ICTを活用した新たなサバ養殖モデルで水産業の発展に寄与
2020-05-28 株式会社NTTドコモ,株式会社鯖や
株式会社NTTドコモ(以下、ドコモ)と鯖やグループ(株式会社鯖や、株式会社SABAR、フィッシュ・バイオテック株式会社)は、ICTを活用した新たなサバ養殖モデル確立を目的に、2020年5月28日(木曜)に業務提携契約を締結いたしました。
ドコモは、中期戦略2020「Beyond宣言」にもとづき、「産業創出」を進めており、パートナー企業が推進する水産業の活性化やブランド化にICTブイなどのドコモのソリューションを活用することで、パートナーのビジネス拡大に取り組んでまいりました。
鯖やグループは、「サバマーケット創造企業」として、株式会社鯖やがさば製品の製造・卸販売事業を、株式会社SABARが「とろさば料理専門店SABAR®」を、フィッシュ・バイオテック株式会社(以下、フィッシュ・バイオテック)がサバを完全養殖するための種苗生産や観光施設の経営を始めとした海面養殖事業を展開しています。サバの生産から販売、観光資源としての活用など、サバのある生活をお客さまに提供することで、国内の水産流通構造に改革をもたらし、日本の水産業の発展と国内食糧自給力の向上に取り組んでまいりました。
今回の提携を通じて、市場拡大が見込めるサバ養殖のICT化を推進し、“勘や経験”に頼らない新たなサバ養殖モデルの確立と、新たなサバ養殖モデルの全国展開による養殖業への新規事業者の参入促進をめざします。なお、今回の提携に併せて、2020年5月28日(木曜)より、和歌山県串本の鯖やグループの養殖漁場にて、ドコモのICT技術を活用し、安心・安全で美味しい養殖サバの安定供給を目的とした実証実験を開始いたします。
■業務提携概要
- 新たなサバ養殖モデルの確立
養殖生け簀内の水質測定データや作業日誌、成長記録、気象情報などの情報をICTを活用して自動で収集し、クラウド(以下、養殖管理クラウド)で一元管理することで、生育途中でも生存率や飼料転換効率※1などの養殖業における重要な経営指標を簡単に閲覧し、高い生存率と飼料転換効率に必要な条件の算出を可能とします。費用の大部分を占める飼料の給餌量最適化による“儲かる養殖業”の実現をめざします。 - サバ養殖の認知拡大
日本の海面養殖生産量のうちサバ養殖の出荷量は1%未満※2で、市場でサバは天然魚が多く出回っています。飲食店や消費者に対してサバ養殖の生育の様子を映像配信するなどの活動を通し、安心・安全で美味しい人工種苗※3からの完全養殖サバの認知拡大に取り組みます。 - サバ養殖モデルの横展開
新規参入事業者や既存養殖事業者に確立した新たなサバ養殖モデルを展開していきます。具体的には、新規参入を検討している事業者向けに、鯖やの養殖漁場にスタートアップ環境を用意し、本格導入時には、設備・ICTシステム、ノウハウ、人工種苗の稚魚を提供いたします。
■業務提携の背景・意義
日本の水産業は、漁業従事者の減少と高齢化による担い手不足と気候変動が重なり、過去30年間で漁獲量は3分の1※4にまで減少しています。一方、世界の漁獲量は過去30年で2倍以上に増えており、漁獲量増をけん引しているのは養殖業で、世界の食用魚の50%が養殖魚(日本は20%程度※5)となっています。食用魚の中でもサバは栄養価が高く人気のある魚ですが、近年漁獲量が減少しており、需要に対して供給が追いついていません。ドコモと鯖やグループは、他の魚種と比べて養殖での斃死率が高いサバの養殖にICTを活用することで、安心・安全で美味しい養殖サバの供給量拡大をめざします。
ドコモと鯖やグループは、ICTを活用した新たなサバ養殖モデルを確立することにより、養殖業への新規事業者の参入を促進し、日本の水産業発展に寄与してまいります。
- 餌料100gによって何g増重したかを示す値。餌料効率(E)は,飼育期間中の魚の増重量(G),同じ期間中の総給餌量を(R)とすると,E=100×G/R(%)で表されます。
- 出典:「政府統計窓口e-Stat 統計で見る日本」平成29年(最新データ)
- 人工種苗とは、人工的につくった幼魚をさします。天然資源に影響を与えない点で環境に優しく、稚魚から親魚まで履歴が分かるため安全とされています。
- 農林水産省「漁業・養殖業生産統計」によると、1984年が生産量ピーク(1,282万トン)で、2016年は約3分の1の436万トンまで減少しています。
- 出典:「平成25年度水産白書」第I章
別紙 実証実験概要
1. 概要、目的
和歌山県串本の鯖やグループ(フィッシュ・バイオテック株式会社)のサバ養殖漁場にて、ドコモのICT技術を活用し、サバの飼料組成や給餌量の最適化などによる、安心・安全で美味しい養殖サバの安定供給を目的とした実証実験を開始します。
具体的には、サバ養殖の成長に影響する環境要因を分析するために、ICTを活用して水温や塩分濃度、溶存酸素量などを自動で収集し、作業日誌を付けるアプリなどを用いて給餌量とタイミングを、カメラなどを用いてサバの摂餌行動の観察や残餌を把握し、それらの情報を養殖管理クラウドで一元管理します。
【実証実験概要図】
【養殖管理クラウド 画面イメージ】
2. 期間
2020年5月28日(木曜)~2021年3月31日(水曜)まで
3. 場所
和歌山県東牟婁郡串本町大島8
4. 各社の役割
<鯖やグループ>
- サバ養殖漁場の提供
- 給餌量最適化を目的とした学術機関との共同研究
- 廃棄食品などを使用した魚の成長率を向上させる飼料開発
<ドコモ>
- サバ養殖を管理するクラウド環境(養殖管理クラウド)の提供
- モニタリング機器(水温、塩分濃度、溶存酸素量など)とカメラの提供
- これまで培ってきた海洋モニタリングに関するノウハウ提供
- ドコモの画像認識技術などのAI技術を活用した養殖に活用できる新技術の開発
和歌山の完全養殖サバ「こりゃ!うめぇサバ」
5. 検証項目
- 高い生存率と飼料転換効率に必要な条件
- 海洋環境やサバの成長過程にあわせた最適な給餌量
- 給餌量の最適化による費用削減効果
- 脂質含量が多く商品価値の高いサバを開発するための飼料組成
- 養殖管理クラウドに必要なデータ、最適なデータ提示方法やUI