2021-06-11 国立天文台
むりかぶし望遠鏡によって観測された小惑星「Kushiike」(矢印の先の二重丸で囲った天体、観測日時:日本時間2021年6月1日04時36分、撮影:堀内 貴史)。
櫛池隕石にちなんで命名された小惑星「Kushiike」の観測をむりかぶし望遠鏡で行い、その姿を捉えました。
小惑星「Kushiike」は新潟県上越市清里区に1920年9月16日に落下した隕石、櫛池隕石にちなんで名付けられた天体です。櫛池隕石落下100年の記念事業の一つとして、上越天文教育研究会の働きかけにより平成30年に小惑星の命名プロジェクトが始動しました。国立天文台は昭和57年に東京大学木曽観測所(長野県木曽町)で発見された「(26806)1982 KX1」という小惑星の命名権を持っていました。そこで上越天文教育研究会、上越教育大学、国立天文台による話し合いの下、発見者の許可を得て「Kushiike」の名前で国際天文学連合(IAU)に申請されました。その後申請が認められ、2021年5月14日にIAUの小天体命名委員会報告で公表されました。
小惑星「Kushiike」は2021年6月現在へび座の方角にありますが、その明るさは18.7等級(※1)と暗く(※2)、観測を行うには大きな口径の望遠鏡が欠かせません。このような中、上越教育大学の濤崎教授の依頼によって、九州・沖縄地方最大105 cmの口径を持つむりかぶし望遠鏡での観測がスタートしました。観測開始時の沖縄地方は梅雨でしたが、貴重な晴れ間に観測を行うことでその姿を撮影することに成功しました。この成果は上越タイムス第13531号に掲載されました。
※1 明るさが100分の1だと等級の数字が5つ大きくなります。18.7等級は人間の目で見える最も暗い6等級の約10万分の1の明るさに相当します。
※2 小惑星「Kushiike」が暗いのは、反射率が0.04とたいへん低いことがひとつの理由です。この反射率は、スペースX社のスターリンク衛星に黒色塗装を施した「ダークサット」と同程度ですが、スターリンク衛星は地表から近いため、6等級ほどで観測されます。
文責:堀内 貴史、花山 秀和