。

アルマ望遠鏡で撮影した、若い星PDS 70の周囲の原始惑星系円盤(左)と、その周りをまわる惑星PDS 70cのクローズアップ画像(右)。PDS 70は左の画像の中心にあります。クローズアップ画像中央で点のように見えるのが、PDS 70cの周囲の塵の円盤です。
Credit: ALMA (ESO/NAOJ/NRAO)/Benisty et al.

ベニスティ氏は、「今回の研究は、衛星が形成されている可能性のある円盤を明確に検出したものです。今回のアルマ望遠鏡による観測では非常に高い解像度が得られたため、円盤が惑星に付随していることがはっきりとわかり、円盤の大きさを初めて決定することができました」とコメントしています。

この円盤は、地球から約370光年離れた若い星PDS 70を回る2つの巨大な木星型惑星のうちの1つ、PDS 70cの周りにあります。このような惑星のまわりの円盤は、一般に「周惑星円盤」と呼ばれます。PDS 70cの周囲にはこれまでにも円盤の存在が示唆されていましたが、円盤と周囲の別の構造が明確に分離されていなかったため、その存在が確たるものにはなっていませんでした [1]。今回のアルマ望遠鏡による高解像度観測の結果、この惑星のまわりの円盤がはっきりと浮かび上がったのです。

観測結果からは、周惑星円盤の直径が太陽から地球までの距離とほぼ同じであること、地球の月と同じ大きさの衛星を3個形成できるだけの質量を持っていることが明らかになりました。一方、もうひとつの惑星であるPDS 70bがあるべき位置にはアルマ望遠鏡では対応する天体が見えず、PDS 70bの周囲には円盤がないと考えられています。その理由として、円盤の材料になる塵をPDS 70cが奪ってしまった可能性が考えられます。

今回の結果は、月がどのようにして作られるのか、という謎を解く鍵になるだけではありません。共同研究者である米国カーネギー科学研究所の惑星科学者ジェイハン・ぺ氏は、「今回の新しい観測結果は、これまで検証できなかった惑星形成の理論を証明する上でも非常に重要です」と語っています。

惑星は、若い星の周りにある塵とガスの円盤の中で形成され、円盤に隙間を作りながら周囲の物質を吸い込んで成長すると考えられています。その際、惑星は自分自身のまわりに円盤を作り、その円盤が惑星に降り注ぐ物質の量を調節する役割を持っています。同時に、円盤の中のガスや塵が合体して次第に大きな天体となり、最終的には衛星が作られます。

しかし、その詳しい過程については天文学者もまだ完全には理解していません。「つまり、惑星や衛星がいつ、どこで、どのようにして出来上がるのかは、まだ明らかになっていないのです」と、欧州南天天文台のステファノ・ファッチーニ研究員は説明します。

The PDS 70 system as seen with ALMA

アルマ望遠鏡で観測した若い星PDS 70の周囲の原始惑星系円盤。PDS 70は二重のリングの中心にあります。リングの間の暗い部分に、PDS 70bとPDS 70cというふたつの太陽系外惑星が発見されています。PDS 70bはアルマ望遠鏡の観測では見えておらず、周囲に塵の円盤を持っていないと考えられます。
Credit: ALMA (ESO/NAOJ/NRAO)/Benisty et al.

「これまでに4000個以上の太陽系外惑星が発見されていますが、それらはすべて成熟した系で検出されています。今回観測された若い星PDS 70を回る2つの惑星は、太陽系の木星と土星のペアを思わせますが、これまでに検出された太陽系外惑星の中でも形成途上にある惑星はこの2個以外には見つかっていません。」と、ドイツのマックス・プランク天文学研究所のミリアム・ケプラー氏は語っています [2]

「PDS 70惑星系は、惑星や衛星の形成過程を観測・研究するための稀有な機会を提供してくれます」とファッチーニ氏は付け加えています。

PDS 70bとPDS 70cは、それぞれ2018年と2019年に欧州南天天文台の超大型望遠鏡(VLT)を用いて初めて発見され、そのユニークな性質から、その後何度も他の望遠鏡や観測装置で観測されています。

この記事は、欧州南天天文台が2021年7月22日に発表したプレスリリースをもとに作成しました。

論文情報
この観測成果は、Myriam Benisty et al. “A Circumplanetary Disk Around PDS 70c”として、米国の天体物理学専門誌「アストロフィジカル・ジャーナル・レターズ」に掲載されました。

[1]
2019年7月12日掲載のニュース「若い星のまわりで見つかった「衛星を作る」周惑星円盤」では、同じくPDS 70cの周囲の円盤を検出した可能性について述べていますが、今回の観測のほうが高い解像度で行われたため、周惑星円盤をはっきりと分離することができました。

[2]
PDS 70bとPDS 70cの2個の惑星は太陽系の木星と土星の関係に似ていますが、今回PDS 70cの周囲で見つかった円盤は、土星の環より500倍も大きなものです。

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