(Bacteria trapped — and terminated — by graphene filter)
2019/10/7 アメリカ合衆国・ライス大学
・ ライス大学が、レーザー誘起グラフェン(lase-induced graphene: LIG)を利用した、フレキシブルなセルフクリーン型エアフィルターを作製。
・ 空気中の病原菌を捕獲して微小電気パルスで殺菌。病院での利用を見込む。米国疾病予防管理センター(CDC)は、入院患者の 31 人に 1 人が抗生物質耐性感染症にかかる可能性があると警告している。
・ 同エアフィルターは、空気中の細菌、カビ菌、胞子、プリオン、エンドトキシン(内毒素)や、水滴、エアロゾルや粒子状物質によって運ばれる生物的汚染を捕獲し、(有毒な副生物を含め)350℃(662℉)のジュール熱で除去。電力をほとんど使用せず、数秒内で加熱・冷却する。
・ LIG は、工業用 CO2 レーザーカッターで標準的なポリアミドシートの表面を加熱して合成した原子薄のカーボンシートによる導電性発泡体。2014 年に同大学の研究チームが合成プロセスを開発。エレクトロニクス、摩擦帯電型ナノ発電機やアート作品まで幅広いアプリケーションが可能。
・ LIG をフィルターとして利用するには、ポリアミドシートの両面にグラフェンをレーザーで構築し、グラフェン発泡体を補強する微細なポリマー3D 格子を作製する。異なる温度下でのレーザー構築により、相互連結したシート上にグラフェンファイバーの密集した「森林」ができる。
・ 高純度グラフェンと同様に、同発泡体は導電性で、電流を通すとジュール熱がフィルターの温度を 300℃超に上昇させる。この温度は、捕獲した病原体を殺滅するだけでなく、微生物にエサを与えて人間の免疫システムを活性化させる有害な副生物を分解する。
・ 1 枚のカスタムフィット LIG フィルターで、米国内病院の空調システムの連邦規格が必要とする 2 枚のろ床を代替。院内感染の可能性を大幅に低減し、入院日数にかかるコストを抑えると共に病原菌による病気や死亡を軽減できると考える。
・ 同 LIG フィルターを商用の真空ろ過施設にて、毎分 10 リットルの速度で 90 時間の通気性試験を実施した結果、ジュール熱がフィルターの病原体や副生物を殺滅したことを確認。また、使用済みのフィルターを培地に 130 時間浸した後も、加熱していないコントロール LIG フィルターと異なり、加熱したユニットではバクテリアの増殖が観られなかった。
・ 同 LIG フィルターのセルフクリーン機能は、従来フィルターに比して交換頻度の低減が期待できる。商用航空機での利用も見込む。
・ 本研究は、米国空軍科学研究局(AFOSR)が支援した。
URL: https://news.rice.edu/2019/10/07/bacteria-trapped-and-terminated-by-graphene-filter-2/
(関連情報)
ACS Nano 掲載論文(アブストラクトのみ:全文は有料)
Self-Sterilizing Laser-Induced Graphene Bacterial Air Filter
URL: https://pubs.acs.org/doi/10.1021/acsnano.9b05983
<NEDO海外技術情報より>
Abstract
Nosocomial infections transmitted through airborne, droplet, aerosol, and particulate-transported modes pose substantial infection risks to patients and healthcare employees. In this study, we demonstrate a self-cleaning filter comprised of laser-induced graphene (LIG), a porous conductive graphene foam formed through photothermal conversion of a polyimide film by a commercial CO2 laser cutter. LIG was shown to capture particulates and bacteria. The bacteria cannot proliferate even when submerged in culture medium. Through a periodic Joule-heating mechanism, the filter readily reaches >300 °C. This destroys any microorganisms including bacteria, along with molecules that can cause adverse biological reactions and diseases. These molecules include pyrogens, allergens, exotoxins, endotoxins, mycotoxins, nucleic acids, and prions. Capitalizing on the high surface area and thermal stability of LIG, the utility of graphene for reduction of nosocomial infection in hospital settings is suggested.