熱効率改善や発電設備の信頼性向上により温室効果ガス排出量削減を目指す
2021-05-18 新エネルギー・産業技術総合開発機構,丸紅株式会社
NEDOと丸紅(株)は民間主導による低炭素技術普及促進事業として、タイ発電公社(EGAT)が現在運転しているマエモ火力発電所11・13号機(各300MW)でAI・ビッグデータ解析といった高度なデジタル・ソリューションを活用し、ボイラー効率化を始めとする熱効率の最適化と、ボイラーなどの機器異常を予兆検知するシステムなどの導入に向けた実証運転を2021年3月から開始しました。
この実証事業を通じて発電所全体の熱効率改善や発電設備の信頼性向上を進め、燃料消費を改善することで温室効果ガス排出量の削減を目指します。同時に二国間クレジット制度(JCM)による温室効果ガス排出削減効果の定量化と情報発信も行います。
図1 本事業で導入するデジタル・ソリューション(イメージ図)
図2 熱効率最適化ソリューションにおける発電所運転データの監視画面
1.概要
タイでは経済成長に伴う電力需要の増加が見込まれる一方で、エネルギー安全保障と地球温暖化対策を両立させるために既存発電所の効率改善と信頼性の向上が重要な課題となっています。
こうした背景のもと、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)はタイのエネルギー省(MOE)と2020年2月に火力発電所全体の効率化と最適運転に関する実証事業※1を実施することに合意し、協力合意書(LOI)を取り交わしました。同時に、同実証事業の委託先である丸紅株式会社はタイ発電公社(EGAT)と事業契約(IA)を締結し、AI・ビッグデータ解析などを用いた高度なデジタル・ソリューション※2の導入に向け詳細設計とソリューションの開発に取り組んできました。今般、EGATが現在運転しているマエモ火力発電所11・13号機にて、運転データを遠隔監視・解析することで関連機器の性能最適化を行いプラント全体の熱効率改善を図る熱効率最適化デジタル・ソリューションや、燃焼効率化ソリューションとスーツブロワ※3最適化ソリューションによるボイラーの効率改善を図るボイラー効率化ソリューション、AIアルゴリズムによるビックデータ解析により故障発生を事前に推測して早期に対策を講じることで機器の損傷や停止時間を最小化し、稼働率の改善を図る予兆検知ソリューションなどの導入に向けて2021年3月から実証運転を開始しました。この実証運転を通じて発電所全体の熱効率改善や発電設備の信頼性向上を進め、燃料消費を改善することで温室効果ガス排出量の削減を目指します。同時に二国間クレジット制度(JCM)※4を活用し、温室効果ガス排出削減効果の定量化と情報発信も行います。
2.実証事業の内容
【1】実証サイト
サイト企業:タイ発電公社(Electricity Generating Authority of Thailand)
実施サイト:マエモ火力発電所 11号機、13号機(各300MW)
【2】事業期間
2020年1月~2023年2月
【3】実施体制
3.今後の予定
本実証事業は2023年2月末まで実施し、温室効果ガス排出削減効果の定量化を含め、導入したデジタル・ソリューションの効果を検証していきます。また、その検証結果によりタイやその他のASEAN諸国へ関連するソリューション技術の普及展開を図り、対象地域への環境配慮と地球温暖化対策へ貢献していきます。
【注釈】
- ※1 実証事業
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- 事業名:民間主導による低炭素技術普及促進事業/低炭素技術による市場創出促進事業(実証事業)/ASEAN地域電力会社向けIoT活用による発電事業資産効率化・高度化促進のための技術実証事業(タイ)
- 事業期間:2019年度~2022年度
- 参考:NEDOニュースリリース 2020年2月6日 「タイでIoT活用による発電所効率化のための実証事業を開始へ」
- ※2 デジタル・ソリューション
- 発電所の運転データを自動的に取得、解析して発電所の性能を向上させるために構築したソリューションです。
- ※3 スーツブロワ
- ボイラー伝熱面に付着するススやダストを圧縮空気や蒸気を噴射することで除去する装置です。
- ※4 二国間クレジット制度(JCM)
- JCMパートナー国において、日本企業が現地企業などと協力してプロジェクトを実施し、日本の貢献を定量的に評価するとともに、CO2の削減分を日本の目標達成に活用する制度です。
4.問い合わせ先
(本ニュースリリースの内容についての問い合わせ先)
NEDO 国際部 担当:若林、塩沢、坪松、中尾
丸紅株式会社 担当:新井、本田
(その他NEDO事業についての一般的な問い合わせ先)
NEDO 広報部 担当:坂本、橋本