2019-19-23 国立天文台
アルマ望遠鏡が捉えたくじら座49番星のデブリ円盤における塵とガスの分布。塵を赤色、一酸化炭素分子を緑色、炭素原子を青色で合成しています。(クレジット:ALMA (ESO/NAOJ/NRAO), Higuchi et al.)オリジナルサイズ(140KB)
国立天文台や東京大学の研究者から成る研究グループは、アルマ望遠鏡を用いてくじら座49番星を観測し、この星の周囲を非常に大量の炭素原子ガスが取り巻いていることを明らかにしました。星や惑星系の形成過程の理解に、一石を投じる知見です。
くじら座49番星は太陽と比べると若い星で、惑星系形成の最終段階にある「デブリ円盤」を持っています。これまで、デブリ円盤にはガス成分は存在しないと考えられてきましたが、近年、デブリ円盤にガスが発見され始めました。2017年、研究グループは国立天文台アステ望遠鏡を用いた100時間以上の観測により、くじら座49番星のデブリ円盤に世界で初めて炭素原子ガスを検出しました。
このデブリ円盤とガスの分布を詳細に知るため、研究グループは今回、アルマ望遠鏡を用いてくじら座49番星を観測しました。日本が開発したアルマ望遠鏡バンド8受信機を使った15時間にわたる観測により、デブリ円盤内の炭素原子の分布が初めて明らかになりました。一酸化炭素分子や希少同位体原子も検出され、それらと比較することにより、炭素原子ガスの量がこれまでの推測よりもずっと多いことも判明しました。この星は年齢がおよそ4000万歳と見積もられており、従来の理論では惑星形成は終わって星を取り巻くガスは失われていると考えられていましたが、今回観測されたガス量は、より若い星のまわりで盛んに惑星形成が進んでいる段階の原始惑星系円盤のガス量に匹敵するものです。
これほど大量の原子ガスの起源は、これまでの理論ではまったく説明がつきません。ガスが長期にわたって存在できるのであれば、木星のような巨大惑星が作られやすい環境が持続する可能性があります。惑星形成の最終段階でガスがどのように失われるのか、そして惑星がどうやって形成されるのかという過程全体に再考を迫る重要な成果と言えます。
この研究成果は2本の論文にまとめられ、A. E. Higuchi et al. “First Subarcsecond Submillimeter-wave [C I] Image of 49 Ceti with ALMA”として2019年10月3日発行の米国の天体物理学専門誌『アストロフィジカル・ジャーナル』、およびA. E. Higuchi et al. “First Detection of Submillimeter-wave [13C I] 3P1–3P0 Emission in a Gaseous Debris Disk of 49 Ceti with ALMA”として2019年11月8日発行の米国の天体物理学専門誌『アストロフィジカル・ジャーナル・レターズ』に掲載されました。