(Stanford engineers find a way to control chemical catalysts with sculpted light)
2021/1/15 アメリカ合衆国・スタンフォード大学
・ スタンフォード大学が、金ナノバー上に配置した水素化パラジウムナノロッド(Au-PdHx)アンテナ-リアクタシステムにおいて、光励起した局在表面プラズモン共鳴による触媒反応活性部位の拡張を実証。
・ 今回の研究結果は、高効率性の触媒、新たな触媒反応や一度に複数の反応を維持する触媒等を含んだ、原子スケールからリアクタスケールに最適化した触媒開発の進展において重要な一歩と考える。
・ 水素を豊富に含有するパラジウムは、特定の温度と圧力条件下で水素原子を放出する。このような標準的な触媒反応への光照射の影響を調査するため、金のナノバー上に人間の毛髪の約 1/200 のサイズのパラジウムナノロッドを配置したシステムを設計した。
・ 金ナノバーはアンテナとして機能し、電子ビームの光を集めてパラジウム触媒へと送る。環境制御透過電子顕微鏡(ETEM)を利用した「ミニラボ」にて、原子レベルでの物質の挙動を可視化し、自然な触媒反応の理解を踏まえ、光による触媒のナノ粒子の改変と制御方法を探った。
・ 光照射の無い場合では、最も高い脱水素化反応部位はパラジウムナノロッドの先端部 2 ヶ所であり、その後同化学反応はナノロッド中を移動して水素を放出することがわかった。
・ 光照射のある場合では、同反応がナノロッドの中心から外側へ、またある先端部から別の先端部へと移動するように制御できることを確認。金ナノバーの位置と光照射の状態をベースに、反応が起こる「ホットスポット」複数個を創出できた。
・ 本研究は、完成した触媒でもその挙動の調整が可能であることを示すと共に、単一触媒レベルでの効率性の向上の可能性を開くもの。単一触媒では、光の利用によりその表面上で同一の反応を複数回繰り返したり、反応が起こる部位を増やしたりして、複数の触媒のような役割を担うことができる。光による制御はまた、不要な反応の発生の回避にも役立つ。
・ プラスチックを分子レベルで分解し、リサイクル用の基礎原料に変換できる触媒の開発を最も意欲的な目標として掲げている。
・ 本研究には、SLAC 国立加速器研究所、米国立科学財団(NSF)、米エネルギー省(DOE)科学局材料科学・工学研究部門、Gabilan Stanford Graduate Fellowship およびスタンフォード大学の TomKat Center
for Sustainable Energy と Diversifying Academia, Recruiting Excellence (DARE) Doctoral Fellowship
Program が資金を提供した。
URL: https://news.stanford.edu/2021/01/15/controlling-chemistry-sculpted-light/
<NEDO海外技術情報より>
(関連情報)
Science 掲載論文(アブストラクトのみ:全文は有料)
Driving energetically unfavorable dehydrogenation dynamics with plasmonics
URL: https://science.sciencemag.org/content/371/6526/280
Abstract
Nanoparticle surface structure and geometry generally dictate where chemical transformations occur, with higher chemical activity at sites with lower activation energies. Here, we show how optical excitation of plasmons enables spatially modified phase transformations, activating otherwise energetically unfavorable sites. We have designed a crossed-bar Au-PdHx antenna-reactor system that localizes electromagnetic enhancement away from the innately reactive PdHx nanorod tips. Using optically coupled in situ environmental transmission electron microscopy, we track the dehydrogenation of individual antenna-reactor pairs with varying optical illumination intensity, wavelength, and hydrogen pressure. Our in situ experiments show that plasmons enable new catalytic sites, including dehydrogenation at the nanorod faces. Molecular dynamics simulations confirm that these new nucleation sites are energetically unfavorable in equilibrium and only accessible through tailored plasmonic excitation.