視覚障害者が印刷物の文字情報を音声で取得できる技術を開発

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QRコードと商品パッケージの仕様を分析・変更することにより実現

2019-12-02   新エネルギー・産業技術総合開発機構,エクスポート・ジャパン株式会社

NEDOは、福祉用具の実用化開発を推進するため、高齢者や障害者の生活の質(QOL)の向上を目的に「課題解決型福祉用具実用化開発支援事業」に取り組んでおり、今般、同事業でエクスポート・ジャパン(株)は、視覚障害者が商品パッケージなどに印刷されたQRコードから、自分のスマートフォンの設定言語に合わせて、食品の原材料や医薬品の用法用量などの音声情報を得られる技術を開発しました。

具体的には、視覚障害者がスマートフォンで簡単に読み取りが可能なQRコードや商品パッケージの仕様を、実証実験のデータの分析、活用により導き出し、これまで点字の利用が困難であった食品や医薬品などに応用することで、視覚障害者が、原材料などの情報を音声取得できるようになりました。

NEDOは、今後も福祉用具の実用化開発を推進し、高齢者や障害者の積極的な社会参加(ノーマライゼーション)を支援し、豊かさを実感できる社会の実現を目指します。

視覚障害者向けのQRコードをつけた製品のイメージ図

図1 視覚障害者向けのQRコードをつけた製品のイメージ

1.概要

視覚障害がある人の共通課題として、健常者と比較して取得できる情報量が限られ、特にパッケージや説明書などの印刷物からの情報取得が困難であることが挙げられます。この問題を解決するためには、視覚障害者自身が情報を得やすくする工夫とともに、情報を出す側が視覚障害者に受け取りやすい情報を簡易に発信できる仕組みが必要です。しかし、従来から利用されている点字では、その仕様(6点の位置関係で表現する)が世界共通であっても、パッケージや説明書などの印刷物に用いる場合、費用や手間がかかることが課題となります。また、対応する音(例えば、日本語は「あ、い、う」、英語は「A、B、C」など)は言語ごとに異なるため、日本語と外国語の点字を混在させることは運用上困難を伴います。

このような課題解決に有効なツールとして、QRコードが考えられます。QRコードはデジタル情報として読み込み、スマートフォンに表示することで文字情報を音声化することが可能です。さらに、QR Translator※1という多言語対応のシステムを利用すれば、複数言語に対応したQRコードを簡単に発行できます。

このような背景のもと、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は、福祉用具の実用化開発を推進し、高齢者や障害者の生活の質(QOL)の向上や介護者の負担軽減を目的とする「課題解決型福祉用具実用化開発支援事業※2」に取り組んでいます。

そして、今般、同事業でエクスポート・ジャパン株式会社は、視覚障害者が商品パッケージなどに印刷されたQRコードから、自分のスマートフォンの設定言語に合わせて、食品の原材料や医薬品の用法用量などの音声情報を得られる技術を開発しました。

具体的には、視覚障害者がスマートフォンで簡単に読み取りが可能なQRコードや商品パッケージの仕様を、実証実験※3で得られたデータの分析と、その活用により導き出し、これまで費用や手間がかかり、日本語と外国語の混在で点字の利用が困難であった食品や医薬品などに応用することで、視覚障害者が、原材料などの情報を音声で取得できるようになります。

2.今回の成果

本事業の中で、エクスポート・ジャパン(株)は、視覚障害者の自立支援を行う特定非営利活動法人神戸ライトハウス※4のサポートを受けて、2017年から2018年に視覚障害者100名以上を対象とする全国規模の実証実験を実施し、QRコードを利用する際の課題や読み取りが容易なQRコードの仕様についてさまざまなデータを収集しました。

そして、実証実験で得られたデータを活用し、視覚障害者が文字情報を簡単に取得するための以下の仕組みを開発しました。

  • 全盲の視覚障害者がQRコードの存在を確認できる仕様(特許出願済)

    QRコードが印刷された位置に凹型のくぼみもしくは点字状の突起をつけることで、全盲の障害者でも指で触れることでQRコードの場所を把握できます。

  • QRコードをより使いやすくするためのアプリケーションソフト

    音によるカメラモードの有無や水平感覚の通知により、容易にQRコードを読み取ることができます。

  • スマートフォンの音声読み上げ機能の自動化と対応言語数の拡大

    QR Translatorのシステム提供を受け、文字情報を多言語で自動的に音声化する機能を実装しました。

最新のQRコードリーダーによるQRコードの読み取り状況を表した図

図2 最新のQRコードリーダーによるQRコードの読み取り状況

3.今後の予定

本事業の研究成果は、特定非営利活動法人アイ・コラボレーション神戸※5が主催する2018年8月の視覚障害者向けアイデアソン・ハッカソン※6で共有され、日頃から視覚障害者が操作しやすい商品パッケージのあり方を検討していた大手メーカーに採用されました。

今後、エクスポート・ジャパン(株)は、発売に向けたさらなる改良と開発に着手します。

【注釈】
※1 QR Translator
株式会社PIJINが開発し、日本を含む世界各国で特許と商標を取得している多言語対応のQRコード発行システムです。
※2 課題解決型福祉用具実用化開発支援事業
研究開発項目:QRコードで世界中の印刷物を音声化するシステムの開発

事業期間:2017年5月~2019年3月

助成率:2/3以内

助成金額:年間2000万円以内

※3 実証実験
第1回の試験は、2017年8月から2018年3月にかけて、東北・関東・中部・近畿・九州の5会場にて計100名で実施しました。第2回は、2018年10月から2018年11月にかけて、関東・中部・近畿の3会場にて計50名で実施しました。
※4 特定非営利活動法人神戸ライトハウス
視覚障害者の自立支援を行う、神戸を拠点とするNPO法人です。
※5 特定非営利活動法人アイ・コラボレーション神戸
テクノロジーによる障害者の自立をテーマとした勉強会やワークショップを主催している、神戸を拠点とするNPO法人です。
※6 アイデアソン・ハッカソン
グループディスカッションを通じて、技術開発やビジネスモデルの構築に関するアイデアを出し、1~3日間などの短期間でブラッシュアップするワークショップです。なお、「アイデアソン(Ideathon)」とは、アイデア(Idea)とマラソン(Marathon)を掛け合わせた造語で、「ハッカソン(Hackathon)」とは、ハック(Hack)とマラソン(Marathon)を掛け合わせた造語です。
4.問い合わせ先
(本ニュースリリースの内容についての問い合わせ先)

NEDO イノベーション推進部 担当:髙橋、朝倉、種部 

エクスポート・ジャパン(株) 担当:(大阪)福島、竹内 

:(東京)泉、高岡 

(その他NEDO事業についての一般的な問い合わせ先)

NEDO 広報部 担当:坂本、中里、佐藤 

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