偏光観測が明らかにした近地球小惑星フェートンの素顔

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2018/06/29 国立天文台

図:小惑星フェートンの偏光観測小惑星フェートンの偏光観測。観測は北海道で実施された。フェートンには、探査機による観測が計画されている。 オリジナルサイズ(2.7MB)

地球に近づく活動的小惑星フェートンを偏光観測したところ、この天体の表面で反射した光がとても大きな偏光度を示すことがわかりました。この特徴は、フェートンの表面にある粒のサイズが大きいと考えると説明できますが、他の原因も考えられます。日本の探査機がフェートンを観測する計画(2022年打ち上げ予定)も進められており、今回提起されたものを含め、この天体の謎の解明が期待されます。

小惑星フェートン((3200)Phaethon、ファエトンとも呼ばれる)は、彗星に似た特異な軌道を持つ小惑星で、地球に近づくこともあります。ふたご座流星群のもととなるチリを供給した天体と推定されていること、また太陽に近づく時期には少量の物質を放出していることなどから、フェートンは彗星に近い性質を持つ「活動的小惑星」として知られています。このような彗星と小惑星の両方の性質を持つ天体の表面状態は非常に興味深く、また謎の多いものです。

太陽系天体の表面について知るには、偏光観測がたいへん有効です。光は、伝わる方向とは垂直に電場や磁場の強度が変動する波です。電場の強度が変動する方向は太陽の光ではランダムですが、天体表面で反射した光では特定の方向で強く、別の方向では弱いという偏光を起こすことがあります。偏光度を観測することで、天体表面の情報が得られます。特に、太陽-天体-観測者のなす角度によって、偏光度がどのように変化するかが重要です。

国立天文台の伊藤孝士助教をはじめ、千葉工業大学、北海道大学などの研究者も参加する国際研究チームは、北海道名寄市に設置した北海道大学1.6メートル ピリカ望遠鏡を用いて、2016年秋にフェートンの偏光を観測しました。その結果、フェートンが反射した光は強い偏光を示し、これまでに知られている太陽系小天体のなかで最大の偏光度であることがわかりました。

グラフ:照らされている角度による偏光度の変化。照らされている角度による偏光度の変化。いくつかの太陽系天体について観測値が示されているが、フェートンがもっとも偏光度が大きい。

この性質は、フェートン表面にある粒の直径が大きいことを示唆しています。室内での実験と観測値を照らし合わせることで、フェートンの表面物質の粒の直径は360マイクロメートル以上と推定されました。この値は、月表面から持ち帰られた粒の直径(<50マイクロメートル)と比べてたいへん大きなものです。フェートンは太陽のごく近くを定期的に通過するため、太陽からの熱や光の影響を強く受けます。太陽の熱で天体表面の粒が焼き固められ、サイズの大きな粒が形成されたと考えられます。また、微細な粒が太陽からの光によってフェートンの表面から吹き飛ばされたのかもしれません。

偏光度が大きい原因としては、フェートンの表面物質が予想以上に多孔質であること、あるいはフェートンの表面物質の反射率が予想以上に低いことも考えられます。フェートンは、宇宙航空研究開発機構(JAXA)と千葉工業大学が共同で進めている宇宙機探査計画「デスティニー・プラス」(DESTINY+、2022年打ち上げ予定)の探査対象天体で、この興味深い天体の理解が深まることが期待されています。

この研究成果は、Ito et al. “Extremely strong polarization of an active asteroid (3200) Phaethon”として2018年6月27日付けの英国のオンライン科学雑誌『ネイチャー・コミュニケーションズ』に掲載されました。

論文の詳しい説明

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