地上と宇宙をシームレスにつなぐ 超高速大容量でセキュアな光・無線通信インフラ実現に向け共同研究

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2019-11-05 日本電信電話株式会社,宇宙航空研究開発機構

日本電信電話株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:澤田 純、以下 「NTT」)と国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(本社:東京都調布市、理事長:山川 宏、以下 「JAXA」)は、両者の技術融合による社会インフラ創出(社会課題の解決につながる革新的な光ネットワーク・インフラの構築等)をめざした協力協定を締結し、「地上と宇宙をシームレスにつなぐ超高速大容量でセキュアな光・無線通信インフラの実現」をめざすべき世界観として共有した共同研究に取り組むことに合意しました。
NTTの「IOWN構想※1実現に資する光・無線ネットワーク技術」とJAXAの「宇宙機のシステム構築技術」との掛け合わせにより技術障壁のブレークスルーを加速し、新たな社会インフラの実現をめざします。

【協力の背景】

人々のニーズが素早く大きくダイナミックに変化するSociety5.0の時代の基盤となる社会インフラ、多様な社会課題解決(大規模災害対策等)に資する社会インフラとして、今後、大容量で高速、セキュアな通信インフラの重要性は更に高まっていくと想定されます。
一方、宇宙空間においても地球観測衛星、宇宙ステーション、月近傍のゲートウェイ等が収集する情報量の増大に伴い、大量の画像・データ等をより高速に伝送し活用するための通信インフラが求められ、さらには宇宙ビジネスの拡大等を背景に人類が宇宙空間へ活動範囲を広げていく未来に向けた環境整備も求められていくと予想されます。

このような背景を踏まえ、「光・無線ネットワーク技術の高度化やIOWN構想の実現に取り組むNTT」と「宇宙機のシステム構築のノウハウを豊富に持つJAXA」が、共同で研究開発に取り組むことで、「地上と宇宙をシームレスにつなぐ超高速大容量でセキュアな光・無線通信インフラの実現」、更に「宇宙利用や宇宙探査の飛躍的な高度化・活性化を基盤的に支えるキー技術の整備」をめざします。
将来的には本取り組みにより、災害に強い超高速大容量通信インフラの提供や次世代の宇宙探査を可能とする自律的なエコシステム(生態系)の確立等、社会への価値提供をめざしていきます。

【めざすべき世界観】

地上と宇宙をシームレスにつなぐ 超高速大容量でセキュアな光・無線通信インフラ実現に向け共同研究

図1:めざすべき世界観イメージ

©NTT/JAXA

【取り組みを開始した共同研究テーマ】
<世界初:低軌道衛星と地上局間通信の大容量化に向けた衛星MIMO技術の適用>

無線通信におけるMIMO※2技術とは、送信機と受信機の双方に複数のアンテナを用いて、同時かつ同一周波数で異なる情報を伝送することで、通信の大容量化を実現する技術です。
衛星通信では電波伝播環境が地上通信と大きく異なり、伝播距離が長く遅延量が大きくなるため、携帯電話や無線LAN等で実用化されてきたMIMO技術をそのまま適用することが困難でした。

NTTとJAXAは本共同研究において、NTTが保有する受信タイミング・周波数誤差が異なる複数信号を干渉補償して分離する技術と、JAXAが保有する低軌道衛星システム設計にかかる知見を組み合わせることで、低軌道衛星-地上局間における世界初の低軌道衛星MIMO技術を確立し、地球観測データ等の大容量データの超高速伝送の実現に貢献します。

図2:衛星MIMO技術の適用イメージ(2×2MIMOの場合の一例)

日本が狙う世界初の下りリンク低軌道衛星MIMOの技術適用。
干渉補償技術※3及び衛星軌道を考慮した通信路のモデル化技術※4がポイント

図2:衛星MIMO技術の適用イメージ(2×2MIMOの場合の一例)

