天の川銀河中心ブラックホールを回る星の動きをアルマ望遠鏡で見る

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2021-09-13 国立天文台

電波望遠鏡は、宇宙に存在するガスを見ることが得意です。例えば天の川銀河中心ブラックホール(いて座Aスター)周囲では、電離ガスが何本もの腕状に分かれていることが、30年前から明らかになっていました。一方赤外線は星を見るのが得意で、天の川銀河中心付近の星でも比較的容易に観測でき、さらに補償光学技術を用いて大気による星のゆらぎを取り除いて撮影することができました。星が放つ光の強さは、波長の2乗に反比例するため、赤外線より波長の長いミリ波サブミリ波では放射が弱くなります。また解像度も波長に比例して悪くなり、解像度が低いと星の放射は薄まってしまいます。このように電波望遠鏡での星の検出は難しくなります。このため今までの電波望遠鏡では、近距離にあるものを除いて星を観測することはできませんでした。一方、ミリ波サブミリ波は赤外線よりも透過力が強いため、十分に高感度な電波望遠鏡を使えば、星雲中に深く埋もれた星であっても観測できると期待されます。

宇宙航空研究開発機構宇宙科学研究所の坪井昌人教授らの研究チームは、2017年にアルマ望遠鏡を用いて周波数230 GHzで天の川銀河中心の観測を行い、25ミリ秒角の高解像度と、いて座Aスターの電波強度の5万分の1まで検出できる高い感度を実現しました。このアルマ望遠鏡の桁違いの高感度・高解像度によって、天の川銀河中心の周囲の星を電波で初めて検出することに成功しました。検出された星は約50個であり、そのほとんどが極めて明るい星であるウォルフ・ライエ星やO型星でした。また、2019年の観測データも用いて、天の川銀河中心に対する星の運動も、電波望遠鏡としては初めて測定しました。

その結果、この領域の星がランダムに動いているのではなく、いくつかのグループに分類できることがわかりました。図中の青い楕円内部、いて座Aスター近傍では、多くの星はいて座Aスターを中心に時計回りに公転しているようです。この公転は赤外線観測による長年の観測ですでに知られているものですが、2年間隔のわずか2回のアルマ望遠鏡観測でもこれを確認することができました。

アルマ望遠鏡で観測した、天の川銀河の中心部の様子。左は、アルマ望遠鏡で観測した星の位置と動き(矢印)で、中心にいて座Aスターがあります。右は、IRS13E星団のクローズアップです。
Credit: M. Tsuboi et al.

もしこの領域で星の形成が散発的に起きるとすれば、星の運動はランダムになってもよいはずです。星の運動がそろっているという観測結果は、ブラックホールに向かって落下してきたガスから同時に星が作られたか、あるいは星自身がそろってブラックホールに向かって落下していることを示唆しています。星の運動速度は外側では数十km/sとゆるやかですが、内側に行くにつれて激しくなり、数百km/sにも達します。これは、星がいて座Aスターの周囲をケプラー運動していると考えると説明がつきます。この速度から、ブラックホールの質量を推定すると、太陽の400万倍となり、これまで他の観測結果から推定されている質量と一致しました。

さらに、天の川銀河中心に最も近い場所に位置する星団IRS13Eにおける星の動きも測定することができました。その結果、星団のほとんどの星は西向きに運動していることがわかりました。これも、赤外線による従来の観測結果を裏付けるものです。また、星団中心に星ではなく明るい円盤状の天体が存在することも明らかになりました。

この研究成果は、Masato Tsuboi et al. “Astrometry of the Nuclear Star Cluster using ALMA”として、2021年9月13日からオンライン開催される日本天文学会2021年秋季年会にて発表されます。

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