化学研究に役に立つ量子アルゴリズム
2021-03-17 大阪市立大学,科学技術振興機構
ポイント
- 量子コンピューターは量子化学計算を高速に実行できるが、エネルギー計算値の誤差と計算コストが反比例する。
- 分子のエネルギーではなく、エネルギー差を直接計算する量子アルゴリズムを開発することで、大きな分子の量子化学計算も低い計算コストで実行できる。
- 原子・分子の基本的性質の1つであるイオン化エネルギーを直接計算する手法を提案した。
大阪市立大学 大学院理学研究科の杉﨑 研司 特任講師、佐藤 和信 教授、工位 武治 名誉教授らの研究チームは、量子コンピューターを用いてスピン量子数が異なる電子状態(スピン状態)間のエネルギー差を直接計算できる量子アルゴリズムを改良し、量子コンピューター実機に実装しやすくするとともに、中性原子・分子が電子を放出してイオンとなるために必要なエネルギーであるイオン化エネルギーの直接計算へと応用しました。これらの結果は、化学で興味が持たれている大きな分子の量子化学計算を量子コンピューターで効率的に実行するための重要な道筋を示すものといえます。
本研究成果は国際学術誌「The Journal of Physical Chemistry Letters」に2021年3月16日(日本時間)にオンライン掲載されました。
本研究は、AOARD Scientific Project on “Molecular Spins for Quantum Technologies”(Award No.FA2386-17-1-4040,4041)、JSPS 科研費 基盤研究(C)(18K03465)、JST 戦略的創造研究推進事業 さきがけ「量子化学計算の高効率量子アルゴリズムの開発」(JPMJPR1914)の対象研究です。
<論文タイトル>
- “Quantum algorithm for the direct calculations of vertical ionization energies”
- DOI:10.1021/acs.jpclett.1c00283
<お問い合わせ先>
<研究内容に関すること>
杉﨑 研司(スギサキ ケンジ)
大阪市立大学 大学院理学研究科 物質分子系専攻 特任講師
工位 武治(タクイ タケジ)
大阪市立大学 大学院理学研究科 物質分子系専攻 名誉教授
<JST事業に関すること>
科学技術振興機構 戦略研究推進部 グリーンイノベーショングループ
嶋林 ゆう子(シマバヤシ ユウコ)
<報道担当>
大阪市立大学 広報課(西前)
科学技術振興機構 広報課