次世代浮体式洋上風力発電システムのバージ型浮体が完成

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今夏、北九州市沖に実証機設置へ

2018/06/08 国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構 日立造船株式会社

NEDOと日立造船(株)は、次世代浮体式洋上風力発電システムのバージ型浮体を完成させました。

本事業で採用しているバージ型浮体の特徴は、一般的なセミサブ型と比較して小型・軽量で、水面下に沈む構造物の深さ(喫水)が浅いため、水深50m程度の浅い海域でも設置が可能なことです。

今後、北九州港響灘地区において、風車搭載、設置海域での係留や電力ケーブル接続を行い、今夏から北九州市沖に実証機として設置し、今秋頃からの実証運転を開始する予定です。

完成した次世代浮体式洋上風力発電システムのバージ型浮体写真

図1 完成した次世代浮体式洋上風力発電システムのバージ型浮体

1.概要

洋上風力発電は風車を支える基礎構造の形式により、海底に基礎を設置する「着床式」と、基礎を海に浮かばせる「浮体式」に大別されます。NEDOが実施した調査※1において、日本の海域で洋上風力が導入可能な海域面積を、離岸距離30km、水深200mまでの海域範囲で調査したところ、着床式と浮体式の経済性が入れ替わるとされる水深50mで区切った場合、浮体式(77,442km2)は着床式(14,745km2)に比べて約5倍の導入可能海域面積を有するとの結果を得ました。したがって、洋上風力発電の導入を加速するためには、着床式洋上風力発電の導入に加えて、より広い海域に導入が可能となる浮体式洋上風力発電が必要となります。

近年、国内外で2MW~7MWクラスの浮体式洋上風力発電の実証研究が開始され、技術的な検証が進められていますが、普及を拡大していく上では、着床式洋上風力の発電コストと競合できるさらなる低コスト化に向けた先進的な技術開発が必要とされています。

そこで、NEDOは、浮体式洋上風力発電にとって比較的浅い水深50m程度から設置可能で、かつ一般的なセミサブ型浮体※2と比較して小型・軽量なバージ型浮体の開発を行う実証事業※3を進めてきました。

今般、日立造船株式会社堺工場で完成したバージ型鋼製浮体は、福岡県北九州港に曳航され、そこで風車を搭載した後、北九州市沖合の響灘において係留および電力ケーブルの接続を行い、実証運転を開始する予定です。

2.実証海域と次世代浮体式洋上風力発電システムの特徴
【1】実証海域

実証海域は、福岡県北九州市白島沖合の、北九州港響灘地区から約15キロの海域となります。

2018年夏頃に実証機を設置し、同年秋頃からの実証運転開始を計画しています。

実証機設置予定海域の地図

図2 設置予定海域

【2】次世代浮体式洋上風力発電システムの特徴

本システムは、鋼製のバージ型浮体式構造物に2枚翼アップウィンド型3MW風車を搭載しており、スタッドレスチェーン※4と高把駐力アンカー※5の組み合わせによる計9本の係留システムで係留し、厳しい気象・海象条件においてもシステムの安全性が確保されるよう設計を行っています。

図3 実証システムのイメージ図(提供 日立造船(株))

図3 実証システムのイメージ図(提供 日立造船(株))

表 バージ型浮体構造物の仕様

1.名称 バージ型浮体構造物
2.船名 ひびき
3.仕様 形状 長さ51m×幅51m×高さ10m
(スカート幅6mを含む)
喫水 約7.5m
材質 鋼製
重量 3,100トン(風車、バラスト除く)
4.製造 日立造船(株)堺工場
3.今後の予定

実証機を北九州市沖合へ設置後、計測データによる設計検証や、浮体式風力発電システムの効率的な保守管理方法の技術開発を行い、低コストの浮体式洋上風力発電システムの技術を確立します。

【注釈】
※1 NEDOが実施した調査
2011年度成果報告書 浮体式洋上風力発電に係る基礎調査
※2 セミサブ型浮体
一般的なセミサブ型浮体は、風車タワーの直下にある中央センターカラムと3本のサイドカラムが、デッキビームとポンツーンビームで接合された構造となっています。海水面を貫く浮体構造断面積が比較的小さいため、一般的に安定した浮体構造とされています。この浮体構造は経済産業省の福島沖実証(Fukushima FORWARD)の2MW機で採用されています。
※3 実証事業
案件名 : 風力発電等技術研究開発/洋上風力発電等技術研究開発/次世代浮体式洋上風力発電システム実証研究(バージ型)

事業期間 : FS調査 2014年度~2015年度、実証研究 2016年度~2021年度

委託先 : 丸紅株式会社、国立大学法人東京大学、九電みらいエナジー株式会社、日立造船株式会社、
エコ・パワー株式会社、株式会社グローカル

※4 スタッドレスチェーン
チェーンを構成する一つ一つのリンク(輪っか)において、スタッドと呼ばれるリンク内側の棒状構造物を鋼材の強度を高めることで排除し、チェーン重量を抑えつつ浮体係留の安全性を確保できる、オフショア用の係留チェーンとなります。
※5 把駐力アンカー
アンカー(錨)が海底土質との間に生む抵抗力(把駐力)により、浮体の位置を保持するアンカー。アンカー自体の重さよりも大きな把駐力を発揮する場合、高把駐力アンカーと呼ばれます。
4.問い合わせ先
(本ニュースリリースの内容についての問い合わせ先)

NEDO 新エネルギー部 担当:日置、岡田、伊藤

日立造船(株) 広報グループ 担当:中尾

(その他NEDO事業についての一般的な問い合わせ先)

NEDO 広報部 担当:坂本、髙津佐、藤本

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