©NTT/JAXA

【今後取り組みを開始予定の共同研究テーマ】
<超高速大容量宇宙光無線通信に向けた光増幅技術の適用>

宇宙で運用される地球観測衛星、宇宙ステーション、月近傍のゲートウェイ等が収集する情報は、その活動の進展に伴い大量の画像・データ等をより高速に伝送し活用することが求められています。

NTTとJAXAは本共同研究において、静止軌道と低軌道の衛星間通信や、静止軌道の衛星と地上局の間の通信において、今後求められる100Gbpsを超える超高速大容量通信を実現するために必要な技術として、NTTの超高感度低雑音光増幅技術(LNA※5)である位相感応増幅技術と、JAXAの超高出力光増幅技術(HPA※6)を組み合わせ、「高感度な光ローノイズアンプ」の研究開発を通じ、超高速大容量宇宙光無線通信技術の確立をめざします。
この技術の確立により、宇宙から地上までのシームレスな超高速大容量通信を可能とし、宇宙利用や宇宙探査の飛躍的な高度化・活性化に係る活動を支えていきます。

図3:光増幅技術の適用イメージ

図3:光増幅技術の適用イメージ

©NTT/JAXA

<次期衛星搭載に向けた観測用、通信用無線デバイスの効果実証>

次期衛星搭載に向けた観測用、通信用のテラヘルツ帯無線デバイスの効果実証を行い、技術確立を図ることで、宇宙からの積乱雲の氷雲観測による台風等の気象状況の把握・予測への応用や、次世代衛星間通信等への適用を通じ、安心安全な社会への貢献をめざします。

NTTとJAXAは、本共同研究において、NTTが保有するInP-HEMT※7/HBT※8技術と、JAXAが保有する衛星搭載用テラヘルツコンポーネント技術を用い、300GHz帯のパワーアンプ・ローノイズアンプの製作と耐宇宙環境性の評価を行い、本技術の確立を図ります。

図4:衛星搭載用テラヘルツ帯(300GHz帯)の増幅器技術

図4:衛星搭載用テラヘルツ帯(300GHz帯)の増幅器技術

©NTT/JAXA

【今後の展開】

NTT、JAXAの研究者で検討を進め、新たな共同研究テーマ探索を継続し、「地上と宇宙をシームレスにつなぐ超高速大容量でセキュアな光・無線通信インフラの実現」、更に「宇宙利用や宇宙探査の飛躍的な高度化・活性化を基盤的に支えるキー技術(次世代の時刻基準、環境制御/生命維持(人工光合成等)、AIによる画像処理等を想定)の整備に向けて、様々な技術に関する共同研究を通じ社会課題の解決に貢献していきます。

※1:IOWN(アイオン:Innovative Optical & Wireless Network)構想
NTTが参画している光ベースの革新的なネットワーク・情報処理基盤の将来構想
https://www.ntt.co.jp/RD/techtrend/index.html

※2:MIMO(マイモ:multiple-input and multiple-output)技術
無線通信において、送信機と受信機の双方で複数のアンテナを使い、通信品質を向上させるための技術。

※3:干渉補償技術
遠隔配置した複数の地上基地局が非同期の状態で、信号到来時間差、および地上局の局部発信器や衛星ドップラーシフトによる周波数誤差が混在する状況でも、基地局の信号処理により干渉を補償する技術。

※4:衛星軌道を考慮した通信路のモデル化技術
衛星軌道を考慮して通信路(情報源から受信者までの情報伝達媒体)をモデル化することにより、衛星MIMOの通信容量が解析可能となる。衛星通信のような見通し内の伝播環境では、送受信アンテナ間の位置関係によって通信容量が変化するため、通信路の正確なモデル化が必要となる。

※5:LNA
低雑音増幅器(Low Noise Amp.)

※6:HPA
高出力増幅器(High Power Amplifier)

※7:HEMT
高電子移動度トランジスタ(High Electron Mobility Transistor)

※8:HBT
ヘテロ接合バイポーラトランジスタ(Heterojunction Bipolar Transistor)

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