建屋内に浮遊する核燃料物質を測定する

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GPSシンチレータプレートを用いた高信頼α線用ダストモニタの開発

2019-10 JAEA 「原子力機構の研究開発成果2019-20」P16

福島第一原子力発電所事故の対処に係る研究開発

建屋内に浮遊する核燃料物質を測定する
図1-10 (a)開発したα線用ダストモニタと(b)サンプリングホルダノズルを介し環境中のダストをろ紙上に集塵します。ろ紙上部に設置される GPSシンチレータプレート表面に水を垂らし、検出器でα線が連続測定されます。


空気中のプルトニウム(Pu)等の α 核種の濃度測定のため、原子力施設の建屋内外に α 線用のダストモニタが設置されています。α 線の計数率がダストモニタで設定された警報設定値を超えると警報が吹鳴し、作業者への退避を促します。このダストモニタにシリコン半導体検出器が使われていますが、湿気等の環境要因により度々誤警報が発生していました。東京電力福島第一原子力発電所 (1F)だけでなく、原子力機構の核燃料施設でも同様な事象が発生していました。そのため誤警報の少ない高信頼の α 線用ダストモニタの開発が必要とされていました。そこで、私たちはエネルギー分解能の高い GPS(Gd2Si2O7)シンチレータプレートを用いた α 線用ダストモニタを開発、核燃料施設に設置して連続測定試験を行いました。

図1-10(a)に開発したα 線用ダストモニタの写真を示します。GPS シンチレータプレートは、GPS シンチレータの層の厚みが40 μm で、3 mm 厚の高透過ガラスと結合されています。シンチレータは50 mm 幅で八角形となっており、空気を集塵するためのろ紙と同じ径となっています。ノズルを通って採取された空気がろ紙へと導かれ、ダストが空気ろ紙に捕集されます。ろ紙上に存在するα ダストから放出されるα 線がGPS シンチレータへと入射し、光に変換されます。その光が光電子増倍管で電気信号へと変換されます。光電子増倍管からの出力信号はアンプで増幅され、マルチチャンネルアナライザ(MCA)に入力されます。ディスプレイに α 線エネルギースペクトルがリアルタイムに表示されます。GPS シンチレータプレート表面に水を垂らし、湿度模擬試験を実施しました(図 1-11)。図 1-12 に α 線用ダストモニタによる連続測定のトレンドを示します。エネルギー弁別を適用することにより天然核種であるラドン(Rn)子孫核種の計数を 77% 除去することができました。その結果、警報設定値を下げて検出感度を上げることに成功しました。

図 1-13 に GPS シンチレータプレート表面に水が有る場合と無い場合での α 線スペクトルの比較を示します。 241Am 線源(5.5 MeV α 線)を測定しました。水が有る場合では、計数効率は下がるものの、水が無い場合と同じ形状のスペクトルが確認できました。

開発した α 線用ダストモニタは、エネルギー分解能が 11.9%、計数効率が 97% で、ラドン子孫核種が除去でき、かつ検出器表面が水に濡れた状態でも α 線スペクトルの測定が可能でした。したがって、このダストモニタは 1F のような温湿度の管理がされていない劣悪な環境や屋外での高信頼のα線ダストモニタリングへの応用が期待できます。


図1-11 GPS シンチレータプレートに対する湿度模擬試験GPS シンチレータプレート表面に水を垂らし、水の有無でのα線スペクトルを比較しました。



図1-12 α線用ダストモニタによる連続測定のトレンド
(a)はエネルギー弁別なし、(b)はエネルギー弁別ありを示しています。エネ
ルギー弁別を適用することにより、警報設定値が下がり検出感度が向上しています。


図1-13 GPS シンチレータプレート表面における水滴有無でのα線スペクトルの比較
水の有無で、α線スペクトルの形状に変化はありません。


●参考文献
Morishita, Y. et al., Development of an Alpha Dust Monitor Using a GPS Scintillator Plate, Radiation Measurements, vol.122, 2019,
p.115–120.

2002原子炉システムの運転及び保守2005放射線防護
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