2020-08-26 広島大学
本研究成果のポイント
- 太陽系初期に大量の隕石衝突があったことが、小惑星から来た隕石の年代測定からわかりました。
- 従来、隕石衝突のピークは39億年前頃だと推測されてきました。今回の発見はそれより古く(44〜41.5億年前)、太陽系の歴史を書き直すことになるかもしれません。
概要
広島大学大学院先進理工系科学研究科の小池みずほ助教、東京大学大気海洋研究所の佐野有司教授、大学院理学系研究科の飯塚毅准教授、総合研究博物館の三河内岳教授らの研究グループは、小惑星ベスタ由来の隕石の年代を測定し、約44億年〜41.5億年前という「古い」時代にベスタへ大量の隕石が降り注いでいたことを明らかにしました。
地球をはじめとする太陽系の惑星形成は45億年前までにほぼ完了しました。しかし、誕生から6〜7億年後(約39億年前)、地球や月には大量の隕石が衝突したと推測されています(後期重爆撃仮説)。この説には反論もあり、太陽系初期の天体衝突史はおよそ50年にわたり論争が続いてきました。
本研究で見つかった隕石衝突の痕跡は従来予測より「古く」、太陽系初期に大量の隕石が小惑星に衝突したことを初めて実証的に示しました。小惑星は、かつて地球や月が受けた隕石衝突の目撃者でもあります。今回の成果は「小惑星の衝突史」にとどまらず、地球を含めた太陽系初期の歴史の大幅修正につながると期待されます。
本研究成果は、「Earth and Planetary Science Letters」オンライン版に掲載されました。
(図1) 隕石の電子顕微鏡写真の例。
鉱物の種類ごとにグレーの濃淡が異なって見える。破線で囲んだ粒がリン酸塩鉱物。赤い丸はナノシムスによる分析位置を表す。
この2つの例では、隕石A(隕石名: Juvinas)のリン酸塩鉱物は41.5億年前の隕石衝突を、隕石B(隕石名: Camel Donga)は44億年前の隕石衝突を記録していた。Koike et al. (2020) EPSLより改変。
論文情報
掲載誌: Earth and Planetary Science Letters
論文タイトル: Evidence for early asteroidal collisions prior to 4.15 Ga from basaltic
eucrite phosphates U-Pb chronology
著者名: 小池みずほ1、佐野有司2、高畑直人2、飯塚毅3、大野遼3,4、三河内岳3,4
1. 広島大学 大学院先進理工系科学研究科
2. 東京大学 大気海洋研究所
3. 東京大学 大学院理学系研究科
4. 東京大学 総合研究博物館
DOI: 10.1016/j.epsl.2020.116497
論文掲載ページ (Earth and Planetary Science Lettersに移動します)
【お問い合わせ先】
<研究に関すること>
広島大学 大学院先進理工系科学研究科 地球惑星システム学プログラム
助教 小池みずほ
東京大学 大気海洋研究所 高解像度環境解析研究センター 環境計測分野
教授 佐野有司
東京大学 大学院理学系研究科 地球惑星科学専攻
准教授 飯塚 毅
東京大学 総合研究博物館
教授 三河内 岳
<報道に関すること>
広島大学 財務・総務室広報部広報グループ
東京大学 大気海洋研究所 広報室
東京大学 大学院理学系研究科・理学部 広報室
東京大学 総合研究博物館