500℃でも高感度を維持し安定して動作 内燃機関や石油探索など過酷環境での利用に期待
2020.11.13 国立研究開発法人 物質・材料研究機構 (NIMS)
NIMSは、ダイヤモンドを使って、500℃の高温でも低消費電力で安定に動作する、高感度な磁気センサの開発に成功しました。
概要
- NIMSは、ダイヤモンドを使って、500℃の高温でも低消費電力で安定に動作する、高感度な磁気センサの開発に成功しました。ダイヤモンドが高温でも安定して駆動する仕組みを理論的に明らかにすることで、既存の高温磁気センサの欠点を克服しました。
- 航空機や自動車エンジンの回転数やスピードセンサ、石油探索における地磁気の変化や磁性鉱物の探索のほか、超スマート社会 (Society 5.0) の実現のために高温環境下で安定に動作する磁気センサが求められています。一方、既存の高温磁気センサはサイズや電力消費が大きい、もしくは感度が低く高温で動作が不安定になるなどの欠点があります。そこで、µmサイズの小型で、高感度、低消費電力、マルチセンシング機能を有するMEMS (Micro Electro Mechanical Systems) 技術を用いた磁気センサの開発が進められています。本研究グループはこれまで、物質中で最高の硬度とヤング率を持つダイヤモンドを利用して、超高感度なMEMSセンサの開発に成功しています。さらにダイヤモンドは、5.5 eVという広いバンドギャップによって、高温でも電子が励起されにくく高い感度で安定した動作が期待できることから、その理論的な裏付けと実証を行いました。
- その結果、ダイヤモンドの欠陥エネルギー準位が深い場合には、700℃の高温に至るまで、センサとして安定的に動作することを実験と理論で示しました。さらに高温においても外部からの磁界の影響で弾性変形できる磁歪材料と組み合わせることで、500℃の高温でも安定して動作するMEMS磁気センサの開発に成功しました。さらに感度も、500℃の高温でも10nT/√Hzという高い磁気感度を達成しました。
- 本成果は、内燃機関、石油、鉱物探索、原子炉の材質劣化診断、宇宙利用など過酷な環境下における磁気センシングに応用されることが期待できます。
- 本研究は、物質・材料研究機構 機能性材料研究拠点の廖梅勇主幹研究員、NIMS研修生Zilong Zhang、Huanying Sun、国際ナノアーキテクトニクス研究拠点 (WPI-MANA) の桑立雯独立研究者、小泉聡グループリーダー、東北大学 戸田雅也准教授によって行われました。また、研究の一部は、科研費補助金 (基盤B 15H03999、20H02212 )、TIA連携プログラム探索推進事業「かけはし」の支援を受けて得られたものです。 本研究成果は、Physical Review Letter誌 (現地時間2020年11月12日公開) と、ACS Applied Materials &Interface (Vol.12, Iss.20)にてそれぞれ公開されました。
プレスリリース中の図 : ダイヤモンドMEMS磁気センサにおけるカンチレバーの構造と高温磁気センシング
掲載論文
題目 : Effect of deep-defects excitation on mechanical energy dissipation of single-crystal diamond
著者 : Huanying Sun, Liwen Sang, Haihua Wu, Zilong Zhang, Tokuyuki Teraji, Tie-Fu Li,J.Q. You, Masata Toda, Satoshi Koizumi, Meiyong Liao
雑誌 : Physical Review Letters
掲載日時 : 2020.11.12
DOI : 10.1103/PhysRevLett.125.206802
題目 : Enhancing Delta E Effect at High Temperatures of Galfenol/Ti/ Single-Crystal Diamond Resonators for Magnetic Sensing
著者 : Zilong Zhang, Haihua Wu, Liwen Sang, Yukiko Takahashi, Jian Huang, Linjun Wang, Masaya Toda, Indianto Mohammad Akita, Yasuo Koide, Meiyong Liao
雑誌 : ACS Applied Materials & Interfaces 12, 23155 (2020).
掲載日時 : 2020.04.27
DOI : 10.1021/acsami.0c06593